九州の代表的な気動車急行だった「くまがわ」。国鉄からJRに移行した頃は博多駅から鹿児島本線、肥薩線を経由して、湯前線(現くま川鉄道)の湯前駅(熊本県湯前町)まで走っていました。種別が快速→急行→普通と変わる列車でした。

 

「くまがわ」は1959(昭和34)年に準急として登場。当初は門司港ー人吉間の運行で、66年に急行に格上げされました。私が見た80年代後半には、博多ー熊本間は快速として運転されていました。

 

 

博多駅に停車中のキハ58系「くまがわ」。大きなヘッドマークが印象的でした。正面窓上の列車種別は「快速」になっています=1988年1月

 

 

 

86年11月のダイヤ改正時の時刻表を見ると、下り「くまがわ」は博多駅を14時23分に出発。熊本駅(16時30分発)から急行に変わり人吉駅に18時02分に到着。ここからは普通列車となり、終点の湯前駅には19時20分に着いていました。約230キロの道のりを約5時間かけて走っていたようです。

 

博多駅では特急「有明27号」の3分後に出発。「くまがわ」は27分後に出た次の「有明29号」に熊本駅到着時に4分差まで詰め寄られるものの、なんとか逃げ切るダイヤでした。所要時間は30分近く長くなるものの、特急料金不要を考えると意外にお得な列車だったのかもしれません。

 

一方で、特急に続行する形で走っていたため、肥薩線直通以外の利用が実際どの程度あったのかは気になります。国鉄時代の名残というべき運行形態だった「くまがわ」でしたが、結局89年3月のダイヤ改正で熊本発着に変更されました。

 

快速で出発し・急行で走り・普通で着く…

 

当時気動車急行には興味がありませんでしたが、いま思うとこうした列車は実に興味深く、一度じっくり乗ってみたかったです。

 

 

急行「くまがわ」の系譜を引くともいえる「かわせみ やませみ」(写真は鹿児島本線での運転時。後部は「いさぶろう・しんぺい」)

 

 

 

「くまがわ」は最終的には肥薩線の特急として2016年まで運転されました。同線はその後、特急「かわせみ やませみ」も登場するなど観光資源として活性化を図っていましたが、2020年の豪雨被害により現在は運休が続いています。存廃について着地点がどのようになるのかは分かりませんが、急行「くまがわ」が走った昔を思うと、少々寂しさを感じます。