『レミ』


「名前はありません
ただ 音階があるのみです 」

小さいころ習っただろ
階段を下から順に登って
だんだん音が高くなるんだよ

ドレミファソラシド レミ
レミのあとはないの?
そうではないです
でも この家には
えいえんに続く階段はないのです
じゃあどこにあるの?
レミのあとはどこで鳴るの

…頭の中だ
頭の中だよクソガキ
わかったらケツ洗って寝ろ


いま
飲み込んだくすりは
どこへいく
先生 私は
悲しいけれど正常なのです
悔しいという感情や
不快だという感情は
正常に作動しています

このくすりのおかげでしょうか?


体にグルグル巻きつけた磁石は
砂鉄をとるためにあるのではない

この地上にへばりついて
生きられるだけ
生きてやるためにあるんだ
這いつくばればいい
変な物を見る目つきで
見ていく人もいるけれど
目の前に現れる
セミの抜け殻
夏の残響を知っているか
もみ消されたタバコの吸殻の
深紅の口紅の色香を知っているか
どこかから枯れ落ちた花と枝
せわしなく働く蟻
子供たちのために働く蟻達
じゃあ私はなんだ
クソして寝るガキのまま
宿題もない自由をもてあます大人


地球がグルグルと回転してくるから
私は  私達は
この引力に反して転げ落ちてしまう
ちくしょう
ちくしょうちくしょう

だけど
だけど、そこが宇宙ならば
宇宙ならばだよ、
藻屑になった
これまでの犠牲者が
グルグルと
いまも漂っていて
だんだん剥がれていく
磁石と肉体と魂が
夢を見るように
素直な眼差しで
それはさぞ幸福そうに
私達の幸せを願ってくれるだろう
そこにも えいえんは
ないかもしれない
でもあのとき見失った
レミ のあとを
音もなく漂う宇宙の中で
私は初めて
見つけられるかもしれない
頭の中で鳴るのだと嘘をついた
もう一人の私を
許せるかもしれない

ドレミファソラシド

レミ …