全盛時代の都電を知るための1冊 | 書斎の汽車・電車

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 今回は書評なんですが、実は昨年暮れに刊行された本でして、どういう訳かご紹介する機会を逸していたものとなります。

 諸河 久・江本廣一『完全版・都電系統案内』(ネコ・パブリッシンング)です。

 

 本書は、2001年5月刊行のRMライブラリー22『都電系統案内』(諸河氏の著書)と、2001年2月刊行のRMライブラリー19『東京都電6000形』(江本氏の著書)を再編集したもので、と書くと、「あぁ、RM Re-Libraryのシリーズね」と言われそうですが、本書はそのシリーズではありません。

 というのも、後半の都電6000形の方はほぼ刊行時のままですが、前半の諸河氏のパート「都電系統案内」の方が大きく変わっているからです。

 具体的に何が違うのかというと、元版では1系統1頁、写真も原則大きい写真と小さい写真1枚ずつでの紹介でしたが、今回1系統2頁、写真も原則として2枚が追加されています。(14系統のように、1頁大の写真1枚という例外もありますが)それがほぼ諸河氏による撮影ですから、一部他で見たことのある写真もありましたが、懐かしくまた楽しい写真ばかりです。加えて、元版では本格廃止直前の昭和42(1967)年当時の系統別の路線図が付いていましたが、系統によってはこの時点では既に廃止が始まっていました。今回はこうした先行廃止路線について、廃止前のデータも掲載されています。

 

 斯様に本書は、元版をお持ちの方でも、手元に置いて損はないと思います。もちろん、元版を持っていない方であれば、前半で都電の路線について系統毎に通観でき、後半では戦後都電を代表する6000形の全てを知りうる好著ですので、是非この機会に書架にお加えいただければと思います。

 それにしてもRMライブラリー、この2冊の後は都電ネタは出ていません。7000形とか、杉並線とか、まだまだ1冊にまとめるべき題材は豊富だと思います。版元には是非ともご検討いただければと思います。

 

 都電ファンなら、ぜひご購入を。眺めながら酒が進みます。

 そして、「あの日に帰りたい」とばかり、今宵も都電の模型を走らせるのです。

(2024年4月29日に一部加筆訂正)