興味深かったのはブルックナー先生は数字マニアであったらしい。樹木や建物の窓、さらには星の数を数えることに夢中になってしまう人なのだが、女性の胸元をガン見してたかと思いきや、ドレスのボタンの数を数えてしまっていたとかいないとか。さらには強迫神経症をこじらせ、治癒に出かけていたこともある。


ここまで読んで私立探偵エイドリアンモンクとかジャック・ニコルソン演じるメルビンおじさんを連想しましたが、芸術家にありがちな癖のある人物であったようですね。


一方で厳格なカトリック信者でオルガニストでもあったブルックナーにとって神の家は彼のホームでありその教会建築はブルックナーシンフォニーのメタファーとして現れる。


9番を作曲する際にはウィーンのシュテファン大聖堂の建築を研究し、その37という数字が9番のシンフォニーの骨組みになっている。いわば彼の音楽は教会建築のように構築されていて(数字的な意味)美しい教会建築の黄金比のような作品を目指していたのだ。




ちなみに5番を構築している数字は7である。セクションごとの小節数が7の倍数になっているのだそうな。そしてその7という数字は、ブルックナーの故郷で長年オルガニストを務めた、フローリアン修道院の構造のもとになる数字と仮説する識者もいる(Gunnar Cohrs)


バッハの数の象徴主義や、モーツァルトの作品におけるフリーメイソンからのカバラ的な暗号化などに通じるものがあります。


黄金比の計算とか数字が苦手な私にはちんぷんかんぷんであるが、数字マニアの先生が黄金比の美しさに魅せられていたという仮説はなかなか面白いと思いました。