竹田いさみ 著 世界史をつくった海賊 (ちくま新書)
世界史とあるが、話の中心は16~17世紀のイギリスについてである。イギリスの歴史に興味がある方、旅行などでイギリスに行く予定のある方は特におすすめだ。
イギリスは18世紀以降は時代の先頭に立つ先進国としてならしたが、16~17世紀の時点ではまだまだ発展途上国だった。いかにして先進国に成り上がったのか。その大きな原動力となったのが実は海賊だったというのが本書の主題だ。
当時のイギリス政府にとって海賊は集金マシーンのような存在だった。海賊が略奪行為によって得た資金(海賊マネー)が、裏ではイギリスの国家予算として運用されていたのだ。 海賊はスペイン船やポルトガル船を襲撃し、そこから得た物品を売却することで資金を調達した。 本書では「海賊たちの暗躍がなければ、イギリスの王室財政、ひいては国家財政さえ破綻していたことであろう」とまで言い切っている。
海賊といえば、パイレーツ・オブ・カリビアンやONE PIECEが思い浮かんでくる。
こちらが好きな方もこの機会に是非とも本書を手にとってみてほしい。ルフィやジャック・スパロウ達の戦闘も魅力的だが、実際の海賊も負けてはいない。海賊はイギリス国家の戦闘マシーンとしての役割も担っていた。
スペイン「無敵艦隊」との海戦では海賊は勝利の立役者として大活躍した。当時、小さな島国イギリスと、大国スペインの国力の差は歴然としていた。その国力の差を覆すことができたのは海賊の知的な秘策によるものだ。ゲリラ戦、スパイ戦、火船攻撃など、本書では海賊が実際に用いた戦略についても描かれている。
本書の最後ではスパイス、コーヒー、緑茶、紅茶、砂糖などの商品貿易にも言及されている。実はこれらの商品貿易もイギリス海賊とその末裔が主導したものなのだ。イギリスの社会、文化を語る上で重要な要素である「コーヒーハウス文化」「紅茶文化」「クラブ社会」などは、歴史の断面を切り取ってみると、どこかで海賊ビジネスに頼っていたと言える。かの有名な東インド会社も、もともとは海賊がエリザベス女王に会社設立の案を持ちかけたものだ。
イギリスの歴史を海賊という切り口で見ていくことで、海賊がいかに重要な存在だったのかが浮き彫りになり、イギリスという国家の成り立ちにおける驚きの一面を見ることができる。海賊はその足音をしっかりと世界史に刻みこんでいた。
