エッレンを筆頭に、死が連鎖するーーー
◇コマドリの賭け・下◇ -The Redbreast-
ジョー・ネスボ 井野上悦子 訳
高性能ライフル密輸入の謎を追うハリーは、銃を手に入れた人物が、第二次世界大戦中に東部戦線で戦った男ではないかと見抜く。また、銃密輸組織の頂点に“プリンス”と名乗る男がいることを知る。一方、ハリーの同僚刑事のエッレンは、ひょんなことから“プリンス”の正体に気付いてしまい…。第二次大戦から戦後のノルウェー史の闇に潜んでいた亡霊と対峙するハリー。傑作ミステリー。
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エッレンは殺された。殴られて、雪の上に倒れて。ハリーは現場に残された帽子から犯人を特定しようと躍起になるが、結果は芳しくない。そんな中、ハリーとロマンス進行中のラケルに恋慕するブランハウグによってスウェーデンのネオナチの根城クリッペンに行かされることに。
一方、スヴェッレは"プリンス"の指図でエッレンを殺害するが、"警察の聴取の最中に抵抗した末の射殺"という形で始末される。
メルクリン・ライフルから始まり、東部戦線兵士を探すハリー。審判が下されたとばかりに次々と過去が明らかになり、次々に人が死んでいく。それと同時にラケルとの関係も進むが、この事件の決定的証拠をラケルが提供することになるーーー!!
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「コマドリの賭け・下」です(・∀・)
エッレエエエエンンン!!!
ハリーの良き同僚、良きアドバイザーのエッレンの遺体が見つかるところから下巻は始まります。ハリーが絶対に出ないエッレンの留守番電話にメッセージを入れるところにハリーの遣る瀬無さと無念を感じて読んでいるこっちが苦しくなります。
その傍ら、ラケルとのロマンス進行中。6歳のオレグともテトリスをきっかけに仲良くなります。「スノーマン」では立派なティーンエイジャー(……のはずだ)だったオレグもこの時はまだ子ども。可愛いですね←
「スノーマン」で初めてラケルを知りましたが、良い印象を抱けないまま悶々としていました。「きちんとシリーズ順で読んでいたらもっと違う印象を抱いただろうに……ごめん、ラケル」と思って読みましたが、ごめん、やっぱりどうしても好きになれないわ……多分、自分の中で同性として好きになれないタイプなんだと思います。北欧ミステリーを読むようになってから男女関係に関してかなり潔癖になったなと我ながら自嘲しますが、責任持てる限りそれはわたしの自由ですからね。
そのラケルがまさか決定的証拠を提供するとは思いませんでした。ノルウェーの暗い過去が亡霊と歴史の軋轢が死の連鎖となって現在のノルウェーに牙を剥きます。ノルウェーは第二次世界大戦中、ドイツに占領され、その側についてしまったという暗い歴史があります。敗戦を迎え、後ろ指を指され、守ろうとしたものに全て裏切られ……過去の亡霊に乗っ取られながら、どんな気持ちで生きてきたのか……こういう時にいかに爪痕が深いかを思い知らされます。
さて。事件は収束しますが、ウリアにメルクリン・ライフルを提供した"プリンス"の正体は分からないまま。ハリーは新しい部下ハルヴォルセンと一緒に2ヶ月間だけその捜査を行う猶予を得ますが……この結末が「悪魔の星」で分かるわけです。ズシーンと重く、けどスピードスリル満点なこのハリー・ホーレシリーズとジョー・ネスボさん、そしてノルウェー・ミステリとしばらくおつきあいしていこうと思います。
「コマドリの賭け・下」でした(・∀・)/
次はエミールとO探偵事務所、最後の事件です(*^o^*)/~