ジョルジュ・シムノン No.29◇ドーヴィルの花売り娘◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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〈O探偵事務所〉と名探偵エミールの華麗な事件簿!

 
 
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◇ドーヴィルの花売り娘 -名探偵エミールの冒険 1-◇ -Les Dossiers de l'agence O-
ジョルジュ・シムノン 長島良三 訳
 
 
傑作短編小説集─青年探偵エミールとメグレ警視の元部下トランス刑事が名推理を働かせて解決する難事件の数々。
 
 
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1.エミールの小さなオフィス
  (La cage d'Emile)
  ……「O探偵事務所」に女が1人訪ねてきた。その女は重要証拠物件を安全な場所に保管してほしいと依頼したが、その女は所長トランスからなぜかハンカチをすった。それもそのはず、彼女は昨今、保険会社を悩ましている宝石強盗で、ハンカチはその唯一の手がかりだったのだ!
 
 
2.掘立て小屋の首吊り人
  (La cabane en bois)
  ……死体を見つけたという不可解な電話をもらった所長トランスと名探偵エミール。ぶつくさ文句を言いながらそのオルレアンを尋ねるが、掘り立て小屋にはその痕跡がない。2人は通報したドーサン夫人に会いに行くが……
 
 
3.入り江の三艘の船
  (Les Trois bateaux de la Calanque)
  ……1人の女が海で遺体で発見され、近くにいた3艘の男たちが容疑者に。トランスは別件の依頼を抱え、エミールと秘書のマドモアゼル・ベルトと共にル・ラヴァンドゥーに向かう。果たして犯人は……
 
 
4.ドーヴィルの花売り娘
  (La fleuriste de Deauville)
  ……3で別の事件を捜査していたはずのトランスから「手を貸して欲しい」旨の電報をもらったエミール。トランスが受けた依頼は「素行の悪い夫人とその宝石類を注意深く見守る」ことだったのだが、最近2件殺人が起き、彼女の拳銃とスカーフが落ちていたのだ!
 
 
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「ドーヴィルの花売り娘」です(・∀・)
 
 
「シムノンってメグレ以外にシリーズもの書いていないのか?」という疑問に答えてくれる一冊です。
メグレ以外にもシリーズ探偵がいまして、それが本書の「名探偵エミール」です。いやー、存在を全く知りませんでした。こういう時、読破を目指そうと思うものです。
 
 
この長身痩躯の赤毛の青年エミールは所長トランスの「O探偵事務所」で使用人、カメラマン等々雑用をしています。
面白いのはこの雑用とかやっていて目立たないエミールの方がトランスよりも名探偵。というところです。
トランスも元メグレ警視の部下(ただしそんな設定はシリーズでは出てこない、というツッコミはしないでおく←)なので決して馬鹿でも無能でもないのですが、エミールの方が名探偵です。トランスは真面目で融通が利かないところがあるのでそこが決めてなのかも。
 
 
本書はそんな名探偵エミールと所長トランスの事件簿です。真相が凝っていてなかなか面白いです。シムノンお得意の人間観察もさることながら事件そのものが凝っています。
今回面白いのはメグレシリーズや運命小説では感じない「色」を感じ取ったことです。ふんわりとパステルカラーのような、薄い黄色や水色を読んでいて感じました。メグレシリーズや運命小説では色を全く感じず、感じたとしても黒か灰色か茶色か鈍色なんですがね……
 
 
O探偵事務所には他にも「バルべ犬」と呼ばれる悔悛した元スリと秘書兼タイピストでエミールに片思い中(と思われる)のマドモアゼル・ベルトがいます。シムノン作品にしては個性があって珍しいタイプのシリーズです。
 
 
これからしばらく名探偵エミールシリーズが続きます。ですが、全部図書館の本なので借りるタイミングを逃すと読めません。ハインラインの次がエミールでなかったら「あ、図書館行けなかったんだ」と笑ってやってください。
 
 
「ドーヴィルの花売り娘」でした(・∀・)/
次はホックとミステリーならではの「愉快な結末」!?(*^o^*)/~