大貫憲章オフィシャルブログ「BOOBEE」Powered by Ameba
『DEEPERS』FRICTION RECK(B.Vo)&中村達也(Ds) Trippin' Elephant TERNG-082

 
 かつて70~80年代のこの日本のロック・シーンの話題を集めたインターナショナルなグループ、それがFRICTIONだ。昨今、またぞろその時代の音楽や世相、風俗などが若者を中心に人気だとのこと。まぁ、多分にクドカンの映画による波及効果という部分もあるだろう。

 しかし、それはそれで、今の若い人たちに日本の優れた音楽遺産の一端に触れてもらう機会が出来たことは素直に喜びたい。あの時代、つまりは海外でのパンクに触発されて世界中にそのフォロワーや賛同者が生まれ、音楽業界自体が大きなひとつの変革の時代を迎えたのだ。

 日本では、その一番突出した形だったのが東京近郊から現れた新しいスタイルと表現を模索したバンドたち、いわゆる「東京ロッカーズ」とマスコミが呼んだ一団である。都内のライブハウスを拠点に多くのバンドが時代を歌い、あるいは攻め立て、さらに呪った。中でももっとも輝いていたのが、ここに紹介する3ピースのFRICTION。ベース/ボーカルにレック、ギターにマッちゃんことツネマツマサトシ、ドラムスにチコ・ヒゲという個性的な3人による骨が軋むような痛みと快感両方が沸き出すような演奏は、坂本龍一のプロデュースによるデビュー・アルバム『軋轢』に刻み込まれ、今なお風化することなくその鈍い輝きをぼくらに放つ。

 あれから30年あまり、今も彼らはONである。メンバーは大きく変わり、オリジナル・メンバーはレックひとりだが、相方に元LOSALIOS、BLANKEY JET CITYのドラマー、中村達也が加わりふたりの強力なパワーのバイブで新たな、それでいて昔となんら変わらないFRICTIONがここに生まれた。新作は25日に発売されるEP『DEEPERS』。ギターとドラムとボーカルのシンプルな構成だが、音像は熱い塊となって聴く者のハートに激しく打ち付ける。巧拙とかいう以前の獏たる無垢の魂しかなし得ない音のありさま。

 明日のぼくのやっているラジオ「ロンナイ」(地方のみJFNネットでOA)では彼らをゲストに収録する予定で、今から楽しみだ。レックとはあれ以来、達也くんとは案外よく会う。