枕女優 /新堂 冬樹 | Bon livre –いつか最良の一冊と出会う–


枕女優 (河出文庫)


※ネタバレふくみます。

成り上がり芸能界モノってやっぱり最後は“堕ちていく”よね。
でも綿矢りささんの『夢を与える』よりも
百田尚樹さんの『モンスター』に近いものを感じた。

見返すためならなんだってやってやるっていう、盲目的な反骨精神がね。

タイトルそのまま、なかなか芽の出なかった新人女優が、
枕営業を重ねてトップスターに登りつめていくお話です。

原田マハさんの『旅屋おかえり』のような包まれる温かさもなく、
今野敏さんの『デビュー』のような作り物っぽい痛快さもなく。
ただただ芸能界という魔境で汚れていく女が描かれている。

私なんかは吐き気をもよおしてしまうけども、
実際に富や名声を得るためなら自分の体を売るくらいどうってことない、
なんて女性も多くいるわけだしねぇ。
Win-Winてやつ?

アイドルと握手をするために何十万円何百万円とつぎこむならば
その金と根気を社会的に使って地位を得て
権力者になったほうがおいしい思いが出来るのに、と言った人がいたけれど。

まー、賢いよね。アメリカンドリームだよね。
めっちゃジャパンだけど。イェーイめっちゃジャパンだけど。
ドキドキな夏希望だけど。

だから好きな芸能人の出てるテレビをチェックしたり、
熱愛報道に一喜一憂する姉を、不毛じゃないのかなぁと不思議に感じてしまう。

もし私が大企業の社長令嬢だったら、
好きな俳優さんをCMに起用してってパパに頼むかも。
でもおこがましくて接触なんてできないから、
万蔵(子分)に隠し撮りしてもらう。ひかえめー!

本当に大事な人材だったら、枕なしでも丁重に扱うだろうってことね。

すごく展開が速いので、あっという間に読めちゃう。
実際に芸能人て、こういうジェットコースターみたいな人生に
必死でしがみついているんだろうなぁ。