SpookTale、そこで私は彼と出会った。
繊細な文章の中にダイナミックさがあり、そして何よりも映像を数多く見ているということを表すかのように文字からイマジネーションがあふれ出ていた。
伊藤計劃、彼が同人活動を行い、まだ世にそこまで知れ渡っていないとき、メタルギアソリッド3のトレーラーが出たときだろうか。
スネークがコンバットタロンから飛び立ち、鳥になり、ジャングルに降り立つという映像は革命的で、当時まだ思春期であった自分に多いな影響を与えた。
ウェブというまだアンダーグラウンドなカンティーナの酒場の様相を呈していたそこで様々な情報を探っていた折にトレーラーから想像を膨張させた短編小説と出会う。
そこから彼の書くものに虜になり、更新されるたびに拝読していた。
短編から始まる映画批評やゲームへの論文などがひろがっており、影響を受けて自分も今こうして書いているわけである。
虐殺器官。
伊藤計劃が世に発表した初めての小説であると思う。
これもまたMGS4のトレーラーに多大なる影響を受けた作品で、民間軍事会社や環境に合わせた迷彩服。
ハイテクとはいかないまでも近未来の軍事小説。
それが今作である。
ジョン・ポールという虐殺が起こるたびに浮かび上がる謎の人物を追うために、シェパード大尉は世界を飛び回る。
ある種の冒険小説でありながら、人の根幹にあるものを題材に扱った複雑さも秘めている。
伊藤計劃の突如の死後、彼の作品はある種埋没されていた。
最近になり、彼の残した子供たちを復興させる動きがあり、虐殺器官もその一つへとのし上がった。
彼の残した遺伝子はまた次世代へとmemeとして受け継がれて行ったのだ。
劇場アニメとして屍者の帝国、ハーモニー、そして今作が公開された。
そんな折に私も劇場に足を運び、今作の虐殺器官を見た。
内容としては過不足なく小説を描いたとは言いにくい。
シェパード大尉の内面や彼の家庭事情は描かれることなく、ある種展開も相まって軽薄に見えるようになっていた。
だが、虐殺器官のギミックやその複雑な人間のうちに潜む残酷さを描いている点においては正当な作品であると言える。
自分の座席の両隣は女性だということが意外ではあったが、声優のファンであることを思い出してみると納得のいく答えとなった。
小説だけであった虐殺器官をメディアとしてみることができたのは自分としては幸いなことであった。
ある種の望みを言えば、是非とも小島秀夫にメディア化してもらいたいものである。
