阪神「西大阪線特急」始末記 | 書斎の汽車・電車

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 プロ野球の日本シリーズは、阪神タイガースの日本一で幕を閉じましたねなどと書くと、もう1週間近く経つのにまだその話ですかと言われそうですが、活字メディアの日本シリーズ特集などは、今週の半ばくらいから本屋さんに並び始めたところですし、野球ファンはもう少しこのネタで楽しめそうですので、多分大多数を占める興味のない方には、もうしばらくご辛抱の程を。

 

 で、今回の日本シリーズですが、「なんば線シリーズ」などと言われていました。確かにオリックスの本拠地、京セラドーム大阪の最寄り駅は阪神なんば線の「ドーム前」ですし、阪神甲子園球場の最寄りは、言わずと知れた本線の「甲子園」で、両駅は直通電車で結ばれています。

 その阪神なんば線ですが、難波への延長前は「西大阪線」と呼ばれていました。ターミナル駅は西九条駅で、大阪環状線と連絡していました。そもそも阪神の難波延伸構想は以前からあり、昭和39(1964)年5月に西九条まで到達した際に、線名もこれまでの伝法線を西大阪線に改めています。その西大阪線に特急列車が運転を開始したのが、昭和40(1965)年9月15日ということになります。今回は、この阪神の西大阪線特急(通称「N特」)のお話をいたしましょう。

 

 西大阪線特急は、西九条と元町を結び、両駅を9時半から16時まで発車、12分間隔の運転でした。上りは本線特急の後を、下りは本線特急に先行するダイヤで、途中停車駅は尼崎、西宮、三宮となっていましたが、昭和43(1968)年4月7日の神戸高速鉄道開業後は西九条~三宮(所要25分)の運転となりました。

 

 運転開始当初は4輛編成ということもあったようですが、客足は伸びず、2~3連での運行に落ち着きました。西九条駅がターミナルとしてはやはり弱く、大阪環状線などからの乗り換え客も想定ほどにはいなかったということでしょうか。西大阪線内はガラガラで、本線の尼崎や西宮からの乗客が神戸への速達列車として使うことが多かったともいいます。阪神としては、あくまでも難波延伸まで、さまざまな潜在的需要を掘り起こしつつ持ちこたえてくれたらというところだったのかも知れません。ただ、昭和42(1967)年には、せっかく着工した難波乗り入れ第2期工事を中止しています。なお、乗り入れ相手の近鉄は、昭和45(1970)年に上本町から難波への乗り入れを一足早く達成しています。

 

 昭和49(1974)年11月30日をもって、とうとう西大阪線特急は廃止となってしまい、西大阪線の優等列車は姿を消すことになります。優等列車が復活するのは平成21(2009)年3月20日の難波延長、なんば線と改称した後のことです。この時設定された「快速急行」の種別記号は「N」、奇しくもこれはかつての西大阪線特急と同じでした。

 

 ここからは模型のお話になります。平成19(2007)年にトミーテックの「鉄道コレクション」第5弾が発売されましたが、その中に阪神3301形がありました。阪神西大阪線の特急には、3501形とともにこの3301形も使用されていたといいますので、ひとつ「N特」を再現してみるか、ということになったのです。そこで3301形を2輛用意しましたが、3301形が使用されたといっても、もしかすると3501形2連に両運の3301形を加えた3連での仕業だった可能性もありまして、果たして3301形2連の特急が存在したか否かはわかりませんが、とにかくやってみたのでした。

 実は「鉄コレ」の3301形は冷房改造後の姿で、冷房改造は「N特」廃止後のことです。そこで同時発売の琴電仕様の屋根パーツを流用しています。冷房車を非冷房車化するという、時代に逆行した改造となりましたが、実物もまた、冷房用電源は他車から得ており、単独では冷房を使えなかったと記憶しています。また、非冷房時代であれば、前面の方向幕はまだないのですが、これを撤去しきれいに仕上げるのは当鉄道では至難の業えと考え、泣く泣くそのままとしています。「N特」のサボはグリーンマックスのステッカーを使用しました。このステッカー、他にも楽しいサボ等がたくさんありますが、当鉄道では阪神電車の増備計画は余りないのが残念なところです。

 パーツを入れ替えた屋根廻りをご覧いただきます。

 大手私鉄の「本線」を2連の特急が走る光景というのもなかなか魅力的で、模型ゴコロをそそります。

 

 こうして当鉄道に登場した西大阪線特急ですが、何分旧作でして、今回ご紹介する際に慌てて一部不具合箇所の修正、手直しを行いました。非動力車のパンタやカプラーなどはこれを機に交換しました。思えば、阪神タイガースが「アレのアレ」を実現してくれたおかげで、旧作が陽の目を見ることができました。「虎党」ではない小生ですが、印象深い日本シリーズとなりました。