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こちらが一般的におなじみのジャケですが、アメリカでのリイシュー時のものですが、日本を始め他の国では最初からこのジャケでしたよね。

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で、これがオリジナルのもの。ジャケらしいイラストのいかにもな雰囲気のものですが、バンド名とか書かれていないため。シールの上から貼付けたようです。 



 先週の金曜日、深夜の2時から3時までという深海で放送したぼくとKatchin'の全編自力、ノー・スポンサーでひっそり(自分たち的にはそういうつもりはないんですが、一般にこのような深夜はイメージとしてドカーン!じゃなくひっそり、ですから)とやっているinterfm 76.1での番組「Kenrocks Nite ver2」。毎週このような時間帯でキチンとした音楽番組を作ることを心がけて頑張っています。


 音楽番組というのは、単に音楽が流れている、というだけではなく、あくまでそのパーソナリティーというか、喋り手たる人間が、それなりの音楽的知識と探究心と音楽を普及したい、という確固たる意思を持って自分たちなりのやり方で音楽を紹介するもの、と自分は考えています。

 
 そういう番組は今より昔、60年代、70年代の方が多かったように思います。自分が楽しみに聴いていた頃のあの感覚。そういうものを自分たちが今はお届けしたい、ということです。何がかかるか、ハラハラドキドキ、そういう気持ちでラジオに向かうという感覚ですね。時代が違う、の一言では済まされない問題、というより、時代は変わるのは当たり前ですが、人の心はそんなに器用にコロコロ変わるとは思えません。ですから、ぼくらは聴いている人たちの心に向けてささやきかけている、そういうイメージです。


 前置きがまた長くなりました。そう、今回はそのラジオで取り上げたものからひと組紹介しようと思います。ミニ特集(時間が正味20分くらいなので解説をギリギリにしても3~4曲が限界です)でお送りしたアメリカを象徴するバンドのひとつ、その名もThe Bandの6枚目のアルバム、1973年の10月に発売されいろいろ賛否両論巻き起こした作品『Moondog Matinee』を改めて簡単に解説してみます。ちなみにウィキによれば、The Bandは1967年から1976年にアメリカで活動したロック・バンド。オリジナル・メンバーは、カナダ人4人(ロビー・ロバートソン、リチャード・マニュエル、ガース・ハドソン、リック・ダンコ)とアメリカ人1人(リヴォン・ヘルム)。1983年にロバートソン以外のメンバーが再結成し、メンバー・チェンジやサポート・メンバーを加えながら1999年まで活動した。


 この作品、彼らにとって最初で最後の全編カバー曲で構成されたものです。何故こういう作品をあの時点で彼らが制作したのか、については多くの人が多くのことを言ったり書いたりしてます。バンドが過渡期を迎えていた、とか、バンド間に不和の火種が生まれ始めていた、さらには主なソングライターでバンドの動向にも大いに関わりがあったギターのロビー・ロバートソンがネタ切れというか、アイデアに苦労していた、などいろいろです。


 実際、メンバーたちも、「あの頃はちょっとしたエアポケットみたいな時期で、それって逆に言うといきなり自由時間が出来たようなもの」というような話しをしてたりします。で、ドラムでメイン・ボーカルのリヴォン・ヘルムが言い出しっぺとされてますが、彼らがまだカナダで60年代の初め頃、アメリカ人ロックンローラー、ロニー・ホーキンスのバック・バンドとして名前もザ・ホークスとして活動していた頃のレパートリーの中のカバー曲をもういっぺん軽くやってみたらどうかな、ということになり、最初は軽いお遊びみたいにセッションしていたのが、「コレ楽しいからレコードにしよう」という話になり、本格的なレコーディングがスタートしたわけです。


 いろいろな曲をいろいろにやってみて、最初は気楽なセッションだったのが、いざレコードにする、となるとお気楽な遊びというわけにもいかなくなり、ストレートに当時(60年代)のままでイケるのもあれば、一度アレンジし直さないとダメというものまで出て来て、一筋縄ではいかなくなったようです。で、予想外に大変な作業になり、ああだこうだケンケンガクガク。その結果がレコードになった曲たち。

1- Ain't Got No Home ( Clarence "Frogman" Henry これはオリジナル作者 )
3:20
2- Holy Cow ( Allen Toussaint )
3:15
3- Share Your Love (With Me) ( Deadric Malone, Alfred Braggs )
2:50
4- Mystery Train ( H. Parker, Jr., Sam Phillips, adaptation by Robbie Robertson )
5:35
5- Third Man Theme ( Anton Karas, W. Lord )
2:43
6- The Promised Land ( Chuck Berry )
3:00
7- The Great Pretender ( Buck Ram )
3:07
8- I'm Ready ( Fats Domino, Al Lewis, Sylvester Bradford )
3:22
9- Saved ( Jerry Leiber, Mike Stoller )
3:42
10- A Change Is Gonna Come ( Sam Cooke )
4:15

 今飯場されているCDにはボートラが数曲入っていますが、当初はこの10曲入りでした。73年10月にアメリカで6枚目のアルバムとして発売されました。当時は音楽ファンの間で、特にバンドのマニアたちにはいろいろ言われた作品でしたが、チャートでは28位まで上がり、それなりのヒット作になっています。この中で個人的に一番好きな曲は、オープニングのシングルにもなった「Ain't Got No Home 」(放題「流れ者」)で、この曲でオリジナルのフロッグマン・ヘンリーを知りました。リヴォンの裏声も気持ちよさそうでノッてる感じです。「ミステリー・トレイン」はエルヴィスの初期のヒットですし、「グレイト・プリテンダー」は「オンリー・ユー」や「煙が目にしみる」でおなじみのザ・プラターズのヒット曲で有名です。案外シブい曲もやってたんだな、というのが初めて聴いた時の印象でした。もっとも、The Band自体が最初からシブい存在でしたけど。


 この後、ディランの活動をヘルプして、彼らのオリジナルは75年の『南十字星』まで待つことになります。それは全曲ロビー・ロバートソンのペンによる曲で、バンド・ファンからはこのアルバムとは打って変わって大絶賛されるんですが、そのこともあり、リヴォンとの確執がいよいよ深まり、76年にロビーの方がバンドを去る、という形でオリジナルのThe Bandは一端終演を迎えます。


 個人的にはマニアじゃない自分には『南十字星』よりこちらの作品の方が向いてます。