世界から猫が消えたなら/川村 元気 | Bon livre –いつか最良の一冊と出会う–


世界から猫が消えたなら


困る。それで命を引き延ばしたとしても、結局ストレスが溜まって死ぬ。
あ、ネタバレふくみます。

余命宣告を受けた主人公の前に悪魔が現れ、
「世界から何かひとつ消す代わりに、寿命を一日増やしてやろう」と提案してくる。

オレオレ詐欺とか、泥棒とか、とにかく犯罪、犯罪をなくそう!
って考えてたら、そんな細かい指定はできないし、決定権は悪魔にあるらしい。
で、いや他にもっと消すもんあるだろっていう、けっこう重要なものを消していく。

世の中には必要のないものが溢れてるっていうのはわかる。
無くなったって気づかないものも多いっていうのもわかる。

震災で社員のほとんどが通勤困難になったとき、
サイトの更新を滞らせないために何時間かけてでも行く!地方に支社つくる!
ってなったときは、この一大事に誰もPC周辺機器の新製品情報なんか見ねぇよ、
何日か更新されなくたって支障ねぇよ、と鼻白んだりしましたが。

でも、いちおうデザイナーとして、小説好きとして、創作活動を軽んじてほしくない。
映画がなくなってもコミックがなくなっても困らないし消えてもかまわない、
なんて言われると、ちょっと待てコラ!ってなるよね。

一生懸命つくってるやつの気持ち考えたことあるのかと。
一生懸命つくった物を、やっぱ使わないんで要らないって言われる気持ちわかるのかと。

そっちは「寿命のびたぜヒャッホウ!」ってなってるかもしれないけど
(そんなテンション高めの主人公ではないです)
作品を消された側は「死ね!のどにう○こ詰まらせて死ね!」って呪ってるからな。
周りには「残念ですぅ」って言いつつ心の中で「全員死ね!」って呪ってるからな。

樋口卓治さんの『ボクの妻と結婚してください。』もそうだったけど
テレビ関係の方が書く小説は、設定がおもしろいのに内容が軽くて薄いなぁ。

『あまからカルテット』の薫子が、如月ミレイ先生に口出しすぎたのもわかる。

最初は家族との確執や思い出がせつなく、元恋人との触れ合いが新鮮だったのに、
最終的に余命宣告系物語にありがちな、自分勝手なナルシズム全開の
無理やりな前向きさで終わって、なんじゃそりゃー!ってなった。

恋人も友人も父ちゃんも、仕事と生きがい奪われてんだぞ!
「仲直りしよう!」じゃねーよ、ケンカになるっつーの。