「正義中毒」なる言葉の衝撃 | KOBONBLOG

「正義中毒」なる言葉の衝撃

おはようございます。

曇り空の1月19日朝です。
午後からは日も差してくるようですが、でも寒い一日になりそうです。


さて、私の方、『善と悪とのパラドックス』と、橘玲氏の『もっと言ってはいけない』という新書を並行して読み進めておりまして、読書に忙しい日々なのです、このところ。

いやいや、ほんまにとてもとても久しぶりに「紙の本」をまともに真面目に読み進めているのです。

いやいや、本の中身のランガム氏の研究も素晴らしいですし、橘玲氏の紹介してくれる最先端の「進化遺伝学、認知科学、脳科学、分子生物学」というジャンルの知見も素晴らしく、刺激を受けているのです。

これらについてはいずれ項を改めてここで感想を書いてみようと思っているのですが、今日はその前に、それに関連しての「日本人のSNS上での悪意ある投稿」という件について書いてみたく思ったのです。



と、いいますのは、ここ最近「ネトウヨ界隈」で、SNS(主には旧TwitterやYouTube)上である種のバトル、といいますか、ある種の非難合戦といいますか、何やらあまり芳しくない論争が繰り広げられているのですが、それについて私は少々心を痛めているのです。

前からここでも言及しているのですが、つまるところ「飯山陽女史VS池内恵氏」の相互非難合戦という。
それに対して飯山陽女史を支持する、同時に日本保守党を支持する門外漢の人たちが、池内氏に対して大挙攻撃を仕掛けているという。で、池内氏が大変困っているという図なのです。

で、さらに、これに対して、なんと、ジャーナリストである長谷川幸洋氏がご自身のYouTubeチャンネルに飯山女史を呼んで対談動画を公表し、その中でも池内氏を貶めるような言辞があったということで、池内氏は強い不快感を公表したという。

それで最近、何やら長谷川氏が上念司氏のYouTubeチャンネルに出演し、少々「言い訳じみたご発言」をしたとか。

 

 

 

 





いやいやいや、私はその動画も視聴したのですが、どうにも長谷川氏の分が悪いことは明らかなことでして、長谷川氏は今回は大きく「ミソを付けた」格好になっているのです。

さて、そういう芳しくない動きを見ておりまして、私はそもそもの発端であります日本保守党支持者による池内恵氏への攻撃(非難中傷)ということを問題視したいのです。

で、この件色々と分析できるのですが、興味深いのが、池内氏を攻撃している人たち(日本保守党支持者)が、決してそもそも「レベルの低い人たち」ではないということなのです。

むしろ、「日本を良くしたい」という純粋といいますか、熱い思いに溢れた「正義の人たち」であろうと推測されるのです。それもリベラル系でなく保守系の、ある程度中年以上の男性諸氏であろうと。

それが、なんと、あの女子プロレスラーだった木村花さんがSNSで追い込まれて自殺してしまったような、そういう「悪意ある書き込み」と近いような恰好で、日本保守党支持者の人たちが池内氏のTwitterにガンガン書き込みをして行ったということなのです。

構図は単純でありまして、飯山陽女史がご自身のYouTube動画で池内氏のことをずいぶん手酷く攻撃していることに賛意をもった人たちが、飯山女史の言辞を「それこそ正しい!」と信じ込んで、「公金チューチューしている池内は怪しからん!」と熱くなって、それで池内氏を攻撃し始めた、ということなのです。

いやいや、池内氏にとってはたまったものではないのです。
そして今回は、長谷川幸洋氏までが、飯山女史に乗せられてついつい池内氏をディスる側に回ってしまったという。
長谷川氏、調子に乗ってしまったのでしょう、これは顰蹙を買っても仕方ない事案(動画の配信)だと思われるのです。

さて、この件、私は先日ここでご紹介した「現代ビジネス」誌の記事を絡めて、考えてみたく思ったのです。

1月8日のブログでこちらの2つの記事をご紹介させてもらったのです。




 

(2023.08.19)
 

(2023.08.19)




この2つの記事を簡単に要約するとこういう。

【要旨】
○ネット上の誹謗中傷が異常なまでに盛り上がり、他者を自殺に追い込む国は日本の他に類を見ない。日本社会はなぜ悪意に満ちているのか。その根源を探ると日本人のもう一つの素顔が浮かび上がった。

○スマホで人を殺せる

○日本人は世界一礼儀正しい民族として世界的な評価を得ている。スポーツの国際大会などで日本人観戦客がゴミ拾い活動をする様子が世界中で放送されるたび、誇らしい気持ちになる人も多いだろう。

○一方で、「日本人は世界一意地悪だ」とも言われる。女子プロレスラーの木村花さんや、タレントのryuchellさんに対し、SNS(ソーシャルネットワークサービス)上で罵詈雑言を浴びせ続け、自殺にまで追い込んだ事件はメディアでも取りざたされ、社会問題化している。

○日本人が意地悪であるということを、大阪大学社会経済研究所はあるゲームを用いて科学的に証明した

○ゲームの経過や利得に関する具体的な数値は煩雑なため省略するが、このゲームで日本人のほうがアメリカ人に比べて明らかに意地悪な行動を選びやすいということが分かった。

○「日本人は自分がもっとも得をするようには行動せず、自分が得をすることよりも、相手のタダ乗りを許さずに、少しでも相手の足を引っ張ろうとする傾向があります。こうした経験をしてしまうと、タダ乗りを狙っていた人も次回からは参加せざるを得なくなる。したがって、日本の社会では、みんなが仲良く協力的に事に当たっているのではなく、協力しないと罰を受けると分かっているから協力せざるを得ない社会だということが示唆されます」

○悪意は理性を超越する

○人類史における悪意の起源はギリシア神話にまで遡るとされる。
○アリストテレスの定義、「悪意とは自分が得するためではなく、相手が得しないように邪魔すること」

○支配的悪意を持つ人は、他人より優位に立ちたいがゆえに努力を惜しまない。その結果、社会の競争を促して科学的な発明や発見が生まれた。反支配的悪意も、非協力的な行動のツケが罰となって帰ってくることを人々に認識させ、結果的に社会全体が平等へと向かっていくという側面がある。

○サイモン・マッカーシー=ジョーンズ准教授:『悪意の科学 意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか?

○「一つは平等主義によるもので、不公平に対する怒りや正義を振りかざす快楽などの感情によって引き起こされたもの。これを『反支配的悪意』と呼び、彼らは提案者になった時には5:5の公平な提案をします。もう一方は、人より優位でありたい、得したいという『支配的悪意』を持つ人で、提案側に回った際は不公平な提案をすることが分かっています」

○ジョーンズ氏はこうした悪意の有用性をある程度評価している

○「悪意は決して非協力的な人を是正するためではなく、相手を陥れ、自分を押し上げて相対的優位を獲得するために進化してきた。悪意ある罰により、公平性が推進されたことはあくまで副産物なのです。それを人間は上手く利用してきた。しかし、いつしか人間は罰を与えること自体が美徳であると思い込んでいると私は考えています」

○日本人は社会を維持するために悪意ある行動や意地悪な考え方を培ってきた。前近代の村社会において最大の正義は「共同体の維持」だ。手を取り合わなければ生きていけないからこそ、秩序を乱すものには罰を下してきたし、はじき出されれば生きていけない。とすると、日本人の礼儀正しさや親切さは社会から村八分にあわないための同調圧力に起因するものであると言えるのではないか。

○「人間の脳は社会の規律を乱す人を罰することを奨励するようにできています。実際、人を罰するとき、脳内ではコカイン中毒者と同じような反応を示すことが分かっています。この状態のことを『正義中毒』と呼びます。同時に脳が罰の対象者を人間以下の存在であると錯覚させる『知覚的非人間化』を行い、人間をより悪意ある行動、罰へと向かわせるのです」(ジョーンズ氏)

○日本人はこの『正義中毒』に陥りやすいことが医学的にも分かっている。日本人は「不安遺伝子」と呼ばれるセロトニントランスポーターSS型を持つ人の比率が、他の国に比べて圧倒的に高いのだ。

○「セロトニントランスポーターとは、精神の安定に作用する神経伝達物質、セロトニンの濃度調節を行っているタンパク質です。セロトニントランスポーターの少ない人はセロトニン不足に陥りやすく、抑うつや、満足感を得られず不安行動をとるといった症状に結び付く傾向があります。セロトニントランスポーターを持つ数が最も少ない遺伝子はSS型と呼ばれ、日本人は国際的にも高い割合でSS型だとされています。

○SS型は不安を感じやすいだけではなく、他人に対して言葉による攻撃をしやすい傾向にあることも分かっています。つまり、遺伝子的にも日本人は他人に与える罰が過激になりやすいと言えるのです」

○そして、この日本人の悪意を暴走させるのが、ツイッター(現X)やフェイスブックなどのSNSである。近年の著名人への誹謗中傷、炎上騒ぎはほとんどすべてがSNSを舞台に行われていると言っていいだろう。

○「間違いを犯した人間を引きずり下ろそうという行為は、反支配的悪意によるものです。ですが、SNSでは自分より社会的地位の高い人間を傷つけるための書き込みをすると、しばしば『いいね!』などといった形で称賛されます。ネットという空間で正義の執行による快感が肯定され、相対的に自分の地位が上がったように感じられます。つまり、社会的正義を守るという反支配的悪意を装った支配的悪意が働いているのです。ネットで誹謗中傷をする人のモチベーションを突き詰めると、他人の承認を得ることに尽きるでしょう」(前出・ジョーンズ氏)

○こうした歪んだ悪意や、そこから生じる正義中毒を防ぐためには、意地悪な行動に見返りを与えないことだ。しかし、不特定多数の人々による自由な交流を最大の目的とするSNSでは、それを制限することは難しい。

○「SNSによるコミュニケーションの方法は、未成熟のまま変化していきます。SNS上での悪意にどう向き合うかは今後も我々につきまとう大きな課題になります」(前出・岡本氏)

○悪意は元来、社会を維持し、成長するために進化してきた有用なものだ。ネット社会において、暴走する悪意とどう向き合うべきか。日本人は今、真価を試されている。

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ということなのですが、この中にある「正義中毒」なる言葉には(う~~む、)と唸るのです。

日本人は、もうこの「正義中毒」にやられまくっている民族なのでしょうか。

いやいやいや、深刻なことであると。

この記事の最後に「暴走する悪意とどう向き合うべきか。日本人は今、真価を試されている」とあるのですが、まことにその通りであろうなと。



そして今、問題にしたいのが、この件についての「影の主役」である百田尚樹氏についてなのです。

氏は、まさに一流のエンターテイナーであり、一流の書き手である作家であり、同時に巨大な影響力を有するインフルエンサーなのです。

ですが、氏は、今、ご自分がこういう「飯山vs池内バトル」の発生の「遠因」であることの自覚もなく、この件を気楽に眺めているだけなのです。

ご自分がYouTubeやTwitterで、まさに「信者」に大きな影響力を行使していることに無自覚で、池内氏(他)が大きな迷惑を被っていることに、あまり頓着していないのです。

いやいやいや、これはもう「ダメでしょ」と言われるべき事案になっていると思われるのです。

百田氏が、過去、橋下徹氏とバトルしていたことは有名な話なのですが、そしてそれはもう「個人対個人のバトル」であったということで、橋下氏にとっては大いに怒り心頭な案件ではあったでしょうが、しかしまぁ、しょうがない、「お互い様」的な構図でそれを見ることもできたのです。

しかし、今回は、百田氏が率いる「日本保守党」なる大きな組織を支持する大集団が、こうして個人である池内恵氏に大挙して攻撃をしかけるような案件になっているのです。

これでも百田氏が「日本保守党とは関係のない話です・・・」というなら、ちょっと違うでしょうと。

私は今でも百田氏という人物を「大いに買っている」クチなのですが、今回はそれとは別に「ちょっと反省した方がよろしいのでないですか」と言いたいのです。

「百田さん、あかんでっせ・・・」なのです。

今回、日本保守党を立ち上げる件では、有本香女史、河村たかし氏、他にも飯山陽女史、ネコ組長、井川意高氏、島田洋一氏、などなど、著名人も巻き込んで大きなウェーブを作り出したのですが、肝心かなめの百田氏が、こうして今でもご自分のインフルエンサーとしての巨大な影響力に無自覚で、単なるオモシロユーチューバー的気分で毎日動画をUPしていることは不味いのです。

 

その危険性に早く気が付いて、大きく軌道修正して行くことが必要だろうと思われるのです。

そうでないと、巻き込んだ著名人の方々が、ついには「やつらはみんな百田尚樹にたぶらかされてピエロになっちまったよな(笑)」、「長谷川幸洋が最初の犠牲者だな・・・」という風に見なされて行くしかないような・・・。


今までも、池田信夫氏や八幡和郎氏などはそういうスタンスでこの動きを眺めているのです(きっと)。

あ~・・・、

やんぬるかな・・・、

百田氏のために、私は大いに残念感を禁じ得ないのです・・・。

単なるオモシロユーチューバーであるなら、超一流なのに・・・、

単なる外野から「日本を良くしたい!」と叫ぶ熱いネトウヨであったなら、良かったのに・・・、

しかしそれが「政党の代表」となるなら・・・、

もう単なる「オモシロユーチューバー」のスタンスではいけないのです・・・。


そして、自らが、「正義中毒ではあかんでっせ!皆さん!」として警鐘を鳴らすようでなければならないのです。

それが・・・



ということでありまして、いやいや、

私はもうこれ以上日本保守党がガタガタになって崩壊して行くことを見るのが忍びないのです。

いや、スタートする前からポシャって行った方がむしろ罪は少ないのかもしれないのですが・・・。

いずれにしても、もう「政党はダメ」な時代なのです、そもそも、

政党政治に、いつまでこだわっているのですか?、と言われなければならないのです、そもそも。



いやいや、それにしても「正義中毒」、

恐ろしい言葉です。

 

日本人は、ほんまにこの言葉をみんなが噛み締めて、SNSで人を殺してしまうようなことのないように、大いに、大いに気を付けなければならないのです。

そしておそらく、

岡田斗司夫氏がすでに予言しているように、早晩、「知識人階層はSNSから離れて行く」だろうなと。



てなことを考えていたのです。


ご紹介まで。

ではでは。