55年前の粋な付録 | 書斎の汽車・電車

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インドア派鉄道趣味人のブログです。
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 先日、『RMモデルス』誌の付録「鉄道模型車検証」についてご紹介しましたが、現在、鉄道模型誌でも付録は当たり前になっています。『とれいん』誌でも、最新号にはJR東日本の701系の「型紙」が付録として付いています。

 

 そんな鉄道模型誌の付録ですが、今から55年前の『鉄道模型趣味』(TMS)誌に、当時としては珍しい付録が付いていましたので、今回ご紹介する次第です。

 

 まずお目にかけますのは、『鉄道模型趣味』昭和41(1966)年4月号(通巻214号)の裏表紙の画像です。

 名著『陸蒸気からひかりまで』の広告ですが、上下に、何やら茶色の模様がありますね。

 ちょっと拡大してみましょう。まずは上部から

 次に下部です。

 

 上と下でサイズの違うレンガ模様であることがわかります。

 そして、このレンガ模様、単なる広告のデザインではありませんでした。「編集者の手帖」(編集後記)の真上に、「本号の裏表紙をごらん下さい!」とあります。そして、「本号250ページのウォータータンクを制作される方のために、ビルディングペーパーを裏表紙に印刷してみました」「ウォータータンクだけでなく各種のストラクチャーの制作に御利用ください」と記されています。

 250ページ(当時のTMS誌は1月号から通しでページ数が振られていましたので、それ程分厚いわけではありません)のウォータータンクの記事というのは、編集スタッフの片野正巳氏による、9mmゲージ(Nゲージという名前はまだ一般的ではありませんでした)の制作記事で、35ミリフィルムのプラスチックケースを使って、蒸機にぴったりの「給水塔」を簡単に作ろうというものでした。これに裏表紙のレンガ模様のペーパーを巻けば、容易にレンガ造りの給水塔を再現できるという訳です。

 

 制作記事は9mmゲージ用でしたが、レンガ模様は9mm用(上部)と16番用(下部)を用意してありました。「編集者の手帖」でも、(やま)こと山崎喜陽氏が、初めからウェザリングした古ぼけた色に印刷することも考えたが、今回は「レンガ色らしい色のインクを特に調合してやってみた」と記されています。初の試みでもあり、ウェザリングは読者に任せたというところでしょう。そして、「今後いろいろなことをやってみて、ファン諸兄のレイアウトをにぎやかにしていくつもりである」と結ばれています。

 

 それにしても、どうして「裏表紙」だったの?と思われる方も多いかもしれませんね。その理由ですが、当時のTMS誌、カラー印刷は表紙と裏表紙だけだったのです。(新年号などはカラーの「口絵」が付くこともありましたが)これは、当時の実物誌、『鉄道ピクトリアル』『鉄道ファン』両誌にしても同じような状況でした。55年前の鉄道趣味誌事情は現在とは随分異なります。

 

 さて、山崎氏は「今後いろいろなことをやってみて」と書かれていますが、果してこのような試み、第二弾、第三弾はあったのでしょうか?当時のTMS誌のバックナンバーを全て持っていればわかるのでしょうが、あいにくそうした環境にありませんので断言はできませんが、恐らくは後が続かなかったのではないかと思われます。ぐっと時代が下りまして、昭和50年代の増刊『プレイモデル』には「切りぬくページ」が付いたことがあります。カラー印刷されて、切り抜けばストラクチャーの看板などに使えるというものでした。当時はもったいなくて使えませんでしたが、今ならカラーコピーして使うところでしょう。

 

 ともあれ、この55年前の付録、当時としては画期的だったのではないでしょうか?『陸蒸気からひかりまで』の広告を挟むそのデザインも実に粋です。今日これをそのまま利用しようという方は恐らくいないと思いますが、古書店等で見てみたいという方のために、本号の表紙も最後にお目にかけておきます。