沼地のある森を抜けて / 梨木香歩 | 活字中毒

沼地のある森を抜けて / 梨木香歩

先祖伝来のぬかどこを受け継いだところから始まる不思議なストーリーです。相変わらず梨木さんらしい雰囲気いっぱいの本でした。が・・・、後半は細菌の話にこだわり過ぎて、なんだか終わりが難しいものになっていたような気もします。


主人公の久美は叔母の死をきっかけに、彼女のマンションと彼女が受け継いでいたぬかどこを相続します。そのぬかどこは久美の曾祖母の時代から長女が受け継いできたもので、久美の母が死んだときにまだ幼かった久美の代わりに時子叔母が受け継いでくれていたのです。その受け継いだぬかどこは、嫌いな人が手入れをすると呻くという不思議なぬかどこでした。毎日手入れをしているうちに、ある日ぬかどこの底からあるはずのない不思議な青い卵を見つけます。その卵から生まれてきたものは・・・。


呻くぬかどこって気持ち悪いですよね。しかも、勝手に卵が湧いて出てきて、卵からはなんと人が産まれてくきちゃうんです。しかも、久美の叔母や祖母たちはみんなその事実を受け入れてきている。途中まではずっとそのぬかどこの話なんです。ぬかどこがどうしたの、こうしたのって。ところが、途中から「ん?」といった感じで不思議なストーリーが混ざり始めて、気がつくと生命の神秘を描き出している壮大なスケールのお話になっていました。


一部残念なのが、久美の周りにいる人間のイメージが薄い気がすること。他の梨木さんが書いている作品は、とても人物像がはっきりしていてイメージが描きやすかったんです。でも、今回の本では久美と一緒に後半旅にでる風野という男性もいまいちつかめませんでした。私が人物よりも設定のほうにのめりこみすぎちゃったせいなのかなぁ??でも、ちょっぴり残念です。


人はどこから生まれて、どこへ帰っていくのか。

永遠のテーマなのかもしれないですね。


何度も読み返さないと、深く・深く理解することはできないんじゃないかなと感じる本でした。


タイトル:沼地のある森を抜けて
著者:梨木 香歩
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