13話目 場面緘黙症についての経験談小説 | HSP✖️不登校サポーターaikoᵕ̈*親と子を繋ぐ居場所作りをしています‍‍

HSP✖️不登校サポーターaikoᵕ̈*親と子を繋ぐ居場所作りをしています‍‍

集団の場が苦手、人と話したいのに緊張して上手く話せない、場面緘黙症、共感性の高いHSPの気質をもつaikoだからこそ不登校になる子供の気持ちをくみとってきました。これから不登校の子と親を繋ぐ居場所を作ります ̖́-‬

放課後、誰もいなくなった教室に

あゆと石井くんと川口さんと先生だけが残っていた。



 

先生の机の隣の下に座って、隠れるようにして4人が囲む状態を作っていた。



 

なんていうメンバーなんだろう。



 

こんな状態であゆは、何もすることができない。







 

「石井くんと川口さんは、本当に中村さんが取るのを見たの?」





 

先生のその言葉を合図にあゆにとって地獄のような時間が始まった。





 

「はい、見ました」


 

石井くんがそう言う。





 

「見ました」



 

川口さんも同じように答えた。



 

その時、ふっと石井くんがあゆを見て意地が悪い笑みをむけた事に気がついた。




 

私は、はめられたんだ。




 

その時にようやく何が起こっているのかに気がついた。



 

「中村さん、ハガキを取ったの?」


 

あゆは、思いきり首をふった。



 

あゆにとって精一杯できる意思表示だった。



 

その後、また繰り返し石井くんと川口さんに質問をして、あゆに聞くと言うことを何回か繰り返した先生は、こんな事をあゆに言った。





 

「でもね、中村さん。2人も中村さんがとったっていうのを見た人がいるのよ」




 

先生の言葉に何も返すことができない。


 

目の前が真っ暗になりそうだった。



 

とっていないものをとっているなんて言うことなんて、できない。



 

あゆは、そこまで人の言いなりになれなかった。



 

何度もとったの?


 

と聞かれるたびに首を振り続けた。









 

「石井くんと川口さん、先に帰りなさい」



 

同じようなやりとりが繰り返されて40分くらいたった頃



 

なぜか、先生は2人だけを先に帰らせた。




 

先生と2人だけになった時、そこからさらにあゆへの追求が始まった。




 

「中村さん、とったの?」


 

あゆは、首をふる。




 

「ハガキをとったの?」



 

「中村さんがとったの?」



 

「ハガキをとったの?」



 

「中村さんがとったの?」



 

「ハガキをとったの?」



 

「とったの?」



 

「ハガキをとったの?」



 

「とったの?」




 

「とったの?」




 

とったの?

 

 

 

 

先生は、声色を変えないまま、ずっと同じ質問を繰り返した。

 

 

 

 

あゆは、先生に聞かれるたびに必死に首を振り続けた。



 

その時間は、気が遠くなるんじゃないかと思うほど長い時間に感じられた。





 

それは、まるで尋問のようだった。






 

首を振り続けるたびにだんだんと生気を失うように疲れてきた。








 

私は、とっていない。







 

しんどい。








 

私は、とっていない。









 

もう、嫌だ。









 

私が、







 

私が












 

私がとったって言えば、もうこんなこと終わるのかな?









 

あゆは、だんだんそんな事を思い始めていた。







 

「中村さんがとったの?」






 

先生とあゆが2人になって1時間たった時




 

あゆは、静かにうなずいた。














 

その後は、何もなかったようにすぐに帰された。




 

ランドセルを背負って歩きながら帰る時



 

あゆは、今まで感じたことがない思いを感じていた。




 

あれ?





 

おかしいな。



 

いつもだったらどんなことをされても耐えられたのに。




 

なんか、変だよ。









 

私、なんかおかしいよ。






 

前だけを見つめながら、心がなくなったような



 

まるで麻痺したような感覚を受けていた。




 

自分ではよく分からない状態で家に帰りついた。




 

「あゆちゃん、お帰り」



 

お母さんの声が聞こえた。



 

あゆは、何も答えることができずにそのまま家に入ってランドセルを置いて座り込んだ。




 

「あゆちゃん??」



 

異変を感じた母があゆに近寄って声をかける。




 

あゆは、何も答えられない。



 

「ねぇ、あゆちゃん、どうしたの?」



 

何度も母がそう聞いてもあゆは、答えないまま、体操座りをして前だけをぼーっと見ていた。



 

その状態をおかしいと思った母が急いで学校に電話をかけた。





 

「あゆが、学校から帰ってきてから様子がおかしいんです。何かあったんですか?」




 

あっ




 

お母さんが先生に電話してる。




 

あゆの隣で母が一生懸命、先生に説明を求めている声が聞こえてきた。



 

母と先生のやりとりが母の声を通してあゆに伝わる。




 

だけどあゆは、まるで感情をなくしたように何も感じることなく、前だけを見つめてぼーっと座っていた。





 

「あゆちゃん、先生から聞いたんだけど、あゆちゃんが小林君っていう子のハガキを取ったの?」



 

そんな母の問いかけに、はっと目が覚めたようにして答えた。



 

「取ってないよ!私は取っていない!」




 

一生懸命、母に訴えるようにして声をふりしぼった。




 

そんなあゆの姿を見て母は、先生との電話を切った後、何があったのかあゆに一つ、一つ聞いて言った。







 

そしてあゆの母は、困った顔をしながらあゆが一番聞きたくなかった言葉を口にした。






 

「あんたが取ったんじゃないの?」









 

あゆは、母の言葉を聞いた瞬間、時間が止まったような感覚を受けた。



 

クラスメイトからも先生からも母親からも



 

あゆがハガキを取ったと言われたのだ。



 

大好きなお母さんまでも自分を疑ったのだ。




 

誰1人としてあゆが取ったんじゃないと言ってくれた人は、いなかったのだ。






 

もしかしたら私、本当にハガキを取ったのかもしれない。





 

小さな心は、せめぎ合い揺れ始めていた。



 

 

 

オンライン会の申し込みはこちら