文脈無視 ~ 続き | マニュアル課 翻訳室

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フリーランスで翻訳と翻訳レビューをやっています。
以前はマニュアルのテクニカルライティングもやっていましたが、今では翻訳専業です。

ずいぶんと間が空いてしまいました。

前回は、"Click XXX to complete the registration."のような文の翻訳について、ちょこっと疑問を投げかけました。

どこかのスタイルガイドに書いてあるかと思って、少し調べてみましたけど、

「~するには」と to 不定詞から訳すようになんて書いてあるものは探し出せませんでした。

そこまで指定しているスタイルガイドもないか。

僕らが学校で習ったときは to 不定詞の副詞的用法は「~するために」と訳すんだと呪文のように何度も聞かされてきました。

でも実際は、この目的を表す場合のほかに、結果や原因、理由など、いろいろな意味があるんですよね。

習ってたのかもしれないけど、「~するために」が強烈で、頭にこびりついています。
今の学校では、どういう風に教えられてるのかな?

「~するには」も意味的には「~するために」と同じで、"in order to"と同じ意味ですね。

もとの文に戻りますが、どうして「~するには」が翻訳レビューの現場でよく目にするのかと考えていいたんですが、思い当たるフシが少々。

Trados などのCATツールの影響ではないかなと。

ご存知のとおり、Tradosなどでは訳文を翻訳メモリに登録します。

普通、1つの英文に対して複数の訳文は登録しません。

誰かが "Click XXX to ~"の文を「~するには」と登録してあると、100%マッチすれば、その訳文がそのまま使われますね。ファジーマッチの場合にも、なかなか直さない人のほうが多いのでは。ほとんどお金になりませんから。

僕は直しますけどね。100%マッチはさすがに直しませんけど(さわるなという指示があります)。

Tradosのあの画面で翻訳しながら、それをそのまま納品すると悲惨な結果になりかねません。

解決策としては、納品前は必ず最終形態にしてからチェックすることですね。

翻訳中もソースファイルを横目に作業したほうがよいと思います。

文脈に沿った日本語にするには、この手間を惜しんではいけません。