EF30形は1960(昭和35)年、関門トンネル専用に開発された交直両用の電気機関車で、海底下を走るためさびにくいステンレスの車体になっていました。国鉄末期の87年まで活躍し、東京ー九州間の寝台特急ではわずか6㌔・8分間の出番でしたが、決して欠くことのできない存在でした。

 

 

そんなEF30形ですが、鉄道模型(Nゲージ)では87年のTOMIX以降あまり商品化に恵まれませんでした。全国的にはマイナーな存在で、既に現役を退いていたためかもしれません。KATOが新製品(品番3073)を出したのは2013年。今回この模型をもとに、晩年の実車について探ってみました。

 

 

 

 

ステンレス車体や屋根上のリアルな再現に感心させられます

 

 

 

製品を手に取ると銀色に輝く車体に目を奪われます。ステンレスの質感がうまく再現されていて、雰囲気は記憶にあるEF30形そのものです。付属品はナンバープレート(9、11、14、17号機)、メーカーズプレート(日立、東芝)、さくら、はやぶさ、みずほ、富士(山富士)、あさかぜのヘッドマーク、ナックルカプラー2個。組み立てはプレート類を取り付けるだけで、不器用な私でも簡単でした。

 

 

付属品はシンプル。苦手な手すりが取り付け済みで助かります

 

 

 

さて、何号機にしようかと考えていたところ、正面貫通扉下部に突起があることに気づきました。ヘッドマークステーの表現と思われますが、そうなるとこの製品はブルートレインのマーク復活後、昭和60年3月以降の設定と考えるのが良さそうです。さらにEF30形のヘッドライトは1灯ですが、シールドビーム(2灯)に改造された車両がいたことも思い出しました。

 

 

昭和50年代のブルトレを考えればEF30形はヘッドマークなしの姿が好みですが、貫通扉下部の突起がちょっと気になります

 

 

EF30形と山富士ヘッドマークは短期間の組み合わせでした

 

 

 

付属品の車番にある4両の晩年は1灯かシールドビームかー。EF30形を追っていたファンの方は撮影記録の確認でクリアできる案件かもしれませんが、当時子どもだった私はブルトレ機関車交換時のわずかな時間に眺めていただけ。何かヒントはないものかと自宅の書棚を探ってみました。

 

 

84年当時のEF30 12。ヘッドライトは既にシールドビーム化されていますが、貫通扉のヘッドマークステーはまだなかったようです

 

 

 

とはいえ…自宅の蔵書レベルなど、たかが知れています。EF30形のことをまとめた雑誌も出ていたようですが目を通しておらず、具体的な資料は予想どおり見つかりませんでした。以下、自力で分かったことを簡単に記しました。

 

 

【EF30   9】86年9月時点→1灯

【EF30 11】85年3月時点→1灯、85年7月時点→シールドビーム

【EF30 14】86年7月時点→1灯

【EF30 17】86年7月時点→1灯

【86年7月末時点で運用中のEF30】3〜11、19〜22号機(13、14、17号機は「一休」)

※雑誌の特集の記述と写真説明から

 

 

これらで判断すると、KATOのEF30形はどのナンバープレートでも大丈夫そうですが、私はなんとなく1桁機かなぁ…と9号機を選びました(感覚で選ぶなら調べる意味なし?)。ヘッドライトが実際どうなっていたのか(もしや機関車の向きによって種類が違う?)、いつまで運行されていたかなどは不明でしたが、今回は諦めました。

 

 

Nゲージは走らせる楽しみが第一であり、厳密な正解を求める必要はないと思います。ただ、こうしてちょっと調べるだけでもいろいろ発見があり、今回は1980年代半ばにタイムスリップしたかのような楽しみを味わえました。

 

 

下関駅での機関車交換のイメージで…

 

 

 

【参考文献】

「鉄道ファン」No.306「関門の王者たち」(交友社 1986年)

鉄道ジャーナル別冊No.14「青い流れ星ブルートレイン 60・3ダイヤ改正最新版」(鉄道ジャーナル社 1985年)

「証言・日本国有鉄道02 九州ブルートレイン1980」(イカロス出版 2013年)

「名列車列伝シリーズ10 寝台特急あさかぜ&ブルトレ客車part1」(イカロス出版 1999年)