劫尽童女 / 恩田陸 | 活字中毒

劫尽童女 / 恩田陸

「劫尽火(こうじんか)」という言葉があるそうです。劫火ともいうらしいのですが、そのような言葉は私は知りませんでした。本の後ろ帯の部分に「世界が崩壊するときに、世界を焼き尽くす炎のことをそう呼ぶ」と書いてあったのです。この本を手に取ったとき、劫尽という言葉と童女という言葉のミスマッチに不思議な感覚を覚えてました。


国家機密に関わる研究を行うZOOという機関で科学者として働いていた伊勢崎博士は、ZOOとの関係悪化が原因で研究内容をすべて持ったまま失踪。そして7年後、博士は突如として長野の別荘に現れた。彼の子どもと共に・・・。


伊勢崎遥は天才的な科学者である父によって、超人的な能力を植えつけられています。身体能力、頭脳などが並外れていて、自己を守るために人を殺すことを厭わない。遥こそがZOOが望んでいる実験結果だったのですが、外部に漏れることを恐れて遥を追い続けます。遥と同様に特殊な能力を植えつけられて殺人兵器として育てられた犬・アレキサンダー。そして、ZOOでアレキサンダーのパートナーとして働くハンドラーといわれる男の関係が最後までずるずると続きます。最初の頃は「遥という特殊な能力を与えられてしまった子どもの悲哀のようなものを書いた?」という印象だったのですが、途中から米軍が出てきて原発の話につながったりしながら二転三転していきます。


幼い頃に両親を普通ではない形で失い、ZOOに追われながらもどんどん開花していく自分の特殊な能力に戸惑いながら成長していくその過程の話はなかなか好きでした。でも、ラストはどうも納得できずといった感じ。なぜ突然話がこっちへ飛んだのかしら?という印象でした。結末に関しては好き好きだと思いますが、これではない違う結末の作り方もあったのではないかなぁという気がしています。とはいっても、私に違う続きが書けるような能力があるわけではないのですが・・・。


タイトル:劫尽童女
著者:恩田 陸
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