長く続く北九州市街地、のんびりとした遠賀川周辺の田園風景…JR鹿児島本線の沿線には多くのシーンがありますが、起点の門司港から約35㌔、海老津駅(福岡県岡垣町)を出ると、列車は北九州・福岡両都市圏の境界、城山峠に挑みます。

 

 

 

城山峠を行く813系電車。直線を走り切ったあと城山トンネルに入ります

 

 

885系の特急「ソニック」も車体を傾けてやって来ます

 

 

 

この区間は1890(明治23)年の九州鉄道(国鉄の前身)開業時には峠越えのルートでしたが、急勾配の難所だったようで、1909(明治42)年に、現在見られるトンネルを通る新線となりました。周辺には旧線の遺構が残っています。

 

 

 

旧線の赤レンガアーチ。ドイツ人技師によりイギリス積み工法で建造されたそうで、九州内では最古級の鉄道遺跡とのこと。上写真側から眺めると築堤跡がよく分かり、かつて蒸気機関車が走っていたシーンを何となく想像できます

 

 

新線(鹿児島本線)の赤レンガアーチも、なかなか立派です

 

 

城山トンネル(下り線)。複線で使われていましたが、1961(昭和36)年の電化時、架線を張る高さが足りず単線化。上りのトンネルは新たに建設されたそうです(右隣にあるはずですが撮り損ねていました…)

 

 

 

地域を分ける境界の峠道は交通の要衝となっていることが多く、この城山峠も江戸時代には唐津街道があり、現在でも国道3号線が通っています。

 

冒頭で紹介した鹿児島本線の撮影地付近まで歩いてみると、JR海老津駅から約2.5㌔30分。緩やかですが、長く続く坂道は当時の旅人の苦労がしのばれます。

 

 

現代の鉄道やクルマは峠をラクに越えていき、人々はそれを当然のように享受していますが、一方で地球環境の悪化や歩くことが減った生活には憂いを感じます。真横を走るクルマの排ガスにまみれながら、少し考えさせられました。