おもひで屋/上杉 那郎 | Bon livre –いつか最良の一冊と出会う–


おもひで屋


※めっちゃネタバレします!!

母は病院で眠り続け、父は行方知れず。
祖父母に育てられた高校球児の素晴の心はすさんでいた。
そんな彼のもとに、謎の機関から「思い出はいらんかね」とチケットが届く。

留置場のシーンから始まったので、罪を犯した中年が
幸せだった頃の家族との思い出を見て更正する…みたいな話かと思った。

素晴(すばる)なんて素晴らしい名前で警察のご厄介になるとか
なかなかのプレッシャーを背負ってるよね!

自分が生まれる前にタイムスリップして、「思い出を取り返す」って変じゃない?
過去を変えて、現代に戻ってきた彼を両親が迎えてくれて
両親に育てられて育った記憶に書き換えられてるってならわかるけど。

まぁでも最初に、何をしてもいいけど未来を変えることは出来ない、と説明されてるなぁ。

私の読解力がなさすぎるがために、
状況を理解できなくて何が起こってるのかわからないシーンも多々あった。

文句ばっかり言ってるけど、ストーリーは好きだよ。

車ももってない高校生が「この死体どうにかしなくちゃ」とか
ツッコミどころは多いけど…

つーか岩野、強い選手に育てるためのスパルタじゃなくて、
ただの逆恨みと八つ当たりかい!しかも親父の!
しかも小物なのに全てをかき乱す、素晴もあきれて扱いきれてない悪役っていう。

これ誰一人として救われてない気がする。
主人公が「父さん母さんありがとう」って満足してるからいいのかなぁ。
世界から猫が消えたなら』に近いもやっと感だわ。
あの主人公みたいな自己中と違って、自己完結だけど。

あれは自分以外の気持ちを考えてなさそうなところにイラっとくる、
素晴の場合は自分がいちばん関係ないのに巻きぞえくって割り食ってる。

試合に勝ったら母が事故に遭う、しかしボールをもつと勝負魂が…
っていう葛藤がね、エースとしての葛藤がね、すごくよかったのに
結局あいまいなうち、どっちつかずのうちに流れてったのも残念。

こう言ったらちょう上から目線だけど、
構成やストーリーはすごく好きなのに、もったいない気がする!

美樹と竜太が若いながらいい両親になりそうな良い子たちだからさ、
家族3人で暮らして欲しかったなぁ、
じっちゃんとも仲直りしてほしかったなぁって思っちゃうんだ。