返ってくる訳がない…、常識でしょ…
いよいよ明日、プーチン氏が来日するようです。
北方領土問題がどうなるのか、マスコミでも結構色々と予想しているのです。
で、その予想ですが、どうも「進展せず」が大方の見方のようです。
私が昨日見たワイドショー番組の中で、市民にアンケートを取っていたのですが、その質問項目に「返還交渉が進むと思いますか」という質問に対して、最も多い答えが「思わない」だったのです。
まぁ、日本国民もだいぶ冷静な判断が出来るようになってきた、といえるのでしょうか。
しかし私にはとても不思議な感じがするのです。
私たち年長者にとって、この北方領土問題はだいぶ古くからある、まさに「古くて新しい」という問題なんです。
そういう私たちの年代の者にしてみれば、以前、そう、40年ほども前から続くあの「狂騒」はなんだったのだろうか、という気がするのです。
つまりは、日本国民が冷静になってきている、というより、はっきり言えば「マスコミが冷静になってきている」という感じでしょうか。
マスコミが冷静になってきたから、それに影響されて国民も冷静になってきたのか、それとも国民が冷静になってきたから、それを受けてマスコミも冷静さを取り戻している、ということなんでしょうか。
いや、難しいです、これは。
「歌は世につれ、世は歌につれ」という言葉があるのですが、そうだなぁと、今、ほんまにそうやと思えるのです。
マスコミと国民世論は、まさに歌と世の関係と同じかもしれないと。
さて、私の感覚では、40年、30年ほど前の「国民世論」か「マスコミ」か、どっちか分からないのですが、いずれにしても国内の基本論調は「北方領土は即時返せ!」「正義は我にあり、政府は毅然としてソ連政府に主張しろ!」「妥協するな!」という感じの大合唱だったように思うのです。
今とだいぶ様子が違う印象があるのです。
これは私だけがもつ感覚なのか、それとも私より上の世代の者たちはみなそう思っていることなのか、それも疑問ですが。
なんでしょうか、この「変化」は。
そしてまた私自身の中でも、この北方領土問題については認識の変化もあるのです。
以前は日本側だけの主張を、その正当性の主張だけを聞かされて、ソ連(ロシア)側の主張など一顧だにせず、それは丸ごと否定して、相手を「盗人猛々しいとはこのことだ」として非難し、とにかく「一歩も引く理由などない。政府は毅然として戦え」みたいな主張だけが正義として日本国内の世論というかマスコミ主導の空気が漂っていたのです。
そして私たちはそういう空気の中で育って来ていたのです。
それを疑うこともなく。
しかし、この歳になって初めて分かったことがあるのです。
何かといえば、ロシア側は昔から一貫して「戦争で勝ち取った領土は絶対に返さない」国であるという事実を。
そしてそれは一人ロシアに限ったことでなく、西欧諸国全般にわたってそうなんだということでした。
彼らは「莫大な犠牲を払って勝ち取った領土を、なんで返す理由がある?むしろ返して欲しけりゃまた戦争で取り返せよバカ」と言いたい訳だと。
かつて日本は日清戦争の折り、リャオトン半島を分捕ったのは良かったのですが、それを「返せ!」と主張され、泣く泣く返還したという事件(三国干渉)を経験したのですが、ロシアの認識はその当時の領土問題についての認識と全然変わっていないと思われるのです。
もちろん、日本側の主張にはそれなりに理があって、ソ連側が当時きわめていい加減なやり方で、国際的常識を無視したような非道なやり方で北方領土をかすめ取って行ったという事実はあるのでしょう。
ですから日本がソ連の非を責めて、「返せバカ!」と叫ぶのも当然ではあるのです。
しかし、どれほどそれが非道で無法でメチャクチャな行為であっても、それを言うなら戦争そのものが大メチャクチャな事がらなんです。
そういう大メチャクチャな中で、ソ連が小さな局面で小メチャクチャをしたからといって、それを「メチャクチャしやがって!」と非難しても、相手には通じない話なんでしょう。
それを言えば相手だって「お前のやらかしらメチャクチャはどないやねん!!」と返されるだけで。
そしてロシア国民はそういう自分たちの小メチャクチャの事実を全然知らされていないのです。
ロシア国民にしてみれば、日本が4島を返せと言ってきていること自体が、「日本はなんかおかしなことをいつも言ってくるよね・・・」ということくらいにしか見ていないのでしょう。
そしてもし政府が4島を返すなどと言いだせば、そっちこそを「頭狂ったんかプーチン?!」として大騒動が勃発すると。
そんなロシアに「北方領土を返せ!」なんて主張することは、もうハナから間抜けな話なんです。
いや、そう主張することは「正義」なのかもしれないのです、正義、正しいことかも。
しかし、現実、もう70年も前から、ソ連時代もロシア時代も、彼らにとっては「返すつもりなんかない」というのが基本前提だということです。
彼らにとっての唯一の原理は、「戦争で得たモノ(領土)は、元々返す理由などない」というものだと。
それがロシア国民とロシア政府の前提なんですから、「返せ!」「返せ!」と日本がどれほどノー天気に叫んでいても、はっきり言って100年経っても返ってくることはないのです。
そういうことを、我々が若い時代に、誰がそう国民に教えたでしょうか。
マスコミも、政治家も、国民も、みんな一丸となって「ソ連は悪い!」「ロシアは間違っている!」「政府か弱腰じゃダメだ、毅然として我が方の立場を主張しろ!」「妥協するな!」というような方向だけで走ってきたのです。
いやはや、そんなんで解決するはずがないのです、ハナから。
当時の政治家たちはそんなことも知らないで交渉に臨んでいたのでしょうか・・・、
むしろそれの方が気になるくらいです。
そして当時は「北方領土なんでいらないよね」、などと言おうものなら、「非国民かお前は!」と、「お前には故郷を奪われた島民の気持ちが分からないのか!」として糾弾されていたでしょう。
ふ~~・・・・、
そういうことを知らないまま来た私がバカだったのでしょうか。
それとも、私一人がそうではなく、およそ大多数の国民がそのように洗脳されたかの如くにいたのでしょうか。
私にはどう考えても後者が真実のように思えるのです。
私は今となって思うのです。
もう北方領土なんか返還されなくていいじゃんと。
むしろ返還されたら金がかかってしょうがないじゃんと。
むしろ返還させるためにロシア側に膨大な額の経済援助をすることになるのなら、それはもう国益の毀損になるだけじゃないのかと。
いやいやいや、択捉島や国後島に住んでいた元島民の人たちにとっては、返還は「悲願」なのかもしれないのです。
返ってきて喜ぶ人たちも事実いるのでしょう。
しかし私はもう思うのです。
北方領土は、ロシアが「どうぞ受け取って下さい」として、「熨斗をつけて返す」気持ちになって初めて受け取ればよいものだと。
いやいやいや、この40年間の動きは、凄い変化だ・・・
40年前、この今の日本の論調を、誰が予想出来ていただでしょうか。
マスコミも、政府も、政治家も、誰も自分たちのあの当時の「ダメ発言」を反省も総括もしないのです。
みな言いっぱなし、喋りっぱなしです。
朝日だって、戦争時代に戦争を煽った記事を書いていたことなど、露ほども懺悔も反省もしていないのです。
ムムム・・・・、
いいんだろうか、そんなんで・・・・
さてさてプーチンさん、どんな顔で来日することやら・・・。
ではでは。