ダフネ・デュ・モーリア No.2◇レベッカ・上◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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後妻に迎えられたわたしを待っていたのは優雅な邸マンダレーに色濃く残る、前妻レベッカの気配ーーー死んだ女に苛まれるわたしはだんだん……

 
 
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◇レベッカ・上◇ -Rebbeca-
ダフネ・デュ・モーリア 茅野美ど里 訳
 
 
ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見た――この文学史に残る神秘的な一文で始まる、ゴシックロマンの金字塔、待望の新訳。海難事故で妻を亡くした貴族のマキシムに出会い、後妻に迎えられたわたし。だが彼の優雅な邸宅マンダレーには、美貌の先妻レベッカの存在感が色濃く遺されていた。彼女を慕う家政婦頭には敵意の視線を向けられ、わたしは不安と嫉妬に苛まれるようになり……。
 
 
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ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見たわたしは今はもう無きマンダレーの暮らしを思い出す。
 
 
わたしはヴァン・ホッパー夫人のコンパニオンとして共にモンテ・カルロに来ていた。そこで由緒正しい、美しいマンダレーの主、マキシム・デ・ウィンター氏と出逢った。彼は前妻を海で亡くし、深い傷を負っていた。わたしは彼と恋に落ち、電撃結婚となった。
 
 
ついにデ・ウィンター夫人としてマンダレーに入ったわたしは貴族の暮らしや習慣に馴染むことができない。使用人達も領地の人間も何かと前妻レベッカと比べる。邸には彼女の習慣、彼女の癖、彼女の使った品物が全てそのまま残っていたのだ。
 
 
社交的で誰にも好かれていたレベッカ。それに対し、わたしは……わたしは邸の至るところにレベッカの気配を感じ、だんだん不安にかられる。特にレベッカを崇拝していた家政婦頭のダンヴァース夫人はレベッカの愛用品を見せ、わたしを敵視する……
 
 
そんなおり、マンダレーで仮面舞踏会が行われることになった。わたしはダンヴァース夫人の言葉からヒントを得て、絵画の白いドレスの娘の扮装をするが、それを見た瞬間、マキシムらの様子が変わって……
 
 
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「レベッカ・上」です(・∀・)
デュ・モーリアの代表作にして映画でも名作なゴシック・ロマン登場です。
 
 
実は先日、これの映画を見る機会に恵まれまして、前妻レベッカの濃い存在感とダンヴァース夫人のサイコ的な性格に恐怖しながらも、原作が気になり、クロフツが届かないのをチャンスとばかりに読んだ次第です。
 
 
いやー、怖い怖い。
というか不気味です。そこかしこに浮かび上がる前妻レベッカと彼女を崇める人たちが。ダンヴァース夫人、マジで怖い。いや、本当に怖いのは仮面舞踏会の後ですね! うん! 
 
 
映画でもレベッカの持ち物がわたしを不安にさせていますが、映像よりも文章の方が不気味さが際立つと思います。映像だと想像の余地なしに伝わりますけど「あれもこれもそれもどれも、その習慣も癖も慣習も言葉も服も化粧品も調度品もみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみーんな、レベッカのもの」と文章で描かれるとと毒のようにじわじわ侵食されていくような気がしません? 映像はナイフ、文章は毒。
 
 
レベッカのようになれない「わたし」は名前を呼ばれません。明記されることもありません。謎の1つですが、わたしはなんとなく読んでいて分かったような気がします。自分に自信が無くて、死んだレベッカの存在と彼女を崇める他人の言葉に不安と嫉妬に駆られるーーー謂わば自分を保てない「わたし」。名前を呼ばれない、というか明記されないのはそれを表しているからだと思うんです。名前は自己を表すものですから。
 
 
上巻はダンヴァース夫人の罠に嵌り、マキシム最大の地雷を踏んでしまったところで終わります。いざ、恐怖と悪意の下巻へ(*^o^*)/~