建築家の安藤忠雄は
祖母のもとで育った。
祖母は根っからの大阪の商売人で
非常に合理的だったという。
合理的過ぎると思えることもあったが
「宿題は全部学校で済ませてこい」
と。
安藤少年は、その言いつけを守り、
授業が終わると
すぐ学校で宿題を済ませた。
教科書も学校に
置きっぱなしであるが、
学校に置いているのだから、
教科書を忘れることもない。
おかげで、学校から帰ってくれば、
あとは遊びの時間である。
先生に
「安藤はなぜ、
家で宿題をせえへんのか」
と注意はされたが、
「本を持って帰って
また持っていくのは不合理」
と思う身勝手な子どもに
先生もかなり困ったらしい。
(安藤忠雄「仕事をつくる 私の履歴書」、日本経済新聞出版社)