NHK大河ドラマ【青天を衝け】第十三回を見て | MarlboroTigerの【Reload the 明治維新】

NHK大河ドラマ【青天を衝け】第十三回を見て

 

面白かった(笑)。なんとも表現しにくい...栄一の揺れ動く人生のターニング・ポイントを、情感豊かに描けていたのでは無いか。

 

先ずは士装に改まった二人の姿が、何とも初々しく...思わず笑ってしまった。それだけ前回までの農民としてのビジュアルがしっくり来ていたと言う事だろう。何かまだ、チンチクリンな感じがさせられるのは...吉沢亮と高良健吾の演技がそれだけ凄かったと言う事なのだろう(笑)。この弥次喜多コンビは、本当にいい味を出している。

 

後半では月代(さかやき:逆モヒカンの剃り上がった部分ね...笑)が無くなり、総髪となり志士らしくなったが...これからはあのビジュアルが中心となる。前髪があるのは初めてだが、慣れるしかないだろう。

 

しかし、いきなり一橋の家臣とは...ほんと、乱気流の様な青春だ(笑)。

 

家族の方も大変だったんじゃ無いかな。一族から武士が出るとなるとそれはそれで大変。表面的には慶事だが、内実は違う。面倒臭い、金がかかる、何の得にもならない...煩わしさの三拍子で、恐らく親戚からは煙たがられただろう。商人でも幕府お抱えの【御用商人】になるのは敬遠したと言うが...公に尽くすと言う事は...世間的には貧乏クジの様なものだった。

 

幕臣や藩士に召し抱えられた途端...門構えも改めねばならない、小者を雇わねばならない...その他諸々の余計な仕事が降って湧く(笑)。生家たる渋沢家がどう対応したのかは知らないが、親父(小林薫)のボヤキが聞こえて来そうだ。この時代、お侍と言うのは戦士では無く、公務員。幕臣ともなると...国家公務員。動乱の革命期においては...ある意味、リスキーで...やばい職種だった。

 

 

なんちゃって志士の二人にとって、初めての京は何もかも新鮮だったろう。我々元大阪人ですら、京都へ行くと何かドギマギする。関東の田舎から出て来たらば、相当に戸惑った筈だ。

 

土方歳三が登場。

 

演じているのは町田啓太。失礼ながら、この俳優さんは全く存じ上げなかった。履歴を見てみたが見ていたドラマが皆無で、唯一NHK大河【西郷どん】に小松帯刀役で出演していたらしいのだが、これも全く記憶がない。劇団EXILEの俳優さんで、30歳。元々はGENERATIONSのメンバーで、アキレス腱を切るまではアーティストとして活躍していたと言うから、運動神経に関しては相当なものだろう。年齢的には京都で活躍していた土方の年齢とニアイコール。若過ぎもせず、老け過ぎもせず、丁度いい。

 

だが、ちょっと僕のイメージからすると線が細い。そして声質がちょっと高い。土方は...もっと底冷えする様な、低い声音の方がしっくり来る。彼の声は、ちょっとガキっぽい。

 

 

土方歳三は...

 

僕の歴代の小説でも、ほぼメインキャラクターと言っても良いくらい描き続けて来た。勤王・佐幕の別なく、最も登場回数の多いキャラクターが、この歳ちゃんである。だからどうしても理想の土方像と言う物があり...演者に対してはシビアに見てしまう。

 

町田啓太の今後の努力に期待したい。

 

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今回の満島真之介の演技も見事であった。

 

キツネが見える...

 

僕としては、あの演出は【有り】である。気が触れていた側面もあった様に思う。

 

尾高長七郎は、先のレビューにも記したが、本当に高名な剣術家であった。北辰一刀流の塾頭・真田範之助を試合で倒し、真田をして『江戸で幾十人かの大家があるが、彼等に対して必勝の可能性ある者は果たして有るか否か』とまで言わしめた。神道無念流を極めた後は、幕府の名門・心形刀流を学んでいる。【天狗の化身】とまで言われた彼の噂は関八州で知らぬ者は居なかったろう。

 

その長七郎が、人を斬ってしまう...。

 

この事件の真相については諸説ある。お伊勢参りを装って西国に向かった栄一と喜作から惇忠のもとに特使が姿を現したため、江戸に潜伏中であった長七郎も故郷を目指した。だが、その道中...足立郡戸田の地(現埼玉県戸田市)で通行人を斬ってしまった。幻覚に襲われたとか、乱心を起こしたとか、はたまた坂下門外の変の嫌疑を掛けられていたことから通行人を密偵か何かと誤認し殺害してしまったのでは無いかとも言われている。

 

事件の一報はドラマにもあった様にすぐに惇忠に伝えられ、惇忠は板橋宿に駆け付けるのだがどうにもならなかった。また新規に一橋家の家臣となった栄一らもあらゆる筋から特赦を試みるのだが、やはり許される事は無かった。長七郎はその後伝馬町の獄舎に収監され、戊辰戦争もたけなわの明治元年の夏になってようやく釈放された。収監されていた期間は、実に四年に亘る。このことが彼の肉体と精神に大きなダメージを与えたであろう事は想像に難く無い。惇忠が身元引受人となり対面した際には、既に往時の面影はなく、出所から数ヶ月後の同年十一月十八日、故郷の下手計村で病没した。何とも憐れな人生である。

 

どうせ死ぬなら、新選組のスーパースター達と斬り合っていれば、もっと名を残せただろうに...。彼の腕ならば、沖田や斉藤を倒せたかも知れない...。

 

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おっと!忘れてならないのが、ディーン・五代様の復活(笑)。

 

 

ディーン・フジオカと言えば、五代友厚。五代友厚と言えばディーン・フジオカ。彼が一般に広く知られるキッカケとなったのは、NHK朝ドラ【あさが来た】の五代役であったろう。僕の小説にも五代は名前だけは登場させている。だが描写は控えさせて貰った。実は私のご先祖も大阪に出て来た薩摩のボッケモンだったのだが...五代公には相当に世話になったらしい。生前に祖母から聞かされた事がある。

 

 

なので五代様に関しては...批評するのは遠慮させて頂く。書く事は憚られるのだ、個人的に...。畏れ多いと言った方がいい。大阪人としても、薩摩系の子孫としても...【大阪の父】にだけは...足を向けては眠れない。ご理解頂きたい。

 

ディーン・フジオカ?

 

文句は無い。

 

実際の五代様に比べれば、失礼ながら美男だし(笑)。良く描いてくれている分には、何も申し上げる事は無い。【あさが来た】の頃から6年が経ち、年齢を重ね40歳になったのだが相変わらずのビジュアルだ。本物の五代はこの当時二十代なので少々無理があるのだが、それを感じさせない見た目であった。任せておいて、何の不安も無さそうだ。

 

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石丸幹二が大久保利通か...。

 

 

これは、ちょっと(笑)...。石丸さん、今年で55でしょ?文久四年(1864年)が描かれていた今回、大久保の実年齢は34歳なのですよ(笑)。21歳差は、余りにもキツい...。親子ほどの実年齢差では、流石に無理がある。ただ、存在感は流石だったけどね。

 

僕ならば...実年齢から言えば...

 

 

彼が良かったと思うんだよね。松田翔太は35歳。まさにピッタリ。そりゃ、明治後も描かねばならないから年齢に幅はあるけどさ...大久保は48歳で死んでしまうので、どちらかと言うと...若い俳優の方がいい。

 

あるいは、彼...

 

 

今年38歳。明治後も登場する事を思えば...年齢不詳な感じのする小栗旬なんかがいい。陰鬱な役でも無難にこなせそうだし...。

 

最終的に、慶喜を追い詰める最大の宿敵は、大久保だからね。慶喜と大久保の宮中バトル...大政奉還後の権力を巡っての陰謀合戦こそ、幕末の最大のハイライトシーンだ。とてつもなくタフなネゴーシエイターであり、様々な心理戦を仕掛け、冷徹にして冷酷...それが大久保。寡黙にして、どこまでも敵を追い詰める静かなる怪物は...石丸氏ではソフトに過ぎる気がする...。

 

まあいい。

 

今後の彼の演技に期待しよう。年齢のハンディをどう克服するか。劇団四季の実力を見せて貰いたい。お手並み拝見だ。

 

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そんなこんな。

 

 

今回も、平岡円四郎(堤真一)に持って行かれた(笑)。全く...ええ味出しよるわ、あのオッサン(笑)。

 

参りました...。私も家臣になりまする...。