ベテラン鉄道車両を往年の姿に戻す企画が多く見られる近年、かつて日常的に見られた「国鉄色」が注目されています。中高年には懐かしく、若い世代には新鮮ー。何冊か刊行されている「色鉄本」の中から、今回は「国鉄車両関係色見本帳+車両色図鑑」(グラフィック社)を参考に国鉄色の使われ方を見てみました。

 

 

かつて多く見られた国鉄色の鉄道車両。近年はリバイバル企画での復活例が増えています。写真はJR九州で以前見られた415系(赤13号+クリーム4号)と485系(赤2号+クリーム4号)=2010年

 

 

 

「国鉄車両関係色見本帳+車両色図鑑」は、国鉄工作局が発行した「国鉄車両関係色見本帳」1983年版を特色印刷で再現したものです。ミシン目から切り離してまとめれば、当時の色見本帳の雰囲気が味わえます。

 

「色見本」は普段使わない方には何となく難しい印象を受けますが、この本はページをめくると直流電気機関車の青15号、山手線の黄緑6号などおなじみの色が次々と現れ、パラパラと眺めるだけでも楽しめます。

 

実用性がどこまであるかは正直分かりませんが、鉄道趣味においては写真の色補正や模型の塗装などで役に立ちそうです。

 

 

かつて東海道・山陽本線で見られたブルートレイン。同じ青色でも、直流電気機関車(EF65、EF66形)の青15号と客車(24系、14系)の青20号で色味が異なっているのが分かります=2005年

 

 

 

私の場合、姉妹ブログ「歴鉄2番線」を昨年立ち上げた際、ページデザインに国鉄色を取り入れようと本書を活用しました。最終的に採用したのは鉄道とは無関係の色でしたが、配色自体は参考になりました。

 

「国鉄車両関係色見本帳+車両色図鑑」は蛍光灯下での色合わせになっているようですが、使用環境によって見え方が変わるのは注意を要します。また、「CMYK」の数値は載っていないため、紙媒体で活用する場合は別の書籍の方が良いかもしれません。

 

もっとも、印刷物で色の完全再現は難しいため、ある程度は割り切る必要があるように思います。

 

 

私が姉妹ブログのデザインで検討した色見本。左下の青色が国鉄色の青15号、その上が青20号(印刷やモニターによって色味は結構変わってしまいますが…)

 

 

 

この本の後半は、国鉄車両関係色見本帳の色がどのように使われていたかの実例を示した「車両色図鑑」になっています。

 

「国鉄色」というと多くの人が外装を思い浮かべますが、面白いのは客室の内張り、床、カーテン、さらにはヘッドマークなどの備品にも色指定が及んでいることです。子どもの頃から親しんできた色の多くが国鉄色だったと、読んで理解できました。

 

 

内装にも及ぶ国鉄色。乗務員室も内張りが淡緑3号、機器類が灰緑3号と呼ばれる指定色になっていて、同じ緑色でもちょっと異なります(写真はクハ103-108)=2011年

 

 

国鉄色は行き先方向幕にも。列車種別や特急名には赤1号、行き先の文字は青15号が使われていたそうです=2006年

 

 

大阪駅で見られた寝台特急「つるぎ」のヘッドマーク。空の色は青9号だったようです=1991年

 

 

 

以上、「国鉄車両関係色見本帳+車両色」を見て、国鉄色のことを少し考えてみました。国鉄形車両を扱う書籍・雑誌は多く見かけますが、当時の「色見本帳」を再現した同書は、現場の雰囲気が感じられる面白い一冊です。

 

私は「色」についての知識は乏しいのですが、それでも昔の写真と見比べてみたり、色の組み合わせを考えるなどして楽しめています。少し変わった書籍ですが、鉄道趣味の視野を広げる助っ人になるように感じました。