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Balaklava /Pearls Before Swine 2nd 1968



 前にも紹介した事があるかもですが、ま、かなり昔なはずなんで、しかも、チョーレアなものですから、もう一度やってもいいかな。


 こんなに寒い日が毎日続くのも、この何年かの東京じゃ珍しくないですか?自分だけですかね、寒がりは?空気がメチャンコ冷たいです。自転車乗ってると余計にそれが肌で感じられますね。


 日本海側では雪の日が続いて、雪かき、屋根からの雪下ろしとかが毎日の作業で、お年寄りには重労働だ、とテレビとかで地域の住民のみなさんが口々に言ってます。一晩で70センチも積もったんじゃ、この冬が心底思いやられますよね。寒いだけなんて可愛いモンなんでしょう、ああいう地方のみなさんには。


 そんな折に音楽、でもない!と叱られそうですが、それはそれ。自分の思いは音楽でしか今のところは伝えられませんから。雪かきは置いといて、寒い日の音楽として静かに聴き入るにはいいかな、と。それが、このアメリカの60年代のアシッド・フォーク・ユニット、Perals Before Swineです。リーダーはトム・ラップというノースダコタ生まれのシンガー&ソングライター(SSW)で、結成されたのはなんと南のフロリダで65年とのこと。67年にESPという少し変わったキャラのレーベルで、ジャズやフォーク、ロックいろいろ出していました。もちろん、インディーズですね、今で言う。


 ここで紹介するのは彼らの2枚目、68年のアルバム『Balaklava』。何よりも印象的なのがジャケットです。実におどろおどろしい絵画、農民画家として知られるブリューゲルによる有名な「死の勝利」がそのまま使用されています。この絵の題材は彼生きた時代のクリミア戦争でのもっとも凄惨な闘いとされている「バラクラヴァの戦い」で、イギリス騎兵の無謀な突撃が引き起こした殺戮戦とされています。68年当時と言えば、アメリカ軍のベトナム戦争が泥沼化し、不毛な戦いと多くの人々に指摘、非難されつつあった頃です。ラップはそれをこの中世の悲惨な戦いにばダブらせて心を痛め、人間にうとましささえ感じていたのかもしれない、というのが大方の見方です。


 録音はニューヨークで行なわれ、ゲストに地元のジャズ関係のミュージシャンなども加わり、デビュー作の中世的暗黒寓話の世界観から、もう少し現実的になり、サウンドもカラフル?になりましたが、陰鬱で耽美的な彼の世界はまだ健在です。暗いだけではなく、美しくもある静謐な音世界。サイケ・フォークなどと言われたのも、ほかに表現方法が見いだせなかったから、と何でもサイケな時代だったことに起因するんでしょうね。


 実に穏やかで、決して恐怖感みたいなものはぼくには感じられませんでした。アメリカ人じゃなかったからでしょうか?ぼくには、レナード・コーエンの素敵な「スザンヌ」のカバーとかに彼の人間味を感じたりしましたが。ここに紹介した曲「Guardian Angel」も弦楽器の響きと彼の穏やかで無表情な声がとてもマッチしていて耳を奪われます。寒い日ばかりではなく、梅雨時の雨の一日に聴いたりしてもいいかも、ですね。