西国三十三所 第二番札所 紀三井寺 ~ 関西に春を告げる桜の殿堂 ~ | MarlboroTigerの【Reload the 明治維新】

西国三十三所 第二番札所 紀三井寺 ~ 関西に春を告げる桜の殿堂 ~

 

紀三井寺です。

 

和歌山県に詳しくない方でも、一度は耳にした記憶があるのではないでしょうか。関西では、本堂前のソメイヨシノが標本木に指定されており、この桜が開花した時をもって近畿の開花宣言となっています。ですので、我々関西人にとっては桜と言えば紀三井寺。紀三井寺の桜が咲くと、【よっしゃ、春や!】となるわけです。

 

ですので関西人にとっては馴染み深いお寺さんと言えるでしょう。

 

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正式な名称を、紀三井山 金剛宝寺 護国院と言います。ただ、この名称で覚えている人は殆ど居ないでしょう。やはり皆さん【きみいでら】と呼んでらっしゃいます。リズムが良いのですよ。関西アクセントに絶妙にマッチした語呂と申しますか...。【アホンダラ】と同様...貯めておいてから...弾くような舌の運用(笑)。耳ざわりがいいんですよね。

 

西国三十三所には、同じような名前の【三井寺】と言うお寺さんが滋賀県にあります。何か関係がありそうに思われがちですが...ありません(笑)。それぞれネーミングに至るストーリーを持っておりますし、それが全く異質の由来となっておりますので、ご注意を(笑)。

 

今回はその名前の由来からお話しする事に致します。

 

紀三井寺には三つの湧き水ポイントがあります。日本の名水百選にも選出されているこの湧き水は、【三井水】と呼ばれ、古来霊験あらたかな聖水と考えられて来ました。それもそうなんですよね...。

 

 

この背後の名草山の斜面に、どう言うわけか水が絶える事なく湧き出している。名草山自体、そんなに高い山じゃありませんからね。標高228m。紀三井寺はその西側中腹...50m付近にあるのです。とにかく海に近いお寺さん。和歌の浦の絶景が大パノラマで広がるロケーションなのに...なんでこんな小山の斜面から水が噴出するのか...昔の人も首をひねったと思います。メカニズム的に、なんとも理解し難い自然の摂理(笑)。

 

いずれにせよ、この斜面から三か所も清流が湧き出して来るので...紀州の三つの井戸を持つお寺=紀三井寺と呼ばれる様になったのです。まあ...そのものズバリ(笑)。実にベタなネーミングです。

 

アクセスに関しては、JR和歌山駅から紀勢線で2駅。和歌山市中心部の南に位置します。ホームに降りると、もう境内が遠くに見えておりますので、まず迷うことなく辿り着けるでしょう。桜の季節は絶景ですよ!

 

山門までは歩いて10分ちょいと言う感じですかね。帰りの電車の時間を間違わない様にチェックしておきましょう。紀勢線は本数が少ないですから、時間によっては大分待たねばならなくなります。

 

 

門前町を抜けると、この見事な楼門がお出迎え。

 

桜の季節の楼門は圧巻ですよ。ここから先は桜吹雪の中、参拝する事になります。

 

 

楼門です。重要文化財です。 寺伝によると永正六年(1509年)に再建された物で、永禄二年(1559年)に修理されております。この巨大な門に受付があり、拝観料を支払う事になります。三間一層の入母屋造。正面脇間に仁王さんが立っておられます。

 

 

楼門を潜ると、この231段の急な石段...結縁坂が現れます。かなりな傾斜角ですので、足腰が鍛えられます(笑)。結縁坂の名の由来は、有名な江戸時代の豪商・紀伊国屋文左衛門が若かりし頃、母を背負って観音様にお参りをしていた時、奥さんと出会ったと言う逸話が元になっております。玉津神社の宮司の娘で【おかよ】と呼ばれておりました。その後文左衛門は奥さんの実家である玉津島神社宮司の出資で船を持ち、蜜柑と材木を江戸に回送、寛永寺根本中堂の建立で巨利を得て大富豪となりました。そんなスーパーセレブのラブストーリーの現場だったのですね。なんかロマンチックです。ちなみに、有名な本屋さんの紀伊国屋書店とは全く関係ありません。

 

 

桜の季節なら、石垣と桜吹雪の絶景をご覧頂けます。そして三井水の一つ、清浄水が流れているのもこの石段ですね。

 

 

こんな愛らしい桜を眺めながら石段を登り切ると、ようやく境内です。先ずは境内マップをご覧頂きましょう。

 

 

伝統ある本堂は左手にあります。標高50mに位置する本堂エリアからは、和歌の浦の絶景が拝めます。爽やかな風に吹かれて眺める海は最高ですよ。正面に六角堂、その左手に鐘楼と大師堂が連なります。重要文化財エリアですね。

 

 

優美な六角堂...奥に見えているのは鐘楼ですね。

 

 

室町時代に建てられた多宝塔です。

 

 

桜の季節の展望はこんな感じ(笑)♪

 

心がウキウキして来ます。コンパクトですが、境内全域が展望台と言って良い見事な伽藍です。

 

 

本堂です。本堂前左手の桜の木が標本木になります。近畿に春を告げるのが、この桜です。

 

紀三井寺は救世観音宗の総本山です。以前は真言宗山階派に属しておりましたが、昭和二十六年(1956年)に独立。本尊は十一面観世音菩薩様。

 

宝亀元年(770年)唐の僧侶・為光が、日本各地を歴訪していた折、名草山山頂から一筋の光が発せられているのを目撃します。光の元をたどって名草山に登った為光は、そこで金色の千手観音を感得しました。為光は自ら十一面観音音像を彫刻し、その胎内仏として金色千手観音像を奉納。草庵を作ってここに安置します。これが紀三井寺の始まりです。その後平安時代には後白河法皇によって勅願寺に指定され、以後隆興の時を迎えました。

 

 

この本堂は宝暦九年(1759年)に再建されたもの。入母屋造の本瓦葺き。柱間は五間で、千鳥破風を付し、正面には唐破風形・三間の向拝が設けられています。虹梁形の貫を用い、頭貫に木鼻、台輪を乗せ、組物は三手先詰組になっており、禅宗様が用いられています。ご本尊は秘仏ですが、裏手の大光明殿で厳重に保管されています。とにかく一人でも多くの巡礼さんを収納できるように、外陣は大変大きく作られておいます。雨が降っても、これなら大丈夫。西国ならではのスケールの大きいお堂です。

 

 

桜の季節には、境内から180度...ピンク色に染まる斜面を見下ろせます。風にはらはらと舞い落ちる桜吹雪は極上の美しさです。海の煌めきとシンクロし、絵画の様な風景が広がります。

 

 

夕陽が沈む和歌の浦もまた格別。眺望に関しては言う事ありません!

 

そして各重要文化財のお堂も見事なのですが、実は私が気に入っているのは...

 

この真新しい建物...。

 

 

仏殿です。

 

 

鉄筋コンクリート製の新仏殿で、三階建て。平成十四年(2002年)に竣工した新しいお堂です。高さは25メートル。特筆すべきは、その内部にいらっしゃる千手観音様でしょう。高さ12メートルに及ぶ木造の千手様は現代の名仏師・松本明慶氏の手によるもの。必見です。ド迫力のスケール!

 

 

平成十四年(2002年)から足掛け5年がかりで京都の工房にて彫り出されました。

 

寄木造としては日本最大の仏像です。耐震性を考慮して内部には鉄製の心棒が立てられています。この千手様の雄大さを感じる取るには、実際に足を運んで下から眺めて頂くしかありません。現代の慶派も、ここまで凄いのだと言う事が良く分かります。とにかく美しい。

 

 

また、料金を払って上層にも登る事が出来ます。

 

 

是非上層階で観音様と目線を合わせ、拝んで貰いたいですね。現代の仏師の最高峰...その技をご堪能下さいませ。

 

 

御朱印です。これは期間限定の復刻版の書体。通常の墨書きとは異なっています。流麗で見惚れてしまいます。

 

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桜と観音様が織りなす極上の美の殿堂...

 

今日は紀三井寺をご紹介しました。

 

南無観世音菩薩🙏