人間は愚かしく悲しい。しかしその中に美しさを見出せる生き物である。
◇鳥ーデュ・モーリア傑作集◇ -The Apple Tree-
ダフネ・デュ・モーリア 務台夏子 訳
ある日突然、人間を攻撃しはじめた鳥の群れ。彼らに何が起こったのか? ヒッチコックの映画で有名な表題作をはじめ、恐ろしくも哀切なラヴ・ストーリー「恋人」、奇妙な味わいをもつ怪談「林檎の木」、出産を目前にしながら自殺した女性の心の謎を探偵が追う「動機」など、物語の醍醐味溢れる傑作八編を収録。『レベッカ』と並び代表作と称されるデュ・モーリアの短編集、初の完訳。
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えー、会えませんでした←
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1.恋人
(Kiss Me Again, Stranger)
……ぼくはある日、仕事帰りに行った映画館である女性に出逢い、強烈に惹かれる。しかし彼女はとある決意を秘めていた。
2.鳥
(The Birds)
……鳥が突然人を襲うという怪異が持ち上がった。強烈な寒さゆえのエサ不足が原因か? 人々は家に篭り、鳥への襲撃に立ち向かおうとするがーーー
3.写真家
(The Little Photographer)
……海辺のリゾート地で美しい侯爵夫人は写真家と逢瀬を重ねる。それは侯爵夫人にとっては一時だけのはずだった。しかし写真家は違った。
4.モンテ・ヴェリタ
(Monte Verita)
……モンテ・ヴェリタという山に登った夫婦のうち、女はそこで永久に姿を消した。モンテ・ヴェリタには神秘的な力で女性を引き寄せるという不気味な伝説があったのだ。
5.林檎の木
(The Apple Tree)
……煩わしい妻が死に、夫は自由になった。しかし今度は林檎の木に悩まされ、被害妄想を抱くようになる。
6.番(つがい)
(The Old Man)
……1組の夫婦がずっとずっと一緒にいられるためにとった非道にして、哀しい方法とは。
7.裂けた時間
(The Split Second)
……ただ散歩に出ただけだった。しかし帰ってきた我が家は知らない人々に占領され、ことごとく自分の存在が否定される。存在しないものになった彼女の行き先は?
8.動機
(No Motive)
……出産を控え、幸せの絶頂だった夫人が突然、自殺を遂げた。動機はないように見えた。探偵ブラックが辿り着いた、嘘と真実とは?
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チェスタトン氏(彼の名がギルバート・キースというカッコいい名前であることをつい先日知りました←)にもギデオン・フェル博士にも会えなかったわたしは代わりにダフネ・デュ・モーリアという作者に出逢いました。
ヒッチコックが映画にした「鳥」の原作者です。
あと有名なのは「レベッカ」ですかね。ある男の後妻になった「わたし」が先妻レベッカの影に悩まされるお話です。
デュ・モーリアはフランスの亡命貴族を先祖に持ち、両親は共に俳優女優の芸術一家で育ちました。
調べたら著作がかなり多くてびっくりです←
とまぁ、「鳥」と「レベッカ」の原作者というくらいだから、すっごくサスペンス色の強い、不可解な話の集まりだと勝手に思っていました。ですが、どうしてどうして。
ここの作品たちはすっごく恐ろしくて、哀しくて、美しいじゃないですか!
いや話、というよりは登場人物たちが。ですね。
彼らの一挙一動に恐怖を覚えたり、哀しみを感じたり、美しさを見出しました。
彼らは時に愚かしくて、時に哀しいです。その姿にわたしは恐怖を、哀しみを、憐れみを読んで感じました。
しかし彼らは繊細なガラス細工のように、脆くて、美しい。
物語そのものに美しいとは幾度か感じたことはありましたが、
登場人物たちそのものを美しいと初めて思いました。
上記のように、散々なこと言っているのに可笑しいですが、本当にそう思いました。どうしてですかね。共感できる部分があるからでしょうか。自分と重なる部分があるからでしょうか。
特に好きなのは1.4.7.8です。特に4は上記の感想を初めて見出した作品でもあります。
予想以上にこの作品集、おもしろかったので「レベッカ」も読んでみようと思います。
次回こそフェル博士かチェスタトン氏ですが、まさかまさかのブラウン神父がもう一度、「推理小説のお時間」の扉をノックするかもしれません←