ダフネ・デュ・モーリア No.2.5◇レベッカ・下◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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難破船の座礁がわたしに恐ろしい真実を明かす! 全ての真意は、真実はどこに!?

 
 
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◇レベッカ・下◇ -Rebbeca-
ダフネ・デュ・モーリア 茅野美ど里 訳
 
 
マンダレーで開かれた豪華な仮装舞踏会の翌日、海底から発見されたレベッカのヨット。キャビンには、一年以上前に葬られたはずの彼女の死体があった――。混乱するわたしにマキシムが告げた、恐ろしい真実。変わらぬ愛を確信し、彼を守る決意を固めるわたし。だが、検死審問ののちに、マキシムすら知らなかったレベッカの秘密が明らかになっていく。魅惑のサスペンス、衝撃の結末。
 
 
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わたしの扮装は1年前にレベッカが行ったものだった。かくしてサプライズは台無しになった。わたしの心はとうとうに限界に達する。マキシムは未だにレベッカを愛している。最初からわたしのことなど愛していなかったーーーそれにダンヴァース夫人が追い打ちをかける。彼女はわたしがレベッカに代わってマンダレーの女主人に君臨したことが許せないのだ。わたしはダンヴァース夫人に操られるように屋敷から転落ーーーしかけるが、そこに難破船が座礁したとの知らせが入った。
 
 
それ自体は収束したが、離礁させるために潜った潜水夫がそこに沈んだボートを見つけ、それがレベッカのボートだった。しかもそのボートには遺体が……
どういうこと? レベッカはとっくに埋葬されている。混乱するわたしにマキシムが告げた。自分が殺し、ボートに入れて沈めたこと、2人は愛し合ってなどいなかったこと、レベッカは優しさや良心に欠け、巧みな演技力と策略に長けた悪女だったこと……
 
 
マキシムはレベッカを愛したことはなかった。今まで愛したことはなかった……わたしは遺体発見と身元の再確認で窮地に立たされるマキシムを助けようと決心し、ここで初めて「おとな」になる。
 
 
検死審問が始まった。証言から他殺説が浮かび上がるが、証拠が無く、レベッカの死は自殺と断定された。しかしこれに彼女の(自称)従兄弟のファヴェルは納得せず、あろうことか、恐喝して来た。わたし、マキシム、フランク、ジュリアン大佐は話し合い、レベッカの予定帳に書いてあった「ベーカー」という男の下を尋ねるーーー
 
 
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「レベッカ・下」です(・∀・)
映画にもネタバレレベルでガッツリ踏み込むのでこれから観る! って方は回れ、右をした方がいいかもしれません。
 
 
最悪の結果に終わった仮面舞踏会。前半はわたしのレベッカに対する嫉妬心がじわじわと侵食し、自身の命すら脅かす様が描かれています。こういう侵食する様子は映像よりも文章の方が効果的だと思います。みんなみんなレベッカを崇める、みんなみんなレベッカと比べる、みんなみんなレベッカとは違うと言う、みんなみんなわたしにレベッカを見ている、レベッカレベッカレベッカ……
 
 
そしてやっぱりダンヴァース夫人、怖いですねー。狂信者って怖い。しかしただでさえ、崇拝していたレベッカが突然死んでしまったのに、1年と置かずに後妻が来て、それが女主人の器でないと知った時の失望は大きいですよね。
そうだ、それで思い出したけど原作って火事のシーンないんですね! ダンヴァース夫人が放火するシーンすらない。最後の一文で仄めかすように……いや、こういう書き方をする作家、初めて見ました。
 
 
映画を見た時は「今まで認めていなかった"わたし"が一夜で変貌してしまって自立してしまったこと、屈すること無きレベッカが病気に屈し、自殺を企てたこと、これで名実晴れてマンダレーの主人が"わたし"たちになってしまったことに耐えきれずにマンダレーに火を放った」んだと思っていました。しかし小説を読むと……それだけでないと思ってしまうのはわたしだけなんでしょうか。文章を読むにありがちな想像力が肥大化しているんでしょうか。
 
 
 
後半の見所はやはり「わたし」の変貌です。危険と窮地が人を変えるとは言いますが、本書の場合、それプラス愛の勝利です。レベッカに勝った! レベッカはマキシムに愛されたことはなかった! という勝利感。これって男性にはない勝利感だと思います。男性は愛の獲得で人生の指針がより明確になったりはするけど、「え、変わった」と絶句されたりはしませんよね。しかしマキシムは結果的にレベッカの思い通りに動かされたわけで、やはり最後までレベッカの勝利だった気がします。
 
 
マンダレーは失われた。しかしわたしはまだマンダレーの夢を見る。レベッカの創造したあのマンダレー、屋敷も庭園も領地全体にレベッカの息吹がかかっている。崇拝者もいた、みんなが彼女の虜になった。マンダレーとレベッカは同化している。わたしたちは囚われている。未だに。もしかしたら永遠に。死してなお、影響力を及ぼす女……それは恐ろしくも美しい。
 
 
「レベッカ・下」でした(・∀・)/
次は久しぶりのクロフツか、またも海外文学のどちらかです(*^o^*)/~←え