その家に災厄を運んだのは町そのものだったーーー
エラリー、推理に人間性を見出す。
◇災厄の町◇ -Calamity Town-
エラリー・クイーン 越前敏弥 訳
結婚式直前に失踪したジムが、突如としてライツヴィルの町に戻ってくる。三年間じっと彼の帰りを待っていた婚約者のノーラと式を挙げ、幸福な日々が始まったかに見えた。ところがある日、ノーラは夫の持ち物から奇妙な手紙を見つけた。そこには妻の死を知らせる文面が……旧家に起こった奇怪な毒殺事件の真相に、名探偵エラリイが見出した苦い結末とは? クイーンが新境地に挑んだ代表作を新訳で贈る!
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新作を執筆するためにはるばるライツヴィルという町にやってきたエラリイ。エラリイ・スミスという架空の名前でやってきたものの、著名作家と勘違いされてしまう。
ライツヴィルは軍需景気ゆえに宿泊施設に空きがなかった。そのためエラリイは「災厄の家」と呼ばれる曰く付きの家を借りることに。
その家は本当は結婚したノーラ・ライトとジム・ヘイトの新しい住居だったのだ。しかし3年前、結婚式前日に出奔し、家は空き家同然だったのだ。
しかしその家は2人以外の人間を出入りを許さなかったのか。なんとジムが戻ってきたのだ！ それにライツヴィル中が大騒ぎ。もちろんノーラの実家のライト家も大騒ぎだが、彼を信じて待っていたノーラはジムと結婚し、「災厄の家」に。
荷物を整理していたノーラはジムの荷物の中に自分の死を告げる手紙を見つけてしまった。取り乱すノーラ。その場に居合わせたエラリイとパットことパトリシアは彼女を守るべく共同戦線を張る。
果たして新年、ジムを尋ねてきた姉のローズマリーが死に、ノーラが倒れ、ジムが逮捕されてしまう。ライツヴィル中が敵になったライト家の、災厄を振り払うための孤軍奮闘が始まった！
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「災厄の町」です(・∀・)
これを読み終わった瞬間、「読み終わったぜ、イェイ！」と全世界に宣言したかったです（笑）
ついに楽しみにしていた「災厄の町」です。訳は角川ver国名シリーズでお馴染み越前敏弥さん。なんで「エラリイ」と「エラリー」で使い分けるの？ と突っ込みはともかくとして、かなり読みやすくなった模様。今回、一語、決定的な改訳があったので旧訳で楽しんだ人も一読して損はないかも。
そんなわけで今回、エラリーは地元のニューヨークでもなく、ハリウッドでもなく、はたまた実在する都市でもなく、架空の町「ライツヴィル」で事件に遭遇します。
架空の町シリーズ、ライツヴィルシリーズの始まりです！
ライツヴィルはニューイングランド州のどこかの小さな町。噂は瞬時に町の全てを駆け巡る閉鎖的な町でもあります。
今回、登場するキャラクターはかなり人間的に描かれています。人間性に富んでいます。
ライト家の三人姉妹も存在感豊かさだし(誰が誰だかはっきり分かる←ここ大事)、パットを巡ってエラリイと争うカートも複雑な心情の持ち主。
それに比例してなのかエラリイも国名シリーズでは考えられないほど人間的になっています。それこそあんた、本当にあのエラリイ・クイーンなの？ と思えるほど。
この話は国名シリーズのエラリイでは絶対に解決できなかった。
登場人物が並外れて人間的なのではなく、エラリイが人間的になったため、彼が見た人間たちもそう映ったのだ。
今回、エラリイは以前なら絶対に考えられなかった行動をとります。そのラストは真相と相まって哀しいものがあります。
ただ探偵としては「こいつ、あり得ない！」ですが（苦笑）そこを期待すると肩透かしを食らうような。
人間面を鮮やかに描いたことでこの作品は名作になったのだとわたしは思います。
わたしはクリスティーから入ったため、人間的魅力に富んだキャラクターが好きです。なのでいまのエラリイの方が好感が持てます。いつも女たらしという名前のキューピッドになっているのはともかくとしてね←
これからもエラリイには「人間」であってほしいと思います。
「災厄の町」でした(･∀･)/
次はフェル博士で「緑のカプセルの謎」です(*^o^*)/~