JR鹿児島本線と長崎本線が分岐し鉄道の要衝として栄えてきたJR鳥栖駅(佐賀県鳥栖市)。明治期に建てられた駅舎が今も残り、ホームは懐かしい雰囲気に包まれています。特急列車も多く発着する同駅のいろいろな鉄道風情を楽しんでみました。

 

 

鹿児島本線と長崎本線が分岐する鳥栖駅の駅名標

 

 

 

◾️明治期の2代目駅舎が健在

鳥栖駅は当時の九州鉄道により1889(明治22)年に開業。機関区や操車場が整備され、まちは鉄道とともに発展しました。現在の駅本屋は1903年に建てられた2代目で、11年に増改築されたようです。改修を繰り返しながら120年間も現役でいるのは主要駅では珍しく、「生きた歴史遺産」として貴重な存在です。

 

 

鳥栖駅の駅舎。現代の建物にはない落ち着きが感じられます

 

 

駅舎内は改札口横にみどりの窓口があり狭く感じますが、列車の発着案内は「鉄道の要衝・鳥栖」らしい存在感を見せています

 

 

 

◾️懐かしさが漂う改札内

鳥栖駅は改札内に入ると一層懐かしい雰囲気にあふれています。地下通路などホームまでのアプローチが良い意味で洗練されてなく、どこか子どもの頃になじんだ「昭和の駅」を感じさせます。

 

また、駅の広告掲示物は地元・久光製薬の「サロンパス」が目立ち、田代売薬以来の当地らしさを見せています。地下通路には、鉄道、薬、はぜろうといった鳥栖の歴史を紹介した掲示もあります。

 

 

改札口からホームに向かう通路。地下通路まで線路の横を歩きます。この回り道に懐かしさを覚えます

 

 

鳥栖駅の地下通路と歴史を紹介した掲示。天井はパイプなどがむき出しで昭和的です

 

 

かつて長大編成が発着した3面6線のホーム。屋根や支柱に歴史を感じます

 

 

ホーム屋根の支柱には、開業時に使われていた外国製レールが再利用されています

 

 

ベンチや階段など至るところに「サロンパス」があります

 

 

 

◾️多彩な特急が頻繁に発着

鳥栖駅は6番のりばまであり、九州、西九州の両新幹線が開業した後も「リレーかもめ」「みどり」「ハウステンボス」などの特急列車が頻繁に発着します。かつてはこれに加えて鹿児島本線系統の「つばめ」「有明」、さらには寝台特急も行き交っていたことを思うと、昔は一層華やかだったことでしょう。

 

 

鳥栖駅5番線に入線する下りの特急「リレーかもめ」の787系。もう少し望遠レンズで撮ると車体メインでも撮れそうです

 

 

783系の上り特急「みどり」も到着。鹿児島本線と長崎本線の分岐はホームから離れていました

 

 

6番線の隣には留置線があり、のんびりした光景が広がります。この日は811系とキハ220形が留置されていました

 

 

 

◾️中央軒の立ち食いうどん

鳥栖駅といえば、ホームの立ち食いうどんが有名です。中央軒(本社・鳥栖市)が56(昭和31)年から営業を続けていて、「かしわめし」「焼麦」(シューマイ)の駅弁も人気です。

 

立ち食いうどん店の中では「5・6番ホームがおいしい」とのうわさもあるそうです。実際の味は同じと思いますが、同ホームの店舗は営業時間も長く、一般客に混ざって列車乗務員も味わっていました。

 

 

鳥栖駅5・6番ホームの立ち食いうどん店。私も列車撮影の合間にいただきましたが、食べるのに夢中だったのか、うどんの撮影を忘れてしまいました…

 

 

 

◾️駅東側の鉄道施設跡にはスタジアム

一方、かつて鳥栖機関区や操車場などがあった駅東側は、現在サッカーJ1サガン鳥栖の本拠地スタジアムや公園などになっています。片隅に展示された、かつて入換機として活躍した明治期の蒸気機関車230形268号機のみが往時をしのばせます。

 

 

5・6番ホームから見た「駅前不動産スタジアム」

 

 

展示されている268号機関車。鳥栖では54(昭和29)年に廃車されるまで15〜20年間使われていたようです

 

 

 

私は今回、鳥栖駅を起点に「SL人吉」を撮影しました。沿線で見送った後、列車で同駅に戻ってくると同行の友人は「なんかホッとするね」と話していました。

 

駅は列車を利用する人のための施設ですが、往時の面影を残し多彩な特急が発着する鳥栖は、老若男女が「鉄道」に親しむ多くの要素が詰まっています。

 

いつか再開発が行われるかもしれませんが、利用者の利便性を向上させつつ、鉄道のまちの「財産」ともいえる素晴らしい風情も残してほしいものです。