ハチミツの話 〜 吉村昭『養蜂乱舞』 | 高井戸の住人のブログ

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今年は右腕と左腕のテニス肘の痛みが交互に起きて曲げ伸ばしがスムーズに行かなかったり、一ヶ月ほど前になぜか急に右膝関節も起きて思ったように早く歩けない状態が続いている。

夏は大の苦手なので日中暑くなる前に散歩して運動する計画も中断。

年で身体が錆びついて来た感あります。(>_<)


コロナ禍以来の物価高騰もあらゆる品目にわたっていて、

最近「ハチミツもなんだか高くなったな」と思っていたところ、

ゆいの森あらかわ図書館で吉村昭『蜜蜂乱舞』(1974年発刊)の紹介が目に付き「そういえば養蜂業とはどういうものか」と思って借りて読んでみました。


鹿児島の鹿屋(かのや)市の養蜂業者が毎年北海道まで蜂蜜採取の旅に行ったり、随所で蜜蜂に学ぶ家族のあり方といった話でいっしょにトラックに便乗したような気になれる小説でした。

養蜂の大変さと主人公の養蜂業者・伊八郎の家族観とか人生観には何度もハッとさせられました。

「許すということ…。」


まず冬が明けると巣箱の中でじっとしていた蜜蜂たちに糖分を上げて元気にします。

そして4月には鹿児島で菜の花、レンゲの花で蜜蜂の入った巣箱200箱を設置してハチミツを集めます。

一つの巣箱には女王蜂1匹、メス蜂(働きバチ)2〜3万匹、オス蜂2〜3千匹が入っているそうです。


そしてレンゲの開花時期が終わるとその200箱をトラック2台(ないし3台)に積んで次は長野県まで行く。

蜂たちは巣箱の中が暑すぎると暴れて温度を上げてしまい烝殺(蒸して蜂たちが全滅してしまうこと)してしまうので夜間にゆっくり車を走行させ風を入れ続けて、目的地には早朝に着くように時間調整して巣箱を開けるようにするそうです。

そのため昼夜交代で運転するために運転手は一台につき2名雇うそうです。


5月下旬、長野県ではアカシアの花から採蜜。


6月、梅雨前線といっしょに秋田県を目指して北上。

ただしこの時期はフェーン現象で巣箱内の急な温度上昇にも気を配らないといけない。

秋田県でその年の採蜜のほとんどを終える。


青森から函館まで青函連絡船で渡る(当時)。


7月中旬、北海道で農家から家を借りたり山でテント生活をしてシイノキの花から採蜜。

そしてそのままスズメバチやヒグマを警戒しながら冷え込む直前の11月中旬頃まで滞在して、巣箱を貨車に積んで鹿児島に送り返す。


北海道でなぜ花の時期が終わっても滞在する必要があるのかも書かれていました。

全編とおして「ああ、なるほど!」の連続でした。

旅先でお世話になったひとたちにハチミツ(産物)をあげられるのもいいなと思いました。


ハチの生態、性質をよく知って細かい配慮と管理をしながら蜂蜜を採取する養蜂業者の苦労を知って崇敬の至り、ハチミツが高いとは思えなくなり、いろいろなハチミツを食べながらミツバチの社会について考えてみたくなりました。

そういえばシャーロック・ホームズの晩年はたしか養蜂業だったことも思い出しました。

「なぜホームズが!?」と思ったけど、養蜂業にはホームズのような洞察力が必要とドイルは思っていたのかもしれない。




セイヨウミツバチ(5月20日撮影)