ベムカメSHOW 2016.6 ~氷が歯にしみる~ |  CHOCOLATE YELLOW 

ベムカメSHOW 2016.6 ~氷が歯にしみる~

Sam Cooke “Another Saturday Night ~土曜の夜に恋人を~”

6月1日(水)に練馬BE-bornでベムカメSHOWがありました。
お越し頂いた皆様、ありがとうございました。
出演者の皆様もお疲れ様でした。

僕は相変わらずPA。足元はもちろん、ROCK AROUND THE CROCS(偽者)。

では早速ファースト・ステージのセットリストです。

■ 1stステージ

[B]♪ザット・イズ・ロックンロール/ザ・コースターズ
[K]♪踊りにゆこうよ ~At The Hop~
   /フラッシュ・キャデラック&ザ・コンティネンタル・キッズ
[B]♪ポエトリー・イン・モーション/ジョニー・ティロットソン
[K]♪マイ・ガール/ザ・テンプテーションズ
[B]♪ドナ/リッチー・バレンス
[K]♪青い影~A Whiter Shade of Pale~/プロコルハルム
[K]♪ワンダフル・ワールド/サム・クック
[B]♪浮気なスー~Runaround Sue~/ディオン&ザ・ベルモンツ
[K]♪シェイク、ラトル&ロール/ビル・ヘイリーと彼のコメッツ
[B]♪ラ・バンバ/リッチー・バレンス

いつものように僕はPAをやる事になったので
今回のライブの日付を確認したのですが、「6月1日」と書かれていて
「あら、月初にやるんだ」と少し驚きました。

でもよく考えてみたらベムカメライブは最近
偶数月の第一水曜日に設定されたので、
自動的に1日~7日の範囲だけに縛られて当たり前でした。

今後、エイプリルフールに当たる年が訪れるとかも期待してしまうけど、
もうひとつ偶数月の第一水曜日は、祝日とかぶる事はない事にも気付きました。
祝日だとベムカメライブをやらない可能性もあるし、意外とよく出来ている。

そんな事を考えていたら、ふと想いが過ぎってしまった…

僕らは誕生日はもちろん、暦を基準に記念日などを設定しているけど
それは地球の公転、自転で区切った単位の事であり、
それに沿って決められたカレンダーや時計を持って毎日を営んでいるんだと。

でも、そもそも時間というものは存在しないという説もあるんですよ。

動物や植物が、季節や昼夜を基準に生きているのは
外部からの刺激に対するリアクションであって
カレンダーや時計を基準にしているわけではありません。
もしカレンダーを持っていたとしたら、バレンタインやクリスマスのように
桜だって毎年4月1日に開花としようと調整してくれるはずだ。
つまり「時間」というものは、さも現実に存在するように論理的にしたてられた
幻想とも言えます。

我々が時間があるものだと信じているから、
時間はどこで始まって、どこで終わるのかって事だって謎になったりするし
常に万物が変化をしていて、その印象を記憶しながら生きているから
時間という実態らしきものを感じているのだけど。

そう考えると例えば誕生日というものは、本当は生まれたその日の事だけであって
それ以降の同日は一年で区切って元日を基準とした日数から計算した日であり、
その日自体はただの1日でしかない。

それはまるでタマネギやキャベツのように、全部同じシステムで成長したはずなのに
一番外側が「皮」のように認識されて捨てられ、内側が「実」だと認識されて
食べているような感じに似ています。

このように人間はなだらかな変化のどこかで区切りを作って
分類をしたがるものなんですよ。そう、音楽ジャンルもそうだ。

ハードロックとヘヴィーメタルの違いはなんなのかという定義は
しばしば議論になったりしますが、明確な境目の基準はなく
一夜にして変化したものでもありません。

例えば70年代をハードロック、80年代をヘヴィメタルと乱暴に定義したら
両方の時代をまたがっているレインボーというバンドなどは、
サウンド的にもスタイル的にもどちらの要素も含んでおり玉虫色になるでしょう。

…あ、だから「レインボー」っていうのか。

黒人音楽も「リズム&ブルース(R&B)」と呼ばれていたものが
60年代のどこかで、「ソウル」と呼ばれ始め
80年代のどこかで「ブラックコンテンポラリー」になって、
90年代のどこかで「アール&ビー(R&B)」と呼ばれるが、
その違いを語る明確な定義はどこにもなく
「ブラコンは電子音が入っているような気がするとか」漠然とした
新しさの強調を言葉にしたものでしか分類できません。

ビートルズは、「ロックンロール」と「ロック」の変わり目にいたり
ボブ・ディランが「カントリー&ウエスタン」と「フォーク」の中間にいたり
そんな時期に冒頭でお聞きの、同時期に活躍したサム・クックが
「リズム&ブルース」と「ソウル」の中間にいます。

あの頃が丁度変化の時だったんでしょうね。

『オールディーズ・ゴールデン・ヒッツ』みたいな楽しげなコンピレーションに
サムクックの曲があると、すごくセンチメンタルで大人びていて
もっと後の時代の方がが合うように思る時があります。
だからと言ってマーヴィンゲイとか、オーティス・レディングとかと比べると
今度は子供っぽく思えたりして。帯に短しタスキに長しな感じがします。
そもそもサムクック自体がスタジオレコーディングとライブ盤でイメージが異なるし。

さて、その話はまた後に回すとして、ここでライブのお話に戻します。
最初のステージはオールディーズ中心でしたが、2ndステージは
例によってバンドメンバーの見せ場が多いバラエティな選曲でした。
[B]はベム、[K]はカメとなりますが、[?]は誰だったでしょう。

■ 2ndステージ

[K]♪L-O-V-E/ナット・キング・コール
[B]♪想い出のサンフランシスコ~I Left My Heart in San Francisco~/トニー・ベネット
[?]♪朝まで踊ろう/舘ひろし
[?]♪トップ・オブ・ザ・ワールド/カーペンターズ
[?]♪傷だらけの天使/井上堯之バンド
[?]♪ブラック・マジック・ウーマン/サンタナ
[B]♪想い出の渚/ザ・ワイルド・ワンズ
[K]♪いとしのレイラ/デレク&ザ・ドミノス

ベースの方→キーボードの方→サックスの方→ギターの方…
イメージ通りでバランスのよいバラつきでした。

Bay City Rollers “Saturday Night”

さて、ローラーズの映像、普段楽器を持たない
リード・ボーカルのレスリーがドラムを叩いています。珍しい。

そもそもベイ・シティ・ローラーズはメンバーチェンジが激しいので
担当楽器が変わる事はあるんですよ。

例えばベースのアランが脱退したあとギターだったウッディーがベースにシフトしたり
楽曲によってギターのエリックやウッディーがキーボードを担当したり
ウッディーがサックスを吹いたり、アランが復帰後はベースに戻らずに、
ウッディーがベースのままで、アランはキーボードやギターに回ったりしていました。
話についてこれているのかな…(笑)。一言で言うと人事的な変更。

ただ、その現実的な事態とは別の時もあります。
それは聞こえてくる音がどう見てもレコードの音だったり
あるいは別録りっぽかったりする場合。どうせ弾いてないんだから
どの楽器を持ってても影響はないじゃんって映像は少なくありません。
テレビは魅せる事が重要なので。

レスリーは“ロックンロール・ハネムーン”などで
ギターを持っている映像があったし、“レッツ・プリテンド”では
ベースを持っていました、そういった楽器には抵抗はありませんでしたが
さすがにドラムは想定外でした。

なぜならドラマーのデレクが唯一担当楽器から離れる事がなかったからです。
この映像は、エリック、アラン、ウッディー、レスリーの4人という
珍しいデレク不在。デレクに何があったのだろうか。

しかもデレクならいつも一番後ろにいるので顔は見えない事が多いけど、
リードボーカルのレスリーがドラムを叩いても後ろに下がる事はない。
立ち位置は楽器で決まるのではなく、人気で決まるものかと
改めて感じさせる映像でした。不公平じゃないか!


何年か前に読んだニュース記事に、有名大学を出ている学生の80%は
家庭が裕福であるという統計がありました。

教育に投資するお金があれば、いい先生につけて成果も大きい。
いわゆる2世とよばれる人が、親の七光りと呼ばれるのは
DNAのせいではなく、環境が整っているからでしょう。
そうすれば、またいい仕事につけて、またお金を稼げる。
富裕層にしては好循環になります。貧困層とすれば不公平なのだ。

また、ベイ・シティ・ローラーズの“サダディ・ナイト”は
レスリーの前のボーカルのノビークラークの時代にシングルカットされたのですが、
これが全く売れなかったんですよ。

リードボーカルがレスリーになるやバンドの人気がうなぎ上りになり、
改めてレスリーによる“サダディナイト”が再レコーディングされました。
アレンジはリヴァーブとかのかかり具合とか異なりますが
基本的に演奏上は同じアレンジのまま、コピーしたのと同じ。
それなのにレスリー版は全米でNo.1になってしまいました。

つまりこのヒットはレスリーの人気によるものだという事を証明する事になったんですよ。
世の中不公平でも、ここまで露骨に証明されるなんて…


さて、ベムカメ3rdステージは再びガッツリとオールディーズです。
今回も前回と同じく、追加テーブル、追加椅子が出るくらいの大盛況。
みんな踊りまくっていました。
アンコールでは何年か振りに“サダディナイト”が登場しました。

■ 3rdステージ

[K]♪ダイアナ/ポール・アンカ
[B]♪おぉ、キャロル/ニール・セダカ
[B]♪好きにならずにいられない
  ~Can't Help Falling In Love~/エルヴィス・プレスリー
[K]♪ラブ・ミー/エルヴィス・プレスリー
[B]♪リトル・ダーリン/ザ・ダイヤモンズ
[K]♪悲しき街角~Runaway~/デル・シャノン
[K]♪オンリー・ユー/ザ・プラターズ
[B]♪煙が目にしみる~Smoke Gets In Your Eyes~/ザ・プラターズ
[K]♪ロック・アラウンド・ザ・クロック/ビル・ヘイリーと彼のコメッツ
[B]♪トゥッティ・フルッティ/リトル・リチャード
[K]♪ブルー・スェード・シューズ/エルヴィス・プレスリー
[B]♪アイ・ニード・ユア・ラブ・トゥナイト/エルヴィス・プレスリー

アンコール

[E]♪キッスは目にして/ザ・ヴィーナス
[K]♪サダデイナイト/ベイ・シティ・ローラーズ
[B]♪レッツ・ツイスト・アゲイン/チャビー・チェッカー

“好きにならずにいられない”は多くは江古田などでジャンプスーツ姿の
カメちゃんが歌っていましたが、今回はアレンジも初期になって
ベムさんによって歌われました。

そして“ラブ・ミー”はカメちゃんなのですが、70年代のアレンジではなく
初期のアレンジで歌っていました。ここが貴重だった。
“アイ・ニード・ユア・ラブ・トゥナイト”も久々に聞けました。

アンコールはこちらです。突然呼ばれた中村詠子さんがステージに上がり
キッスは目にして。最多出場記録を更新しています。


さて、話を最初に戻しますが、1stステージ歌われたサム・クックの
“ワンダフル・ワールド”の歌詞はラブソングであります。

「僕は歴史の事も分からない。幾何学の事もわからない。」…と延々
自分に学力がない事を繰り返し続けて、最後になって
「でも君を愛している事はよく知っている」と言います。
そして希望を込めて「君が僕を愛してくれたら世界は素晴らしいのに」と
締めくくります。

非常にシンプルで纏まった構成のラブソングであり、この歌詞から見ると
オールディーズのグループに含まれるものであり、この感傷的な曲調から
ソウルというよりはリズム&ブルースの色が濃いです。

ところが、この歌詞の背景には別のメッセージが潜んでいるんですよね。

そこには主人公が勉強嫌いだから学力が低いとは書かれていないんですよ。

黒人労働者の、社会からの扱われ方。
つまり彼は勉強をしたくても学ぶところがないという
現実がほんのりと含まれているんですよね。
その事を考えると、これはソウル・ミュージックとも言えます。
楽曲を分析して…というよりも次の時代のステージにいるという意味で。

1964年。サム・クックが酔っ払っていたのは多少の責任はありますが
誤解が誤解を生んで、誰が悪いのか謎なまま殺されてしまいます。

彼が亡くなったところで、世間はリズム&ブルースの事を
ソウルと呼ぶようになりました。

彼が亡くなった1964年12月11日は金曜日の夜。
彼のヒット曲のように「今度の土曜に恋人を」って思っていたのだろうか。
「Another Saturday Night」…もうひとつの土曜日はあったのだろうか。

Sam Cooke “Wonderful World”