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読書の迷宮

小説・ノンフィクションなどなど、読んだ本の感想を種類に関わらず書いていきます。

「ことのはロジック」(皆藤黒助:講談社タイガ)
(2019-03-10読了)



 「ようするに、怪異ではない。」の皆藤黒助さんの新作。

この2年ほどは「真実は間取り図の中に」「思い出の品、売ります買います」「ババチャリの神様」「やはり雨は嘘をつかない」とコンスタントに作品を出版していて、いずれもクオリティが高く楽しめる作品ばかり(そして続編が欲しい作品ばかり)。

その中にあっても、本作は最近でも一番良かった作品かな?

雰囲気としては同じく講談社タイガから出版されている「やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女」に似てる感じかな。
あと、やはり学園物ミステリーと謎解きのスタイル、或いは学園祭の絡むエピソードがある点など、米澤穂信の「氷菓」シリーズを思い浮かべる感じで。

 主人公の墨森肇はかつて天才書道少年として名を知られていたが、今では全く書道をやっていない。

当然、書道部からは勧誘を受けるのだが本人はどの部活にも所属せず帰宅部に。

その肇の目の前に現れた金髪碧眼の転校生アキに一目惚れした事で物語は大きく動き出す。
新しい言葉を知りたがり興味津々に尋ねてくるアキに付き合っているうちに、いつしか自分自身が離れてしまった文字の世界への興味を次第に取り戻していく肇。

 作品としては4話の短編からなる連作短編集。

最初の「四猿の間違い」は出だしとして一番ライトな話からはいってきてる。一つの勘違いが生んだ行き違い。それを解き明かしたと思ったらさらに…と次々に繋がっていく面白さ。

ただしこの謎解き、謎解きとしてはそれぞれ理屈があって面白いのだが、全体で見るとありえない感じなのが分かってしまってもったいなかったか。
元の勘違いがそれだとどうしてもこの部分がこうならない、的な。

そうした最初の部分の弱さや、肇がなかなか書道をやらないなぁって部分がスロースタートな感じがした

だが、これが第二話の「彁」(漢字変換するのかな?と思ったらしてくれたかw)そして第三話「黄昏を消して」となかなかに人間ドラマとしての深い物語と設定を仕込んで謎解きを絡めてくるあたりでエンジンが乗ってきた感じがしました。

このあたりで「続きを読みたい!」と感じた次第。

そして第四話の「月は綺麗ですか?」で打ちのめされた。これはやられた。感動だわ。

第四話のタイトル「月は綺麗ですか?」は当然ながら例の夏目漱石の「I LOVE YOU」の日本語訳(と言われているらしいがググってみると典拠不明って事らしいが)の話。

これは物語の当初から語られていて、それに負けない「I LOVE YOU」の翻訳の告白を肇はアキに行おうと考えていたわけです。

最後の物語ではアキの謎が中心に展開するのですが、これがまた「ガツン!」と来る強烈なもので。皆藤さんの連作短編集タイプの作品では最後にこの「ガツン!」とくるエピソードを持ってくる場合が多い。

本作ではもうクライマックスとして最適な最大の謎を持ってきて2人の関係を導いていきます。

先に「続きた読みたい!」と感じつつ読んだ本書ですが、この第四話を読む限りでは一応きっちりと完結しているわけで、非常に綺麗に終わっていて感動させる見事さだったので、これは続編は望めないかな、と感じました。

残念ではあるし、続編を望む作品としては「ようするに、怪異ではない。」「真実は間取り図の中に」と並んで本書もそうなのだが、これはこれで綺麗に終わっているので続編無い方が良いかな?と思いつつ。
「銀河の森、オーロラの合唱」(太田紫織:文春文庫)
(2019-02-28読了)



 「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」シリーズの太田紫織さんの最新刊。

 北海道陸別町が舞台。宇宙人と人間の子どもが住む施設に新たにやってきた少年。そこから物語がスタートする。

宇宙人は60人の先行部隊として地球にやってきて、各国に分散して住むようになった。その食料は「愛」。愛情を糧に生きていると。

太田紫織さんの作品は自身の出身地の北海道舞台のものが殆どかな。本作も北海道の陸別町が舞台になっている。

都会から離れて外部との接触も外出も制限された施設が舞台で、そこには孤児だったり特別な事情を持った子どもたちが共同生活をしている。

そこで次第に明かされていく子どもたちの過去の問題、悩みを連作短編三話で描いていく。

 非常に面白かったですね。

最近読んだ「昨日の僕が僕を殺す」(同じく北海道の小樽が舞台。既刊2冊)シリーズも、あやかしたちが共同生活を行う家が舞台になっていた。

本作も様々な過去を持った子どもたちが集まり共同生活をしているあたりが少し似てる雰囲気かな。

この隔絶(と言うほど閉じ込められては居ないが)された施設での子どもたちの共同生活って雰囲気は、幾つかの作品を思い起こさせる。

例えば現在TV放送中のアニメ「約束のネバーランド」とか、過去の作品では「灰羽連盟」だとか。

本作では、家族を事故で失ったり親に傷つけられたり周りの期待からプレッシャーを感じて苦しんでいたりと。

それぞれの子供達の過去の出来事と現在の苦しみを描きつつ、それぞれに絡む小道具を一話ごとに登場させてテーマにしているのが魅力的だったな。

ガリレオサーモメーター、ストームグラス、鉱石ラジオ。

サブタイトルに散りばめられたこれらは、ひとつひとつ非常に魅力的なガジェットとなっており、鉱石ラジオは聞いた事があるのですがガリレオサーモメーターとストームグラスは初耳でした。

ネットで検索をしたら、それぞれ置物としても魅力的な外見をしていて、特にストームグラスは雪が散るような結晶の動きが絶妙で欲しくなったほど。

こうしたガジェットを物語に組み込みつつ、それぞれの少年少女たちの苦しみを描き、そして癒やしていく話。

ここで全て語られたとは思えないし、この後の物語も描けるはずなので是非とも続編を読んでみたい作品だな。

続刊を待つ。
「君と漕ぐ」(武田綾乃:著 新潮文庫nex)
(2019-02-20読了)



 「響け!ユーフォニアム」シリーズの武田綾乃さんの新作「君と漕ぐ」を読みました。

武田綾乃さんの著作では「響け!ユーフォニアム」シリーズ(とスピンオフの「立華高校マーチングバンドへようこそ」)しか読んでないので、シリーズ外の初読書になります。

 本作は武田綾乃さんによる部活青春モノの新シリーズ。カヌーがテーマになっています。

「シリーズ」と書いたのは、本書1冊では完結していず現在続編も連載中であるって点です。

その意味では、本書のラストはある程度の区切りでは終わっているのですが「中途半端」と感じられる終わり方ですね。
続編あり、或いは前後編の前編だけを読んだ感じと言うか。

すぐにでも続編を読みたいです。

 物語は、東京から埼玉に転校してきた新高校一年生の舞奈が、偶然川でカヌーをしていた恵梨香と出会った事から始まります。

カヌー未経験の舞奈がどこか人見知りっぽい恵梨香を強引に誘って高校のカヌー部に入部する。
しかしそこは「部」とは名ばかりの2人しか居ない、しかも顧問の先生もカヌー未経験の若い女性教師。

しかしこの2人部員がなかなかすごくて、部長の希衣と副部長の千帆はペアで活躍する経験豊富な部員。

物語は最初舞奈の視点で始まったので「ユーフォ」で言えば久美子のポジションに舞奈が居て物語が進行するのかな?と思っていたら、中盤からはけっこう部長の希衣の視点から描かれる部分が多くなってきた。

このあたりも「ユーフォ」の群像劇な視点が継続してる感じかな。

恵梨香は独自にカヌーを教わっていてカヌークラブや学校の部活に関わっていなかったので、部活で活躍してる先輩2人も全くノーチェックだったのだが、その能力たるや素晴らしいものがあって先輩2人を超える、いや大会でもトップクラスの成績を取れる能力を持っていた。

一方、部長の希衣はペアを組む千帆の能力を信じており、千帆はソロでももっと記録を上げらられると思っているのではっぱをかけるのだが、千帆は競争よりも「カヌーを楽しむ」に気持ちがあるのかトップ争いを狙おうとはしなくなっていた。
それを希衣は歯がゆい感じで接してる様子。

そして能力や体格のことを考えると、希衣・千帆ペアではなく希衣・恵梨香ペアの方が将来性があると言う事で、そのペアで大会を目指すことに。

このあたり、心理面での面白さは希衣のキャラクターかな。

彼女自身は試合に勝つ、他者に勝つを目指しておりその点では向上心・闘争心のある選手なのだが、それを他にも求めすぎている点、そして千帆に心理的に大きく依存している点がある。

始めてペアを組む恵梨香が孤独な少女であり他人との距離感を掴むのが苦手な少女で、ずけずけと相手の気にしていること・気に障る事を平気で言ってくるので、なかなか素直に親しくなれない感じもある。

最後の本番前日の練習でボロボロになってしまった2人だが、その反省から前日夜に2人で語り合って次第に距離感が分かってくる・詰まってくる感じの終わりのあたりは非常に良かったな。

このあたりの心理的な対立や心の壁、それを乗り越えて仲良くなっていく姿を描くあたりは、武田綾乃さんの真骨頂と言うか「響け!ユーフォニアム」でもシリーズを通じて描かれてきた見事さだったと思います。

ラストは県予選での様子が描かれていて、その結果はきっちりと描かれているのですが、ここからライバルとしてチラリと描かれる世界で活躍する蘭子との戦いなどが始まるか?って所で終わる。

続いて関東大会や全国大会があるのだろうが、その前で終わっている中途半端さは、1冊の本としては評価しづらいかな?と。
タイトルに「1」とは銘打って無いのだが、最初から続きを込みでこのペース配分で描いている気がする。それ(続巻込である事)を最初から書いてて欲しかった気もするが、続編を連載中であるのを知っていた上で読み始めたので、私自身は特に強い不満は感じませんでした。

舞奈は初心者過ぎて試合には絡んで来ないけれど、部のムードメーカーとして存在が非常に大きいと思う。彼女の初心者としての成長とレースの姿も読みたいかな。

あと表紙と本編の挿画が非常に素晴らしくって、美少女として本編で描かれる少女たちが本当に美少女の姿をしてて納得出来るのも良かった。

このキャラ原案でアニメ化してくれないかな?と思う。

 と言う事で次巻を早く読みたい!って面白さでしたね。