その日は2月だというのに、札幌の街に大雨が降り続いていた。
お陰で路上は根雪が溶けて、所々に大きな水溜まりが出来て、足を濡らしながら帰路についた。
スエットに着替え、ベッドに疲れた身体を横たえる。
暫くの間、天井の壁を眺めては、溜息が出た。
不意を突かれた人事異動の内示に頭が動揺していた。
周囲の話から、あと1年は残ると思い込んでいた。
2年前の今頃は、関東を離れるのが寂しくて仕方なかったのに、今は札幌で出会った人や場所と別れるのが辛い。
いつも励ましてくれた上司
職場の先輩であり、酔いどれ仲間のMさん
愚痴を聞いてもらい、美味しい料理を食べさせてくれた「もっきりや」のW店長と常連客たち。
札幌のブルースバンド「ポードリップス」のフロントマンであり、最初に常連になったブルースBAR「Boogie」の店長のKさん。
勧め上手で、アメカジ談義を交わした「コニーアイランド」のMくんや、「SAPPORO BASE」のFさん
飛び交う北海道弁
ガタンゴトン音を立てながら職場の横を走る路面電車
優先席に健常者が絶対座らない地下鉄
徒競走が繰り広げられる地下歩行空間
街中を漂う灯油の匂い
サッポロビールの巨大な煙突
キタキツネが駆け抜け、鹿が群れをなすゴルフ場
気が遠くなる距離の車移動
吹雪で全てが真っ白に染まる街
ジョギングで駆け抜けた北海道大学のキャンパス
今は全てが愛おしい
そして私は静かに泣いた