芸術家の岡本太郎氏の個展で
2時間も作品を見た女性が
「いやな感じ!」
といって立ち去った。
岡本太郎氏は、それを聞いて
すっかり嬉しくなった。
「こちらは自分の生きているアカシを
つき出している。
人間の、本当に燃えている生命が、
物として、対象になって目の前に
あらわれてくれば、それは決して
単にほほ笑ましいものではない。
心地よく、いい感じであるはずがない
むしろ、いやな感じ。
いやったらしく、ぐんと迫ってくる。
そうでなくてはならない」
岡本太郎氏は、
「それで良い、絵を見せた甲斐がある
その人こそすばらしい鑑賞者だ」
といった。
(「自分の中に毒を持て」岡本太郎、青春文庫)