母乳だけという悩み
~完母の孤独③~
私が近年の相談でいちばん印象に残ったのは、
「完母の孤独を感じます」
というお母さんの言葉でした。
出産後、一滴もミルクを足したことがない。
たまたまトラブルもなく
体重の増えも順調で母乳育児を続けている。
でも子育ての現場は、
母乳だけにしたいと思いながら
ミルクを足している人、
足すだけのつもりがいつのまにか
ミルク一本になってしまった人や、
その一歩手前の人。
つまり悪戦苦闘中の
混合の人の方が圧倒的に多い。
だから地域の子育て支援の交流場所に行っても、
みんな悩みを打ち明けあって、
盛り上がることが多く
誰も相手にしてくれない。孤独を感じると。
「もちろん悩みがないわけじゃないですよ。
私だって色々あります。でも何か言っても
『あなたは完母だからいいわよね』
と言われてしまうので、
何も言えなくなってしまって・・・」
「完母の孤独」を訴えるお母さんの言葉に、
正直私は驚きました。完全を求めるあまり、
他の方法を排除している
かのように見える完母という言葉。
逆に完母だからと
中途半端な混合状態にあることが多い?
お母さんたちから排除されているかのような、
母乳のお母さんの孤立。
母乳率があがり、いま母乳育児が
流行っているとか、
昔に比べて考えられないほど母乳育児の情報が
出回るようになったとか言われていますが、
少し違うのではないか。
じつはグレーゾーンにある
大多数のお母さんの悪戦苦闘は
昔とそう変わらず、
結果、完母のお母さんも含めた
みんなの「育てにくさ」の悩みは
さほど解決されていないのではないか。
そう感じています。
つづく
『おっぱいとだっこ』(PHP)著者 竹中恭子