抜苦与楽

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 (今や珍しくなくなったWEB法話ですが 先駆けとなったのは浄土真宗だと思います。

   今日も本堂では法要の最中でした。    bonbu-koki撮影)

 

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今日の御講師は、高知県高知市受法寺 坂上良師です。

 

「五濁悪世」という世の中の五つの濁りの話から、

フードロス(本来食べられる食べ物を捨ててしまうこと)の問題を上げられ、、

そのフードロスの問題から貧困問題へと話は展開していきます。

そして、その中での数年前のある事例が紹介されました。(ニュースソースは朝日新聞)

 

「最後におなかいっぱい

食べさせられなくて、ごめんね」

母親が残したとみられるメモにはそう書かれていた。

大阪市北区天満のマンションの一室で24日、母子と見られる2人の遺体が見つかった。

報道によると、室内には食べ物はなく、食塩があったのみ。

預金口座の残金は十数円で、電気やガスも止められていたという。

大阪府警天満署は生活に困窮して餓死した可能性が高いとみている。

 

親子は職業不詳の井上充代さん(28)と瑠海(るい)君(3)。

発見されたとき、2人は布団の上に仰向けに倒れており、

目立った外傷はなく、幼児には頭から毛布とバスタオルがかけられていたという。

事件は防ぐことはできなかったのだろうか。

 

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これを見て立ち上がったのが、当ブログ、4月16日に紹介した浄土宗 松島靖朗師でした。

 

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https://ameblo.jp/bonbu-koki/entry-12589085856.html

 

抜苦与楽(ばっく よらく)  

      仏法の実践は、苦を取り除き、楽を与えること。

 

 

 

フードロスの一方で、貧困で若い親子がものを食べられずに死んでいく日本社会。

これが私とあなたの住む社会の現実です。

松島師の試みは今や多くの反響を呼び、仏教界全体の起爆剤になっています。

お寺で仏様にお供えするものを「あおがり」といい、

その役目が終わったものを「おさがり」といいます。

おさがりは、お寺の方や檀家さんが頂くことになるのですが、

それを貧困の家庭に回していこうという取り組みです。

 

フードロスも、貧困問題も、餓死をする親子のことも全部がニュースの中の出来事で、

私たちはニュースを通じて初めて知ることばかりではないでしょうか。

今日のご講師の坂上師は、「知らないことは怖い」といいます。

いろいろな事件や事故など物事が起きれば「なんで」「どうして」 

「なぜこうしなかったんだ」と、理詰めをしたがる私たちですが、

当事者が声をあげられない、相談者がいないのは事実なのですから、

日本はやっぱりセーフティネットが弱い国なのかもしれません。

 

 

 

今日は終戦記念日です。

戦後は豊かになり、日本の社会福祉の制度も充実してきました。

ですが、資本主義の日本では貧富の差は広がり、社会の仕組みはあれど、

本人が声をあげられないから、このようなことがあるのですね。

生きるために戦う相手は、敵国ではなく、

世の中の虐待、差別、偏見、いじめ、貧困と、今ならコロナ・・・。なかなかつらいですね。

 

坂上師は、松島師の「うれしかったエピソード」を紹介してくださいました。

松島師のところに届いた1通のお礼状。差出人は小さな男の子。

「おいしいお菓子をいただき、ありがとうございました。

お饅頭はおいしかったけど、今度はケーキが食べたいです」

この子らは、何が食べたいと大人に正直に言えないそうですよ。

友達にも、学校の先生にも、もちろん親にも・・・・。

子供たちのことを考えれば、胸の苦しい思いになりますが、

「正直に言っていいんだよ。正直に言ってくれてありがとう」

松島師がうれしかった思いも、よくわかりますよね。

 

苦しむ親子がいる一方で、自分は「知らないから仕方ない」とはいえません。

無知のあげくに、「知らない」では、やっぱりいけないですね。

テレビやスマホのニュースの中で知ったとしても、

「他人事」としないで「わたしのこと」として、

そのような活動をするお寺に私たちが足を運んだり、

お布施をしていくことも時には必要でしょう。

私の家の近くのお寺では、

(貧困家庭やひとり親世帯対象に)こども食堂をやってるところもありますが、

仏教のもつ「慈悲」や「抜苦与楽」の中の底力を見せてほしいですね。

 

この話を聞けば、食べ物をおいしい、まずいと評価したり、

好きだ嫌いだと、自己中心的なものの見方しかしない自分が恥ずかしくなりますね。

 

今日のご法話も、奥の深いお話をありがとうございます。