9話目 場面緘黙症についての経験談小説 | HSP✖️不登校サポーターaikoᵕ̈*親と子を繋ぐ居場所作りをしています‍‍

HSP✖️不登校サポーターaikoᵕ̈*親と子を繋ぐ居場所作りをしています‍‍

集団の場が苦手、人と話したいのに緊張して上手く話せない、場面緘黙症、共感性の高いHSPの気質をもつaikoだからこそ不登校になる子供の気持ちをくみとってきました。これから不登校の子と親を繋ぐ居場所を作ります ̖́-‬

「あゆちゃん、ここだよ。」


夏休みに手をひかれながら父に連れてこられた場所には、小学1年生から6年生まで40人ほどの子供たちが大きな広間に集まって荷物の整理をしていた。



あゆは、大きな荷物を持ってきていた。




ここ、どこだろ?

何する所だろう?



あゆは、緊張して固まっていた。



そのうち父が帰るからねと言ってあゆをその場に残して行ってしまった。


ここは、父の会社の行事の一つで春、夏、秋休みに小学生の子供達がいろんな体験やレクレーションを通してすごす二泊三日の体験施設だったが、そんな事を知るよしもないないあゆは、ただひたすらその場に固まっていた。



その時、受付けをしていたおばちゃんの1人が


「中村さんのお子さんよねー!大きくなったねぇ、名札に名前を書いて、あそこのロッカーに荷物を入れてきなさい」


と言ってくれたのであゆは、素直に従った。



基本的にあゆは、大人の言うことはよく聞くいい子だった。



こんな場所に1人で残されてしまったけど、嫌だとは言えなかった。



そのうち、子供達が集合して班が作られた。



あゆは、緊張してしゃべることができない。





「ねぇ、お昼ご飯食べにいこうよ」


昼食の時間になり、同じ班にいた女の子があゆに声をかけた。



「うん!!」



びっくりするくらいすんなりと声を出すことができた。



あゆは、嬉しい気持ちを隠すことなくその女の子と一緒にお昼ご飯を食べに行った。


ご飯を食べる場所は、1階にあり2階の大広間から階段をスキップするような勢いでかけぬけた。




私、しゃべれる!

ここは、学校じゃない。


誰も私がしゃべれないことを知らない。



しゃべっても誰も変な目で見ない。



だから、いいんだ!


しゃべってもいいんだ!




不安な気持ちから一気に今まで感じたことのない嬉しい感情に変わっていた。



合宿で、できた友達にトイレに行こうと誘われること。


お風呂に行こうと誘われること。


夢のように嬉しかった。


学校では、誰にも誘われることなんてないのだから。
クラスメイトが声をかけてくる時は、しゃべってみてと言われるか、授業中で必要な時のみだった。



ここでは、自由に自分を表現できると思った。



お世話をしてくれるおばちゃんスタッフの人たちも、子供たちもみんなすごく優しい。




合宿中にみんなで歌を歌った。



大きな声で歌を歌った。




学校では、歌を歌えなかったのに、ここでは人目を気にせずに大きな声で歌を歌った。



知らなかった。



みんなで歌うってこんなに楽しいんだ。



私、こんなに大きな声で歌えてる!



すごいよ。
なんて気持ちがいいんだろう。
なんて清々しいんだろう。


こんな感覚は生まれて初めてだった。


人前で声を出せることがこんなに幸せなことだなんて。



言葉にならない嬉しい感情があゆの体中をどんどんかけぬけていく。



嬉しい、楽しい、ワクワクする!




そんな感情ばかりで満たされていた。



あゆにとってここは、自分を表現できるかけがないのない大切な場所になった。



これから先、小学校、中学校、高校と関わることになった。



そして、大人になっても付き合っていける大切な友達とここで出会うことになる。




どんなに時間がたっていても、ついこの間会ったみたいに話しができる本当の友達に出会うことになる。




あゆの心が幸せと嬉しさで満たされ、自分らしくいれる場所との出会いが、あゆに力をくれた。