その部屋で泊まる者には死が待っているーーーその部屋に入った者を悉く殺す「灰色の部屋」の秘密とは!?
◇灰色の部屋◇ -The Gray Room-
イーデン・フィルポッツ 橋本福夫 訳
チャドランズ屋敷の「灰色の部屋」と呼ばれる閉ざされた部屋では、過去に二人の人間が不可解な死を遂げていた。その死体には外傷もなく、なんの異常も見出されなかった。そしてまた、部屋の謎に挑戦しようと一夜をそこで過ごした、屋敷の主ウォルター卿の娘婿トーマスが、原因不明の死を遂げる。ロンドンの有名な探偵が捜査を開始したが……『赤毛のレドメイン家』の著者の傑作。
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ウォルター・レノックス卿が所有するチャドランス屋敷には封印された部屋がある。「灰色の部屋」という名前の、色々な家具やらごった返してはいるが、とても綺麗な部屋だ。その部屋がどうして封鎖されているのか? ーーー人が死んでいるからだ。2人も。
しかも2人とも目立った外傷がなく、死因不明。動機もない。そもそも1回目と2度目とでは60年以上も間が空いているのだ。原因は分からないまま、部屋は封鎖され、今では誰も使っていない。
ウォルター卿は話すつもりな毛頭なかったが、客人を招いた席でついその話題が出てしまった。それを聞いたウォルターの娘婿トーマスがならば、今度は自分が入って部屋の無実を証明しようと甥のヘンリーに焚きつけた。ヘンリーは反対するが、却って意固地になり、トーマスはその部屋にとうとう入ってしまった。
トーマスは死んでいた。またも部屋は人を死に至らせた。三度の怪事にロンドン警視庁でも腕利きだったハードキャスルが調査にやってきた。そしたらこの男も翌朝、死体となって発見された。しかし外傷はないし、死因もよく分からない。もしかしたら、死んでいないのでは……? という懸念が拭いきれない。
死んだトーマスの父親で牧師のメイはキリスト教を狂信し、黒幕は人間が介入できない、超現象的な存在によるものだと断言し、ウォルター卿を言いくるめて今度は自分が件の部屋に入ったが、生きて出ることはなかった……
さすがのウォルター卿も参ってしまうが、新しく調査にやってきた4人の警察官たちは死なずに朝を迎えた。静養と気分転換を兼ねてイタリアに旅行に行ったレノックス父子はそこで「灰色の部屋」の秘密を解き明かせるかもしれない旨の手紙を受け取った!
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「灰色の部屋」です(・∀・)
クロフツが今、手元にないのでアン・ペリーが終わって早々、イーデン・フィルポッツのターンに入りました。初めまして。
イーデン・フィルポッツは本格黄金時代の、比較的初期に活躍した推理作家です。フィルポッツは推理小説の前には歴史小説や田園小説を書いており、そちらでも名を馳せています。推理小説を書き始めたのは晩年になってからだと言われ、作品は250作以上のうち20作ほどだと言われています。
推理作家駆け出しの頃のクリスティーに助言したり(「邪悪の家」は彼に捧げられています)、あのS・S・ヴァン・ダインが絶賛したりと名声もありました。江戸川乱歩も次作の「赤毛のレドメイン家」を大絶賛していますし、あまり名は聞かないけど「推理小説が好きなら絶対に読むべき。じゃなきゃ潜り」な作家なのかもしれない。
1921年に書かれた本書は人を殺す部屋というオカルト的題材です。「赤後家の殺人」とパターン一緒です。英国ミステリーはこんな風に一族に伝わるオカルト的伝説が好きです。読者も。もちろん、日本も。怖いけど←
1人でその部屋に入ると死ぬ……しかも死因が分からない。え、ショック死? と思いましたが、まさかこう来るかぁ! えー……これ、推理小説じゃなくって、純粋にゴシックホラーとかの方が良かったんでないか!? と思ってしまったわたしは無粋なんでしょうか……
あと殺人云々、犯人云々の前に「こいつ、死んでないかも」に絶句。そこからかよ!?
前半でいきなり探偵役だと思っていたハードキャスルが死に、狂信、盲信的なメイ牧師も死んで誰が探偵だ!? と思ったら、まさかのあんたか、じいさん← 最後の方にぽろっと出てきただけあって拍子抜け。美味しいとこ、全部持って行った。まぁ、この話だとそうなるのかもしれない。現実でも。
そんなわけで初めてのフィルポッツでした〜。本書は真相が奇抜というか「えー……( ̄Д ̄;;」となったので余計に次読む「赤毛のレドメイン家」が楽しみです(*^o^*)/~