それは、秋クールに放送された同じ木村拓哉主演「グランメゾン東京」と同じことが、こちらのドラマでも、更に色濃く顕著に示されたからです。
フジテレビ 1月4日、5日放送
「教場」
主演…木村拓哉
脚本…君塚良一
演出…中江功
このドラマで、木村拓哉は警察学校の教官風間を演じました。
白髪頭に右目は失明している設定のため義眼っぽく見えるコンタクトをはめ、色の入ったメガネをかけ、厳しくドライに生徒に接する寡黙で陰気な教官役でした。
これまで木村拓哉が演じてきた役とは明らかに異質な役。
「へぇ~木村拓哉ってこんな役も演じられるんだ~」という驚きでは、映画「武士の一分」以来だったかもしれません。
そういうチャレンジングな役柄であるばかりでなく、今回のドラマの木村拓哉に関して特筆すべきは、主演でありながらあまり前面に立たずに、生徒たちの陰にいて存在感を示すという一歩引いたありようでした。
俺が主演なんだから…というオラオラオーラはスーパースター「キムタク」だからこそ許される特権から来ていましたが、
その「キムタク」という作られた肥大化した虚像から、木村拓哉は脱却を模索しているように、勝手に私めは感じています。
…そういう意味で、意欲的に今回のドラマに挑み、後輩の実力ある共演者たちを立てながら、それでいて彼らがかなわないものをしっかりと示すということに、今回は成功していました。
警察学校には実は適性としてふさわしからざる生徒も紛れ込んでいて、その本性を暴き、学校から去ってもらう…
特に前編はそんなエピソードの積み重ねで、生徒を演じる若手たちの好演もあり、緊迫感があり見ごたえがありました。
木村拓哉ならではのストイックさ、古武士のような剛直さが見事に活かされてました。
脚本は映画監督になりドラマ脚本をあまり書かなくなった君塚良一。「ずっとあなたが好きだった」や「踊る大捜査線」シリーズを書いた名脚本家ですが、近年は全く書いていません。
そんなベテラン久々の脚本。
才能はさびついておらず、後編は前編とまた少し趣を変えて友情や警察官とはどうあるべきかを描き、
卒業していくところは「愛と青春の旅立ち」を思い出させる感動的なものになりました。
工藤阿須加、三浦翔平、大島優子、葵わかな、林遣都、川口春奈、井之脇海ら既に他の作品で実績のある若手の中で、一人見慣れなかったのが、
風間の過去を探る、警察嫌いの都築を演じた味方良介。
調べたら「テニスの王子様」など舞台を専門に活躍している人らしく、ドラマ初出演でした。
この人を見られたのもこのドラマを見た収穫の1つで、今回の出演で、ドラマからもオファーが来るでしょう。
目にまっすぐな力があり、体幹がしっかりした凛とした演技ができる人で、なかなかの逸材で今後要注目です。
さて、次に木村拓哉は何に挑むんでしょうか?