韓国への思い...その5 | MarlboroTigerの【Reload the 明治維新】

韓国への思い...その5

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寒風吹きすさぶ中を、韓国人の若者3人とトボトボ歩く。

慶州は奈良(京都やったかな?)と姉妹都市を結ぶ、旧新羅王朝の都である。日本の古都もこの地の風水を手本にした筈で、見れば見るほど奈良盆地や京都盆地に似通っている。その広さ、周囲を囲む山の稜線...。91年当時、まだまだ街は整備されていなかった。所々、廃墟な様な平屋が目につく。

鮑石亭と言うのは面白い構造の人工池であった。水は貯められておらず、石の溝が蛇行して広がっている。日本の曲水の宴は、小川の上手から小舟を流したと思うが、この構造の方が遥かに手がかかっている。かつての日本人が、いかにこの国の文化を模倣していたか、非常に良く分かった。二人のイ君たちは一生懸命不慣れな英語を使い説明してくれるのだが、向こうもこっちも英語が完璧では無い。言いたい事の半分も伝え合えなかったのでは無いか...。遠い昔し、この国から文化を輸入しようと試みたご先祖も、言葉の壁には閉口した事だろう。

アー(ア?)さんはチャーミングな女の子だった。感じとしては若い頃の伊藤つかさに似ている。ウサギの様な愛くるしさのある女性だった。当時日本の文化は輸入する事は禁じられていたが、闇ではしっかり入って来て、若い連中は何でも知っていた。アーさんが夢中になっていたのは現代と全く同じ【CanCam】(笑)。ニコニコ笑いながら、『キャンキャン♪』と言っては雑誌を覗かせた。当時の言葉では発展途上と形容されていた時代。確かに若者の着る服はどこか野暮ったく、日本人の我々が着る服とは格差が感じられた。(最近の韓流ドラマを見ると隔世の感があるが...。)でも、彼らなりの探求心でもって似た様な素材の服をチョイスし、CanCamギャルに見えなくもない。

歴史博物館に行った。時代のせいもあるが、ことさらに日本の年表と対比させて『我が国がいかに進んだ文明国であったか。』が強調されている。日本人が未開であった頃、新羅は既に文化都市であり...日本が稲作を始めた頃、我が国の農工具は既に...etc。自然、口数も少なくなるが、彼ら韓国人が良くも悪しくも日本を相当に意識していた事だけはビリビリ伝わって来た。

昼飯には冷麺を食べた記憶がある。極寒の時期に何故冷麺?未だに不思議だ。しかし、彼らとしては辛い物を食わせて、びっくりさせたかったのだろう。確かに相当辛かった(笑)。関西人特有のサービス精神も手伝って...ついついオーバーリアクション。辛さにのた打ち回る俺を見て、みんな子供の様に笑う。ピュアな笑顔だ。日本人が無くしてしまった純な感情表現を見て、羨ましく思った。流行りのK-POPがかかる喫茶店でコーヒーをおごる。タバコは韓国で覚えた88(パルパル)タンベだ。フィルターが粗雑で、ワイルドな味に閉口したが、悪く無い。アーさんは煙が苦手だったか、時折顔を背けるが、野郎3人はヘビースモーカー。煙をくゆらせながら、ブロークンイングリッシュはまだまだ続く。

スポーツの話題は野球が中心だった。まだKリーグもJリーグも発足する前。共通の話題は野球だった。後に中日で大活躍する事となるソン・ドンヨル投手についてメチャメチャ熱く語っていた。野茂は150kmだろ?ソンは155kmは出る!...って感じ。こっちはF-1の話しをした。当時の日本はF-1ブームだったからね。アイルトン・セナの偉大さや、鈴鹿サーキットの壮大な風景を説明。

瞬く間に親友になってしまった俺たち。アーさんは女の子なので夜は出られないが、彼ら二人は俺の泊まる新羅旅館(シラジャン・ヨガン)に毎晩訪ねて来た。どっから持って来たか、地酒やらマッカリやら手土産を持ち込んで(笑)。日付が変わるまで飲み明かした。言葉が通じん不自由さを感じながら、アホな写真を撮り合ったり、流行りの歌を披露したり、コイン博打に明け暮れたりした。トランプも盛り上がったな。テレビで有名なコメディアンや女優が映ると丁寧に説明もしてくれた。コイン博打のルールは、もう忘れてしまったが、ダウトの様な物だったと思う。嘘を言い当てる時に『ピン!』と発声し、当てるのだ。負けると酒を注がれる。2~3時間もあればベロベロだ(笑)。お互いの彼女の写真を見せ合ってはスケベな笑いを浮かべ、彼女の居ないハンジュン君をおちょくって遊んだ。日本から持ち込んだ【週刊プレイボーイ】は何より素晴らしいお土産だったようだ。当時韓国ではヌードは禁止されており、日本から裏ルートで届くエロ本は貴重な存在であった。そこに最新グラビアだからね...えらい興奮で受け取ってくれた(笑)。

慶州は二三日で旅立つ予定だったが、彼らにせがまれ五日ほど滞在する事となった。

旅の醍醐味とはこう言うもの。オンドルの暖かさに包まれ、慶州の夜は更けて行った...。