三十三間堂の仏像達②...風神・雷神 | MarlboroTigerの【Reload the 明治維新】

三十三間堂の仏像達②...風神・雷神

 

三十三間堂に参拝し、入り口から入ると先ず目に飛び込んで来るのが左の風神さんですね。

 

以前は向かって右手に雷神さん、左手に風神さんが配置されておりました。近年考証の結果、それは誤りであると見直され...現在では風神が右、雷神が左に配置し直されました。今から三年前...2018年の国宝大移動によるものです。現在は下の様な配置となり、両端で眼を光らせておられます。

 

 

尻尾たる雲のラインが中尊(千体観音の大ボス・本尊)の方を向き...千手観音の命を受け、中央から飛び出して来る構図となり...アクションに広がりが加わりました。私もこちらが正解だと思います。

 

どちらもインド最古の聖典とされる【リグ・ヴェーダ】に登場される神様です。名前の通り...自然現象を神格化した原始的な神々。

 

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インド神話において風神は【ヴァーユ】と呼ばれ、数頭立ての馬車で天を駆けて悪神を追い払っておりました。富貴栄達を授ける神様として知られています。しかし三十三間堂の像形は、日本古来の信仰や伝説的空想によって純和風に再現され、後世の我が国における二神のイメージを決定づけ事となりました。鎌倉時代初期にお堂の再建をする際、造像を統括した湛慶がその作成に深くかかわっているとされています。

 

 

それにしても...筋骨隆々たる鬼神様ですね。割れた腹筋...膝の凹凸...スネの骨、ふくらはぎの隆起した筋肉...完璧です。800年も前に、これだけのリアリズムを追求した人間が我が国にも居た...。大したもんだと思いませんか(笑)。

 

デザインも凄い。背負っておられる【風袋(ふうたい)】は現代ではラップやトレーなど...商品を包む包装の事を指しますが、私はそのルーツはこれじゃないかなと考えております(笑)。『商品の正味の重量から、風袋はさっ引いて測るのが普通やろ!』...さもありなん...大事なのは中味。サンタクロースの袋にはオモチャが詰められとりますが、風神の袋には...台風が入っておるのです。恐ろしや...。

 

 

そんな風に想像しても...このデザインは見事過ぎると思いませんか?巨大なジェット風船と言いますか...なんと言うか...。そんな物無かった時代に、密閉された空気感をこの形状でデザインした事が凄い。

 

モデルを務めた人も大変だったと思います。これだけのナイスバディーの男性は、当時珍しかったでしょうからね。高額のモデル料を払って...多分、米俵なんかを担がされて...じっとし続ける(笑)。

 

『兄ちゃん、辛抱や!動くな!そのままや...そのままやで...。ええど...ええど!もっと力め!もっと力むんやっ!そう、そう、そう!ええで...腹斜筋で大根すれるで、お前の腹筋は板チョコやぁ!バルク!』...などと...ゴールドジムやライザックも無かった時代に...どうやってポージングを強要したのか(笑)。製作者たる湛慶の、エグい叱責の声が聞こえて来そうです(笑)。いずれにせよ...これだけのモデルさんを見つけるのも大変だったでしょう。

 

 

対する雷神は【ヴァルナ】という水神だったと言われております。仏教においてはは仏法を守り、悪をこらしめる正義の味方。風雨を調える神様。こちらのお身体も凄いですね。上腕二頭筋の隆起、そして鎌の様な手首からごつい手の平に続くライン...握力めちゃめちゃ強そうです。

 

そして、こちらのデザインも凄い。円形に連なるドラム...光背ならぬ...打背(笑)。一発打てば、サンダーボルト(笑)!!発想力が凄過ぎます。800年前ですよ...800年前(笑)!

 

この二つの像の凄まじさは、後の日本の仏教やアートに決定的な影響を与えた事でしょう。

 

証拠もあります。

 

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俵屋宗達の手による国宝・風神雷神図屏風(建仁寺蔵)

 

 

そして宗達のデザインに修正を加えた尾形光琳版...

 

 

江戸時代の初期と中期に描かられたこれらの傑作も、もちろん三十三間堂の風神雷神を元に描かれている訳です。

 

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これらが無かったのなら、当然コイツも無い(笑)。

 

 

日本の伝統文化に大きな影響を与えたツイントップ...その最強のタッグこそ三十三間堂の風神雷神像なのです...。

 

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では、この風神・雷神...一体何者なのでしょう...。

 

インド神話における位置付けは冒頭に紹介した通りです。世界中の様々な神話に同様の神様の存在が認められます。しかし...我が国の風神・雷神は、明らかに異質。

 

インド神話での風神【ヴァーユ】はこんな感じ...。

   ↓

 

ほんでもって、雷神【ヴァルナ】はこんな感じ...。

   ↓

 

『全然ちゃうやんけ(笑)!』...っちゅう話しですよ...。

 

そもそも千手観音の眷属は、二十八部衆です。そこにこの二神は含まれません。二つ足したら...三十部衆になっちゃいますよね?『28ちゃうやん?あの両サイドの顔面獣フェイスのモンスター...何やねん?お経に出とらんがな...。』と、なってしまう...。

 

それは恐らく...

 

インド神話にあやかり...

 

【千手陀羅尼経】に記されている【水雷火電】の文言にインスパイアされ...中世の日本が独自に持っていた世俗信仰の世界観がこれにミックス...そこから誕生したと私は見ています。

 

天候を操る最強の鬼神タッグのご降臨!

 

風の神...志那都彦神(しなつひこのかみ)& 雷様...建御雷神(たけみかづちのかみ)

 

これですな...。仏教が伝来しても、我が国には恐るべき神様が居た。どちらも、イザナギ・イザナミの間に生まれた神様です。めちゃめちゃ強かった。志那都彦神は、押し寄せるモンゴル帝国の野望を神風を吹かせて日本海に沈めてくれたありがたい神。雷様は神社によっても様々な呼称で親しまれております。上賀茂神社では賀茂別雷神、藤原系の鹿島神社や春日大社なら建御雷神、ほんでもって...何と言っても怨霊となった菅原道真公も雷様となりました。天満大自在天神がそれですね。

 

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ここからは、私の空想世界(笑)。

 

日本に仏教を根付かせるべく...観音様が二十八部衆を引き連れてやって来られた...。

 

すると、観音さん...原始の日本を見て、流石にビビるわけです...。

 

原住民(日本人)は布に穴を開けて...頭からすっぽり被って腰縄で締めてるだけ...。男も女も半分裸みたいなもんです。肌にはタトゥーだらけ(笑)...。

 

(なっ...なんや...コイツら...文明の欠片もあらへん...。大丈夫か。仏教理解出来んのか?)

 

(どいつもこいつも...アホ面ばっかりやんけ...あかん...無理ですわ、千手様...民度が低過ぎまっせ...。)

 

二十八部衆も流石に呆然とした事でしょう。しかし観音様。大慈大悲の御心はそんな事では揺るぎません。列島を仏教で教化しようと決意を固められた。

 

そこに立ちはだかったのが...

 

 

こいつらですわ(笑)。

 

『おう、コラ!見慣れん顔やのう。偉そうな服なんぞ着よってからに...。ヤマトはのう...わしらのシマなんじゃ。よそもんがウロチョロしとったら、いてまうぞワレ!』

 

で、戦争(笑)。

 

最初は舐めてかかっていた二十八部衆ですが、予想外に手強かった。

 

以前、帝釈天、阿修羅、迦楼羅についてはご紹介しましたよね?天界を支配する全知全能の最高神・インドラ(帝釈天)、そしてその帝釈天に愛娘を奪われ戦い続けた破壊王・阿修羅、帝釈天が勝てぬと気づき手打ちに持ち込んだ迦楼羅...。千手観音の眷属は、仏教ワールドにおいては最強軍団な訳ですよ。

 

その二十八部衆が...総掛かりでもって戦った訳です。

 

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何とか、僅差の判定勝ち。

 

『やるや無いか...おのれ等...。』

 

こうして、風神・雷神も...我が国の土着の神を代表して...千手観音をガードする側に回った...

 

...ってのが、私の解釈(笑)。信じるか信じないかは、貴方(貴女)次第。

 

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しかし、それが冒険的遊びを含んでいたとしても...三十三間堂を作った後白河法皇の想いの強さだけは、ビリビリ感じますよね。千体観音&二十八部衆でも飽き足らず...風神・雷神を加えた!もう、最強の法力で当時の日本を救おうとしたと言う事です。

 

 

平安末期と言うことは...もう浄土思想ブームの真っ只中。誰も彼も【南無阿弥陀仏】と言い始めてた頃ですよ。そこに、阿弥陀さんの来世ではなく...千手観音のお力で現世を救おうとした。バック・トゥ・ベイシック!法皇の執念が感じられます。

 

そして鎌倉初期に復興の責任者であった湛慶...。

 

 

この造形、デザインで勝負に出た運慶の息子...彼の意気込みの凄まじさが法皇の執念にオーバーラップし...

 

あの国宝仏達が続々と誕生したのです...。そして父のDNAと...師匠・快慶の魂に問いかけ...

 

 

彼等も誕生した...。

 

そんなこんな...

 

上記の様なストーリーを思い浮かべ...

 

私も我が家のリボルテックタケヤ製...風神・雷神を拝んでいたりします(笑)。

 

 

上弦の鬼は、昔から居ったっちゅう話しですわ...。

 

本日は、三十三間堂の風神・雷神のお話でした(笑)。

 

南無🙏。