秘密の過去を持つ女に襲いかかる殺人の疑惑! 忌まわしき過去が帰ってきた!
◇過去ある女-プレイバック-◇ -Thd Screenplay of "Playback"
レイモンド・チャンドラー 小鷹信光 訳
「生きていかなきゃならない夜がまだいっぱいありすぎる」――アメリカを逃れてカナダの港町ヴァンクーヴァーにやってきた謎に包まれた若い美女。彼女につきまとうジゴロ、ホテルのペントハウスに住む独身紳士、そして殺人課警視。彼女の部屋のバルコニーで発見された男の射殺体。悲劇的な女が投げこまれた花やかな、そして卑しい世界を、見事な台詞と小気味のいい展開で描いたフィルム・ノワールの逸品。
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆
アメリカからヴァンクーヴァーにやってきた若い美女ベティは税関で見咎められたところをミッチェルという男に助けられる。ミッチェルはホテルを取ってくれたは良いが、その後も彼女に付き纏う。
ミッチェルをかわしたベティはレストランでブランドンという紳士と知り合う。彼はベティが泊まるホテルに住んでいる。誘われてそのブランドン主催のカクテル・パーティーに顔を出してみるとなんとそこにあのミッチェルと出くわす。その愛人マーゴとパトロンのクラレンドンも一緒だった。
雷鳴の中、ベティは忌まわしい過去を思い出す。雨が降ったので窓を閉めようとしたら……バルコニーに男ーーーミッチェルの死体があった!
かつて殺人容疑で有罪の一歩手前まで行ったことのあるベティは逃げ出そうとする。そこをブランドンに見つかり、思い留まる。警察は殺人だと断定して捜査を始めるが、不利な過去のあるベティに容疑の目が行くのは時間の問題だ……
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆
「生きていかなきゃならない夜がまだいっぱいありすぎる」(P.117)
「過去ある女-プレイバック-」です(・∀・)
チャンドラーによる映画脚本、その3です。これは後々マーロウものの長編「プレイバック」の原型になり、マーロウの名台詞の1つ「やさしくなれなかったら、生きている資格がない」を生むことになります。この台詞、村上春樹はどう訳したんでしょう? 楽しみです。
本書は原型ということでマーロウは登場せず、ベティという名前の秘密にしておきたい過去を持つ女が主人公です。その女を巡ったサスペンスです。ベティの逃亡劇がとてつもなく寂しく、孤独に見えます。おかしいな、ブランドンいるのに。そして彼女に惹かれ、有罪とは思えない警察官キレインがいるのに。彼女に惹かれるブランドンとキレインの違いが良い味出しています。
脇道逸れますけどキレインの上司が「私の判断が間違っているなら、それを証明してみせろ!」とキレインに怒鳴るシーンが印象に残っています。警察官の矜持をキレインに諭すシーンです。
このベティはマーロウものの「プレイバック」でも登場するようです。……ということはここでは曖昧になった2つの事件の真相が綺麗に明かされるんでしょうか。映画の方は「視聴者の想像に任せます」って感じでしたが。確かにどうとでも取れるんですよ、これ。
映画脚本はこれにておしまい。名作「ロング・グッドバイ」まであともう少しだ!
「過去ある女-プレイバック-」でした(・∀・)/
次はクロフツのお縄にかかる← 犯人たちが主人公です(*^o^*)/~