私は、この辺りまでは涙も見せずに冷静に話ができていました。
まだショック状態が続いていたんだと思います。
下の子を迎えに行くと車に乗ってすぐに「ママ体調はどう?」と心配されました。
「まだあんまりかな。食欲もないし。」
「でも大丈夫、心配しないで。すぐに治るよ。」
と笑って見せました。
子どもたちと居るときは、何故かいつも通りの私でいられました。
その日の稽古のことを話しながら運転していると、あっという間に家についてしまいました。
家に入ると夫がテレビも点けずに肩を落としてソファーに座っていました。
いつもの和気あいあいとした我が家の雰囲気はどこにもなかったので、下の子も何か感じたようで「パパとママ何かあったでしょ?」と私にコソッと聞いてきました。
「あったよ。また話すね。」勘がいい下の子には嘘は突き通せないと思い全て話すつもりでいました。
ご飯を食べた下の子はすぐにお風呂に入って気を利かせて部屋へと上がっていきました。
そして上の子、夫、私と順番にお風呂に入って、また夫と2人きりになったリビングで話を始めました。
この時点で、23時を回っていたと思います。
私はソファーに座って、夫は床に正座して土下座状態で謝ってきました。
「本当にごめんなさい。」
「謝られたって許せないよ。ていうか、まだ続いてるの?」
「それはないよ、とっくに別れてる。」
「いつ?」
「2021年のゴールデンウィーク前には終わってたと思う。」
「はっきり覚えてないの?」
「うん、何となくしか覚えてない。」
「じゃあ本当に別れてるのか確認するから、あの子に電話して?」
「それは無理だよ。もうずっと前に終わってるのに電話なんてできない。」
「別れてから連絡とってないし、ブロックして消したから。」
「じゃあ誰かに聞いてよ、あの子の連絡先を。」
「何で?俺は連絡なんてとりたくないよ?」
「私が直接連絡するから。」
「分かった。(N)に聞くから待って。」
「もうこんな時間だから、明日ちゃんと聞いとくから。」
「いいの?(N)くんに知られても。まさか知ってるの?」
「いや、知らないよ。でもいいよ、今回のこと説明する。(M)のアカウントを(N)に教えて、あの子に伝えといてもらえばいい?」
「うん。そうして。」
「それで(M)の気は済むの?」
「それは分からないけど、あの子に何の制裁もないなんて許せない。」
「話をして、あっちの出方次第でこれからのことを考える。」
「でも、悪いのはあの子だけじゃないからさ。悪いのは俺だから。」
「ふーん。そうやってあの子を庇いたいんだね。」
「私よりあの子の方が大事なんだ?」
「そんなわけない。大事なのは(M)だよ。」
「庇うとかじゃなくて、もう終わって何年も経つのに連絡する必要はないんじゃないかなって。」
「必要はあるでしょ?不倫だよ?」
「あなたたち2人は加害者で私は被害者なの。」
「先にちょっかい出してきたのはあの女だったじゃん。」
「いや、ホテルに行く?て誘ったのは俺だよ。」
「そういうことじゃなくて。」
「あの子がSNSに(T)が写ってる写真ばっかり上げてたでしょ?」
「毎回、どこかに行く度に当てつけみたいにタグ付けもしてきてさ。」
「あの頃の私が、それを見てどれだけ傷ついてたと思うの?」
「そうだったね。ごめん。」
「でも、その頃はまだ始まってなかった頃じゃない?」
「は?既婚者相手に始めからそんなことをしてきてた女を庇うの?」
「そうかー... 」
「何?自分が不倫してた女のことを悪く言われるとやっぱり嫌なわけ?」
「いや、そんなことは全然ないよ。」
「本当に庇ってるとかそんなんではないから。」
どこか話が嚙み合っていないような気がしました。