ウェルカム・ホーム! / 鷺沢萠 | 活字中毒

ウェルカム・ホーム! / 鷺沢萠

初めて鷺沢さんの作品を読みました。とっても好きな雰囲気で、はまりそうな予感・・・。でも、鷺沢さんは2004年4月に35歳の若さで亡くなってしまったそうなんです。ですから、どんなに好きになっても彼女の新しい作品は読めないということになりますね。とても残念です。


このウェルカム・ホーム!に2つの作品が入っています。「渡辺毅のウェルカム・ホーム」と「児島律子のウェルカム・ホーム」というものです。主人公「渡辺毅」と「児島律子」の家族はよくある一般的な家族ではありません。でも、明らかに家族。血はつながってなくても、しっかりとした愛情で結ばれている素敵な家族です。この本は公園で遊ぶ息子とダンナを眺めながらベンチで読んでいたのですが、外だということも忘れてうっかり泣きそうになってしまいました。


「渡辺毅のウェルカム・ホーム」は父親・ヒデと息子・ノリ、そして父親の友人である毅の3人家族です。ノリの母親はノリの記憶がないほど幼い頃に亡くなってしまい、その後釜?として家族に仲間入りしたのがヒデの親友だった毅です。父親のレストランをつぶしてしまい、妻には離婚されて行き場を失っていた毅は主夫としてノリを育てていくのです。毅には男の沽券という複雑な葛藤もあるのですが、それはそれ。男3人の家庭だけどそこにはとても素敵な家族ができあがっていて、読み進めるほどに心が温かくなる感じがしています。


「児島律子のウェルカム・ホーム」では、離婚した夫の連れ子に数年ぶりに再会できた様子を描いてます。とても愛情たっぷりに育てていたのに、連れ子だからという理由で夫との離婚とともに一緒に暮らすことができなくなった律子と聖奈の微妙な関係。夫の連れ子だから当然血のつながりはありません。そんな育ての親と娘の気持ちがとても上手に描かれています。


離婚や再婚、シングルマザーや父子家庭など、家族の形も多様化してきています。父親がいて、母親がいて、子どもがいるという世間では普通と言われる家族構成でも、普通じゃない家族もあると思います。どんな形態でも、そこに愛さえあればそれはとても素敵な温かい家族になれるんだなぁと感じさせてくれる作品です。逆に言えば、愛がなければ家族だってただの同居人になってしまう可能性もありますよね。家族というものに対して、そして普通というものに対して考えさせてくれました。


タイトル:ウェルカム・ホーム!
著者:鷺沢 萠
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