ハンナ・ケント◇凍える墓◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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彼女の本当の顔とは? アイスランド最後の死刑囚の物語。

 
 
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◇凍える墓◇ -Burial Rites-
ハンナ・ケント 加藤洋子 訳
 
 
1829年アイスランド。殺人罪で死刑宣告を受けたアグネスは、刑執行までの間を行政官ヨウンの農場で過ごすこととなった。ヨウンの家族は彼女を恐れ、またアグネスの魂を導く役を担う牧師補トウティも、心を閉ざした彼女に戸惑う。しかし不器用だが真摯な人々との生活の中でアグネスは、少しずつ身の上を語り出すのだった…。実在したアイスランド最後の女性死刑囚を描いた渾身の物語。
 
 
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2人の若い男女を唆し、2人の男を殺害、放火した罪で死刑宣告を受けたアグネス。本来重罪人はコペンハーゲンに移送されて処刑されるが、アグネスともう1人の死刑囚フリドリクは見せしめも兼ねてアイスランドで処刑されることになった。
 
 
2人はそれぞれ行政官の農場に死刑執行まで身柄を預けられることになった。アグネスはヨウンの農場で働くことになったが、彼らの家族はマルグリッドを始め、彼女を恐れ、邪険にする。彼女は誰にも心を開かなかった。自分が指名したはずの牧師補トウティにさえも。
 
 
それでもヨウンの農場での生活が彼女とその周辺に変化を及ぼす。彼女は少しずつ語り始める。両親のない貧しく悲惨な少女時代とコサウノウ農場との邂逅、そして殺した男、ナタンのことーーートウティとマルグリッドが見た彼女の「本当」とは?
 
 
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「凍える墓」です(・∀・)
今回は変わり種で推理小説ではなく、実在した犯罪者の姿とその事件を描いた物語です。
その名はアグネス・マグノスドッティル。1829年に殺人と放火の罪で斬首されたアイスランド最後の死刑囚です。彼女と一緒にフリドリクも処刑されましたが、アグネスは2番目だったので本当に最後の死刑囚です。
 
 
そのアグネスは死刑執行までを農場で働くことになりますが……彼女がぽつりぽつりと語る彼女の人生が本当に悲しい。誰かの娘か妻か祖母でしか型にはまることが許されなかった時代、その型にはまらない、その枠組みからはみ出てしまった女性がどれだけ差別、迫害されていたのかを思い知らされます。「女性はこうでなければいけない」という枠組みは本当になんて窮屈なんでしょう。
 
 
アグネスが来て1番変わったのは農場の女主人マルグリッドです。体調悪化で来れなくなってしまったトウティに代わって彼女の核心的な真実「どうして事件は起こったのか、そこまでに何があったのか?」旨の話の聞き手を一身に引き受けます。最初の邪険はどこに……
というかマルグリッドは誰かの妻であり母であり、皆に必要とされる女性でアグネスがついになれなかった存在でその相手に1番の真実を理解してもらうところは皮肉でもありますが……女性とか云々抜きにしてもやはり母親というのは強い存在なんだな……と思いました。終盤、それも1番肝心な時にトウティは来ることができませんでしたが、マルグリッドがいてくれて良かった。
 
 
なおこの話はジェニファー・ローレンス主演で映画化されるそうです。……前も映画化されたような気もしますが、観に行こうかどうしようか検討中です。だって暗いんだもの、話が。
 
 
「凍える墓」でした(・∀・)/
次のハインラインは登場人物全員がトラブルメーカー!?(*^o^*)/~