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 今日は、こないだのROMEO VOIDでちょいと触れたJAMES CHANCEまたの名をJAMES WHITEについてこれまた簡単に紹介しますね。

 一部では今でもレジェンドとして崇拝されているアーティストです。5年くらい前にも来日して東京じゃUNITとかでライブしてました。ヒスグラのノブくんも熱烈なファンというか、信奉者みたいで、Tシャツまで作ってましたね。

 彼の伝説の始まりは70年代半ば頃、故郷のウィスコンシン州はミルウォーキーからニューヨークに出て来た時です。音楽の勉強もしていた彼は、刺激を求めて大都会に出て来たというわけです。まぁ、ここまではよくある話。77年頃にはニューヨークのいろいろなクラブでいろいろなミュージシャンとセッションしたりして、そこそこ名前は売れていたようです。ジャズを志していた20代半ばくらいの若者には、しかし、ジャズ・シーンは冷淡でロクにとりあってもらえなかったようです。ならば、と彼は拠点をロックに移し、そこで自分の存在をアピールすることに成功したんです。

 折しも、時代はパンクが猛威を振るう「変革」の時期を迎えていました。ある意味、何でもアリ!な状況でした。まさに彼にはうってつけ。ジャズをベースに、好きなJBやファンカデリックなどのエッセンスを持ったビート溢れるダンサブルなサウンドをパンクな時代に叩き付けたわけです。歌い、踊り、サックスをブローするその様が多くの人たちを惹き付けました。まさに「時代の寵児」でした。

 リディア・ランチ率いるTEENAGE JESUS & THE JERKSに参加して多くの人脈を築き、出会いを重ね、ついに最初のバンド、JAMES CHANCE & THE CONTORTIONSを結成する。そこに日本人のベースとドラムがいた。それがRECとチコ・ヒゲで、彼らは帰国してツネマツをギターにしたトリオ、FRICTIONを作り、ポスト・パンクの中核として「東京ロッカーズ」をシーンに浮上させることに貢献した。

 ニューヨークでもポスト・パンクの動きは活発になり、コントーションズを含む4組のライブを収録したアルバム『 NO NEW YORK』が一部のメディアやファンの間で話題になった。彼らはパンクでもなくニューウェーヴでもない、という観点から「NO WAVE」と呼ばれることになり、その後の多くの、特にインディー・シーンに影響を与えた。

 そしていよいよ正式なアルバム・デビューを迎える。それが『 BUY』だ。女性の破れたビキニがエロい、とかいう問題ではない。でも、あのジャケットにはおおいに心を揺さぶられた。モデル然とした女性の、まるでスタチューのような無表情な姿にサングラスと破れたビキニ。しかも、『買え』と来た。
Contortとは辞書によれば「ゆがめる、ねじ曲げる」という意味と記されている。そう言えば、このモデルも身体を不自然にねじ曲げているようにも見える。

 そして中身を聴いて、さらにビックリ。JBまがいのファンクなビートに、ヨレヨレのサックスとボーカルがせわしく飛び跳ねている。フリー・ジャズとパンクとファンクの混合のような音楽世界。新世界のストーンズみたいだと、ぼくはその時ビビッと感じた。猥雑でセクシー。いいとか悪いとかじゃなく、感じるか感じないかのどちらか。感じましたねぇ。

 その後もすぐに彼はJAMES WHITEと名前を変えてメンバーも新たにTHE BLACKSを率いて新作『OFFWHITE』をリリース。今度はそのタイトルのように彼自身が、白のタキシード・ジャケットに黒のパンツ、リーゼント・ヘアーに黒の細いネクタイというキメキメの格好でサックスを首からぶらさげて登場。チョークールです。中身も、よりダンサブルに多彩になり、以前の混沌とは別に、明確な意図が感じ取れる作品に仕上げられてます。DISCOな感触が、あの時代のDISCOな感覚とミニマルなモードがビミョーに入り混ざった、まさに「NO WAVE」な世界が浮かび上がっている、そんな気分にさせてくれるサウンド/パフォーマンス。T-2「Stained Sheets」でのリディア・ランチのセクシーヴォイスもイイかな?いや、楽器みたいでね。

 今日は、このへんです。また、いつか彼らについて書くつもりですので、期待しないで待っていてください。バイナラ!

 映像は『 NO NEW YORK』に収録されていたJBのリメイク「I Can't Stand It」(同じ時のものかは不明ですが)